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転生したらインキュバスでした。せっかくなので男の娘になろうと思います!!  作者: ゆすはらからす
第一章 魔の森

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第十九話 僕、女の子にされちゃいます

 気づいた時にはユーリシティアはルーテシアを一発殴打し、投げ飛ばしていた。


「ちょっとユーリシティアさん!何をしているんですか!?」


「えっ!?わ、わたし何で?」


 記憶が曖昧なのを感じる。

 まるで夢を見ていたかの様なふわふわとした思考から覚醒すると今の状況を認識した。


「あーあ、完全に伸びてる。目立った外傷はないから気絶しているだけだな。綺麗に脳が揺れたんだろう」


 投げ飛ばされたルーテシアをアーノルドとイーファの二人が彼女の様態を確認する。

 特に大きな怪我がなく、問題がない様なのでそのまま地面に寝かして置いた。


「何があったか知らないが暴力は良くないぞ?」


「そうよユーリ。ルーテシアさんは私と戦った後で疲れていたはずなのに」


 二人に非難されたからかユーリシティアはルーテシアに対して罪悪感を覚える。

 それはルーテシアの執拗なセクハラに無意識に抗った結果なのだが、何故かユーリシティアは追い込まれていた。

 何と恐ろしい……。

 これが淫魔としての、ルーテシアの(カルマ)とでもいうのか?


「ま、とにかくユーリシティア、お前がルーテシアを家まで送り届けるこったな」


「え、私が!?」


「何を驚いているのよ?あなたがルーテシアさんを気絶させたんでしょう?あなたが責任持って介抱するのが当たり前じゃない」


「そ、それはそうだけど……」


 ルーテシアを介抱する。

 それは構わないがルーテシアの家まで行くというのは憚れた。

 どうやらルーテシアの拠点にはルーテシア一人で暮らしている訳ではなく、どこかのお店でお世話になっているとルーテシアから聞いている。

 となればその家人にルーテシアのこの状況を説明しないといけないし、何ならその事について責められるかもしれないからだ。

 これは長い間ソロ活動を行ってきた弊害であるコミュ障を発症しているユーリシティアにとっては難問に近かった。


(でも仕方ないわよね……。ルーを気絶させたのは私だし……)


「分かったわ。私が責任を持ってルーを家まで届けるわ」


「よし!じゃあ今日はこれで終わりだな。俺とイーファは明日までに準備と書類とか揃えないといけないからな。ルーテシアのこと頼んだぞ」


「ルーテシアさんにもよろしく言っておいてね。はい、これが彼女の住所よ。寄り道せずに行ってね」


 ユーリシティアはイーファからルーテシアの住所が書かれている紙を受け取る。


「もう!子どもじゃないんだから!ちゃんと届けるわよ!」


 ちょっとした怒りを二人に感じながらユーリシティアはルーテシアを両手で抱き寄せる。

 ルーテシアの双剣を自分の背中に背負い、ルーテシアを持ち上げた。

 不思議とルーテシアの双剣や防具など、総じて体重は軽く、これなら大した疲れも無く運べるだろうと思った。

 さっきの戦いでもルーテシアが使っている双剣は魔法剣だと言っていたから鎧などの防具もきっと魔道具の類なのだろう。

 ユーリシティアが感じる負担はちょっとした子どもを抱っこするのと変わらなかった。


 ルーテシアを両手で抱っこしながら冒険者ギルドの広間へと出る。

 朝のギルドと違い、落ち着きを取り戻した様な冒険者たちは一斉にまた騒めき始めた。


「お、おい。あれを見てみろよ……」


「あぁ。白雪姫様が美少女をお姫様抱っこしている……。何と言うか、絵になるな!」


「綺麗……。わたしも何か目覚めちゃいそう……」


「いいなぁ……!あたいもユーリシティア様にお姫様抱っこされたい!!やっぱり美少女か?美少女じゃなきゃダメなんか!?」


 騒ぎを聞きつけた冒険者達が次々にユーリシティア達を見る。

 それはやがて波の様に大きく唸り、多くの両の目がユーリシティアとルーテシアに集まった。


 この状況になってユーリシティアは今自分がどういう目で見られているか理解した。

 いわゆるお姫様抱っこは女性が男性にされる愛情表現の一つで、つまりラブラブなカップルがするリア充行為なのである。

 それを他人に見せつけているのだから今の彼女たちがかなり目立つのは仕方のない事だった。


 流石の色恋沙汰が一つもないユーリシティアも自分が恥ずかしい行為をしているのを自覚する。

 一気に顔は赤くなり、耳の先まで真っ赤になる。


「み、見るな!お願いだから見ないで!?」


 羞恥心から出たユーリシティアの大声は冒険者達の騒めきによって掻き消される。

 必死の訴えも全く意味を為さなかった。


 そんな中、気絶していたルーテシアは夢を見ていた。


「あれ?ここは?」


 キョロキョロと辺りを見回す。

 見慣れた景色とは程遠く、そこは何か荘厳な教会のようであった。

 ステンドグラスから差し込む色の光がルーテシアを包み込む。

 その光を浴びて目が眩む。

 そこで自分に不思議な事が起こっていると思った。


「これは……、ウェディングドレス?」


 ルーテシアが身に纏っていたのは立派な純白の花嫁衣装だった。

 頭に疑問符が浮かぶ。

 何で僕はこんなドレスを着ているのであろう?

 でもせっかくなら鏡でもあれば良いのに……。


 そう思うと不思議な事は続き、目の前に大きな姿見が現れた。

 そこに映るルーテシアは派手さこそ無いもののドレスは真っ白で穢れなく、適度にあしらわれたフリルなどの装飾がルーテシアを引き立てる。

 鏡に映るルーテシアの顔の頬はほのかに朱が差し、優しい眼差しはどこか聖女を思わせる。


「綺麗……」


 思わず自身に見惚れる。

 花嫁姿の僕も悪く無いな。

 ぼーっと鏡を見つめたり、その場でくるっと回ってみたりポージングを取っていると不意に音楽が鳴り響いた。


 ぱぱぱぱーん、ぱぱぱぱーん、と結婚式では定番の曲である結婚行進曲が教会に流れる。

 するとルーテシアは突然、浮遊感を覚えた。

 それは誰かに抱き抱えられる様であり、バランスを崩しそうになったルーテシアはバランスを取るために必死に“何か“にしがみ付いた。


「え?ユーリシティア先輩!?」


 しがみ付いた先には新郎姿のユーリシティアがルーテシアに微笑んでいた。


(はわわ!?男装のユーリ先輩も素敵!!というか今、僕ってお姫様抱っこされてる!?)


 お姫様抱っこされた状態のまま、ユーリシティアは歩き続ける。

 そして教会の大きな扉を潜るとそこには大勢の人が二人を祝福していた。


「「「おめでとう!!」」」


 涙ぐむ両親に笑顔で拍手を続ける姉のリリラルカ、反対側にはメイド服姿のメルフィーナやリッタとロッタに店の従業員たち、遠くにはアーノルドやイーファといった冒険者関係の人たちがいた。

 誰も彼もがルーテシアとユーリシティアの新たな旅立ちを祝っていた。


「ありがとう、みんな!!僕はユーリシティア先輩の花嫁として幸せになります!!。あれ?花嫁?僕は男の娘のはず?」


 疑問符が頭に浮かぶがその疑問は次の瞬間、あっという間に吹き飛んだ。


「ユ、ユーリ先輩!?」


 何とユーリシティアがルーテシアに向かって口付けをしようと顔を近づけて来たのである!

 これには流石のルーテシアも受け入れざるを得ない。


(ああ……、父さん、母さんごめんなさい。僕は今日、ユーリ先輩に女の子にされちゃいます!)


 ルーテシアも全てを受け入れ、二人は幸せなキスをする。

 二人を祝福するかの様に教会の鐘が二度三度と鳴り響いたと同時に多くの人が悲鳴を上げた。


(な、何で悲鳴が?)


 ルーテシアが目を覚ますとそこにはユーリシティアの頬にキスをする自分とそれを見た多くの冒険者たちの興奮冷め止まない声が鳴り響いていた。


 その時、ユーリシティアは半ば暴走寸前まで精神的に追い込まれていた。

 ユーリシティアの魔力が溢れ出し、冒険者ギルド内の気温が一気に下がる。

 直にユーリシティアに触れているルーテシアもこの異常に恐怖し、気絶した振りをする。


(またやってしまった!わざとじゃないけど今、目を覚ましたのがバレたらてともヤバいのは分かる!)


 空気が強制的に冷たくなったギルド内の冒険者たちも空気を読んだのか、二人のために道を作る。

 その出来た道をユーリシティアはルーテシアを抱き抱えたまま進み、冒険者ギルドを出た。


 ギルドに残された冒険者達はあまりの寒さと恐怖で肝を冷やし、今日の事を口外しない箝口令を無意識のうちに冒険者たちで共有した。

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