第六話 魔法の訓練とメトセラへの旅立ち
本日六話目です。
双剣が完成した後、ルーテシアはこの二振りの剣を使いこなせる様に今日も練習していた。
先ずは比翼を手に持ち、魔力を通す。
強化と水の属性を付けた剣はまるでウォーターカッターの様に木々を軽々と切り裂いていく。
次に連理を手に持ち、魔力を通し重さを調節する。
後で分かった事だが連理は重くするだけではなく軽くする事が出来たのだ。
というか軽くしないとまともに剣を振られないのだから仕方がない。
と言うのもデンテから双剣を納品されたあと、無理を言って連理の重量を魔力でめちゃくちゃ重くしたまま固定して貰ったのだ。
その重さ、およそ1トン。
魔法で軽くしないと持ち運びすら出来ないが、こうする事で無意識に垂れ流すインキュバスとしての魅了の魔法を抑える事が出来た。
メトセラに行ったらルーテシアは冒険者として暮らしていきたいと思っているので目立つと大変なのだ。
インキュバスとして色香を振り撒いていては女性に囲まれて動けない可能性があった。
どうやら今のルーテシアはこの魅了をコントロールするのが苦手な様で常にきつい香水を付けた状態みたいに色香を振り撒いていたらしかった。
それはもう屋敷のメイドたちも色めき合うくらいだったとか。
その副作用か、自身の重さも操作出来る様になった。
正確には連理の重さを自分に掛ける事が出来るのだ。
こうする事でルーテシアの体は大きさは変わらないが連理の黒剣の重さを手に入れる事が出来た。
単純に考えて体重が重い方がパワーは強くなる。
ボクシングや柔道などの格闘技では体重によって階級を分けている。
それは体格や体重が異なる者同士で戦うと体重が軽い方が圧倒的に不利だからだ。
つまり連理剣の重さを強化した体に付け加えると最大およそ1トンの質量を持つ攻撃をする事が出来るのだ。
他にも水魔法を応用したルーテシアオリジナルの魔法も開発した。
基本的に水魔法というのはあまり使い手が居ない上にあまり強いとは言えない。
何故ならば水を生成するには大量の魔力が必要だからだ。
だから水魔法というのは水を操作する魔法とされている。
水が無ければ何も出来ない使い勝手が悪い魔法なのだ。
そんな水魔法だが色々と試している内にある事に気がついた。
それは水が含まれていれば水魔法として操作が可能ということである。
わかりやすいので言えば血液である。
血液の中には当然ながら水分がある。
その血液を操作する事でルーテシアは美容に役立てる事に成功した。
血流の流れを良くする事で冷えから体を守り、睡眠の質を上げる事によってお肌もプルプルになるのだ。
これは母やメイドたちにとても喜ばれた。
他にもお肌の水分を保ち、モチ肌にする魔法や新陳代謝を活性化させる魔法など美容に関する魔法を新たに開発してしまったのである。
その結果、ルーテシアの水魔法はサキュバス界隈で高評価を受けた。
もともと評価の低い水魔法が美容関係に使えるという事が分かって水魔法自体が見直された。
今ではサキュバスの水魔法の使い手は美容関係の仕事で引く手あまたらしい。
そういうこともあって、ルーテシアのお小遣いは子どもの時と比べると5倍は増えた。
増えたお金はこれから向かうメトセラの金貨に変えて貰った。
お金はあればあるほど困らないから、あっちの世界に行ってもある程度は余裕があるだろう。
また、自身の身体で魔法の実験を繰り返すとある事に気づく。
それは悪魔という生き物は肉体の成長過程においてある程度の操作が可能ということだった。
成長する上で懸念していたのが声変わりだったので、変声期に差し掛かるに連れて意識して女性的な声を出す様にした。
悪魔というのは人間とは違い肉体の成長はイメージで変わる。
なので意識して女の子らしい声を使うことによって声変わりを抑えることに成功した。
体の肉付きも男性というよりもイメージした少女として成長した。
そして日々の訓練にお金儲けと時間を割いているとあっという間に年月は過ぎていくわけで、いよいよルーテシアも旅立ちの時がやって来たのである。
「時が経つというのは早いね。もうルーも旅立ちの時か……」
「そうね……。私も年かしら?最近涙腺が緩くなって困るわ」
ルーテシアの両親であるイングリッドとアイリカルラは涙ぐみながら交互にルーテシアと抱擁し合う。
「ここまで立派に育ててもらって本当にありがとう。僕のわがままも受け入れてもらって感謝してもしきれません」
「あなたの人生なんだもの。好きにやって来なさいな」
「うんうん。私もルーを応援してるからね」
「はい!」
ルーテシアは手に魔力を込めてメトセラへのゲートを開く。
世界を行き来する時渡りの魔法は大量の魔力を使う為、メトセラに渡ったら最低でも10年は帰って来られない。
といってもルーテシアたちは悪魔で長命なのだから感覚としてはちょっと留学に行ってくるくらいの感覚である。
実際、姉のリリラルカもこの前地球から里帰りしてるし、家族との別れといっても悲しみよりも新しい世界へのワクワク感の方が強かったりする。
「リリラルカの時の様に従者は付けられない。インキュバスの周りにサキュバスの様な女性を付けるとルーの活動に支障が出るからね。人間の女の子と仲良くしなきゃいけないんだから一人の方が色々と都合が良い」
「はい、心得てます」
そう、今回の旅はルーテシア一人で行かなければならない。
当然身の回りの事も一人でやらないといけないんだけど、そんな事は前世でたくさん経験している。
「ルーは冒険者としてメトセラに行くのね?」
「はい、あちらの世界を歩いて周りたいです」
「じゃあ行き先は世界の中心、迷宮都市『エンデル』にしなさい。あそこにはサキュバスの拠点もあるからそこを頼りにするといいわ。こちらから連絡しとくからサキュバスのメルフィーナを探して。そこを拠点にするのよ」
「うん、わかったよ」
寂しくなるがいつか子は親離れをしなければならない。
今がその時である。
「じゃあ、行って来ます!!」
こうしてルーテシアの新しい冒険が始まったのである。
ルーテシア=アーリコーデは男の娘として新たな一歩を踏み出した。
これで本日分の投稿は終わりです。
一章分のストックがあるので一章が終わるまで毎日二十時に投稿予定です。
気長にお待ち下さい。




