表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヘタれ王子の求婚物語  作者: えるぜ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/8

再会

模擬戦の開始時刻になっても試合は始まらなかった。そして、教師、事務官達が集まって何やら難しそうな表情をしている。


「………相手の変更は前例がありましたが、ご令嬢、と言うのは初めての事です」


事務官が報告をして、教師達も思案気に頷いた。


「あの殿下に限って、勝ちに行ける相手を選ぶような真似はしないとは思うが……」


「事前に、彼女との模擬戦も有り得る、と国王陛下の許可も降りているようです」


国王が?と皆が驚いた表情を浮かべる。清廉な人柄で知られる国王が認めたのであれば、何か事情があるのかも知れない。


「そもそも、そのド・ラ・ローシュと言う伯爵令嬢はどんな生徒なんだ?」


ハッとしたように1人の教師が叫んだ。


「ド・ラ・ローシュ!あの、女学生の中で1人だけ男子の制服を着ていた生徒です。学院長から、国王陛下から直接許可を求められた、と聞き及んでいます」


1年を担当する予定の教師は、ジュディスの服装に関して事前に知らされたいた。


「学院長に確認を」はい!直ぐに、と言ってその教師は走り出した。


「………中々始まらないですねえ」


ルシアンナはふわあ、とあくびを漏らした。2人は、すり鉢状になった観覧席の中程に座っている。模擬戦は1番下の円陣の中で行われる予定だ。けれど、その景色ももう見飽きた。何しろ、昨晩はドキドキして殆ど眠っていない。その上、朝からの緊張、昼近い穏やかな陽気に、あちこちの学生達もあくびを噛み殺している。


「いや、何か動きがあったらしい」とジュディスが答えた。


小走りに学院長の元へ向かった教師が、今度は走って元の場所へ戻って行っている。


「分かりました!彼女は、3年前のアレクサンダー王子と伯爵家以上の令嬢との顔合わせで、殿下と模擬戦を行い、一本を勝ち取っています!」


おお、と周囲がどよめいた。その話なら聞いた事がある、と何人かが頷いた。


「ならば、問題ないだろう。恐らく、一本を取り返してご自分への(はなむけ)になさるおつもりだ」


そうして、漸く会場に模擬戦の開催が発表された。


「アレクサンダー第一王子殿下、こちらへ」


本年の新入生の中で最も身分の高い男子、アレクサンダーが円陣の中に降り立った。割れんばかりの拍手が舞い降りる。


「対戦相手、名を呼ばれた者は立ち上がって王子に礼を」


ジュディス・ド・ラ・ローシュ伯爵令嬢!!


高らかに、しかし若干の震えを伴ってその名は告げられた。


「え………?ジュディスさ……ま?」


ルシアンナが明らかに狼狽えている。周囲からは、伯爵令嬢?と怪訝な声が聞こえる。ジュディスは立ち上がった。


「行ってくる」


い……行ってらっしゃい、とルシアンナは呆然としたように呟いた。え?あいつ?席間違えた阿呆じゃなかったのか、あれで令嬢?何処から見ても少年だろ?いや、どっちにしても凄く綺麗な子だなあ………ジュディスが通り過ぎる度にあちこちから声が漏れ聞こえたけれど全く気にならない。戯れでも構わない。自分の事を思い出してくれて、もう一度剣を合わせられる、それだけで十分幸せだ、とジュディスは思った。


アレクサンダーの前に立ち、右手で胸を押さえ礼を取る。


「アレクサンダー第一王子殿下、志尊なる殿下から対戦相手としての栄誉を賜り、幸甚に存じます」


「…………アレク」


微笑みながらそう言うアレクサンダーに、ジュディスは軽く目を見開いた。


「俺にとってジュディがずっとジュディだったように、3年前からジュディの前ではずっとアレクだ」


「………覚えていたのか」


「忘れた日はない」


執念深いな、とジュディスは笑った。


両名、剣を、そう言ってそれぞれ剣を渡される。勿論真剣ではないし、切先も丸く潰れている。けれど一撃を喰らえば青あざ程度では済まない。開始の合図と共に、それぞれの剣が交差した。ジュディスの鋭い突きをアレクサンダーの剣が弾き、アレクサンダーの重い斬撃をどう力を殺すのかジュディスが軽くいなす。アレクサンダーの圧倒的な勝利で数分で終わると思っていた生徒達、否、教師達もその模擬戦に見入っていた。「凄いな………あの()」という呟きがあちこちから起こった。アレクサンダーの剣を受け止めてそのまま鍔迫り合いになった時、ジュュディスが笑った。「強く、なったな」アレクサンダーも笑顔で応える。「カイルから、一本取れた」キン!とアレクサンダーの剣を弾いて、ジュディスが後ろに飛び退った。小気味よくステップを踏みながら合間を取る。いつ打ちかかれても躱せるように、そしていつ打ちかかるか相手に気取らせないように。

模擬戦が20分を超えた辺りから、固唾を飲んで見守っていた生徒達から声が上がった。「ド・ラ・ローシュ!行けえ!!」「ジュディス様!そこです!」まさかのド・ラ・ローシュコールが巻き起こる。


「人気者だな、ジュディは」


「……見せ物だと思ってくれ」


ジュディスは、体力の違いを実感し始めていた。3年前のアレクサンダーとミッシェルの模擬戦と同じだ。アレクサンダーの体力切れを見越してミッシェルが勝ちを譲った。早急に、次の一撃で仕留める。そう思って「()っ!」という掛け声と共にアレクサンダーに向かって走った。


アレクサンダーは心からこの瞬間を楽しんでいた。このままずっとこうしていたい。このまま時間(とき)が止まってしまえばいい。ジュディとの打ち合いは、まるで好きな子とダンスを踊っているようだ、と胸が高鳴る。華麗なステップ、見事なターン、そして自分を負かそうとしているその気迫。全てが美しい。そして、何よりも美しい彼女自身が自分に向けて刃を振おうと向かって来る。


「ああ、世界はこんなにも美しい」


アレクサンダーの剣はジュディスの必殺の一撃を下から躱し、ジュディスの両手が痺れた瞬間に、彼女の剣を大きく飛ばした。

読んで下さってありがとうございます^_^

良い連休をお過ごし下さい

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ