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ヘタれ王子の求婚物語  作者: えるぜ


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6/8

入学式

「おおー、目立ってるねえ」とミッシェルが言った。


4人は、講堂のバルコニー席に設けられたビロードのカーテンの隙間からジュディスを見ていた。中央にある通路を挟んで、男子学生と女学生に分かれたその女学生席にたった1人、男子の制服を纏ったまっことキラキラしい美少年。


「ほら、勇気ある女生徒が注意に行ったぞ」モーリスが面白そうに囁いた。ジュディスは、彼女と二言、三事言葉を交わすと、にっこりと微笑んだ。女生徒は真っ赤になってお辞儀をして自分の席に戻っている。


「罪深いな」とカイル。彼も随分と饒舌になった物である。そしてアレクサンダーと言えば、表情筋ひとつ変えずに「ジュディ、だ」と呟いた。勿論、心の中は春の嵐である。え!格好いい!!惚れ直す!て言うか、理想通りに成長してくれちゃって、どう責任取ってくれるの!?ああ、この胸のときめきを抑えきれない………てな具合である。そんなアレクサンダーの後ろ頭をカイルがスパコンと叩いた。


「…………落ち着け」


血が繋がっている所為なのか、カイルは妙にアレクサンダーの心の機微を上手に読んでいた。4人の中でも1番小柄で、まだ幼さの残る横顔を見ながらアレクサンダーは、自分もまだまだだな、と自戒した。


「で、どうすんの?いつ声かけんの?」とのモーリスの問いに、「新入生代表の模擬戦の相手に、ジュディを指名する」とアレクサンダーは答えた。


「ジュディが、どんな成長をしたのか分からなかったから、カイルを指名するつもりだったが」


「カイルを相手にして、王子様が負けたらみっともないだろ」


とミッシェルが言った。


「いや、ジュディさえ見ていればカイルと引き分けに持ち込む自信はあった」


そこは一本取る!とは言わないのかよ、と突っ込みの矢が何本も刺さっても、アレクサンダーは平気だった。


「勿論、本気で挑むけれど、ジュディにだったら負けても構わない。それで、もし男子の制服を揶揄うような奴が1人でも減れば本望だ」


モーリスが口笛を吹いて「漢だねえ………」と呟いた。


「そろそろ」とカイルが言って、全員が頷いた。第一王子、王弟ご子息、王子の友人2人のご入場タイムがやって来ていた。

アレクサンダーが先頭を切って中央列を進むと、自然と拍手が起こった。アレクサンダーは時々右手を軽く挙げ、拍手への礼を返している。


……………ああ、遠い人だなあ。

ジュディスも拍手をしながら自分とは全く立場の違う4人に視線を送った。銀髪のアレクサンダー、その後ろに同じ髪色のカイル、確か宰相の息子だったと記憶する赤髪のミッシェル、そして魔術師団長の息子、青色髪のモーリス。先刻まで自分もかなり目立っていた。だからひょっとしたら、気がついてくれるかも知れない、そんな甘い考えを笑うしかなかった。男子学生の制服が妙に気恥ずかしかった。

勿論、4人はジュディスがどこに居るのかきっちりと把握している。けれどアレクサンダーが先回りして牽制していたのである。


「いい!?ジュディと最初に目を合わせるのも、話をするのも俺が先。ヘタにジュディを見たりしたら血の雨が降るからね」


おお、怖い怖い、とモーリスが腕を抱えて震えるフリをした。そして、カイルから「軽薄」と両断される。そんな一幕を勿論ジュディスは知らない。

式典は当然退屈だったけれど、ジュディスは、式典後に開催されるという模擬戦をとても楽しみにしていた。その年の新入生の中で、1番身分が高い生徒が相手を指名して模擬戦を行う。まあ、大体は根回しがされていて、身分が高い生徒が負ける事は殆どなかった。ただ、アレクサンダーは誰を指名するのだろうか、とそれには興味があった。あの茶会の日、ミッシェル、モーリス、カイルは間違いなくアレクサンダーより強かった。もし、あの3人の中の誰かが指名されるとしたら、アレクサンダーはあの日からどれ程の研鑽を積んだのだろうか、そう思うと自然と頬が緩む。

やがて、式典の終了と共に、生徒達は演武場に向かい、思い思いの場所に席を取る次第になっていた。


「ジュディス様、第一王子殿下、とても素敵でしたね!」


当然のようにジュディスの腕に自分の腕を絡ませて歩きながら、ルシアンナがうっとりするように言った。周囲の女学生達の視線がルシアンナに刺さる。けれど「私達、ルームメイトですの」と一歩も引かない。案外気の強いお嬢さんだ、とジュディスは微笑んだ。


「ルシアンナ嬢は、殿下のような方がお好みか?」


そうですねえ、と可愛らしく首を傾げる。


「余りにも身分が違い過ぎて、好みかどうか、などと考えた事もありませんわ。それより今は、ジュディス様を独占出来る幸せで一杯です!」


そんな物か、そうだな。身分が違いすぎる。


「誰が相手を務めるのか、ルシアンナ嬢はご存知か?」


それがですね!とルシアンナが意気込んで続けた。最初はカイル様に決まっていたんです!それが直前で番狂せがあったらしくて!


………まさかのカイルか、とジュディスはため息を吐いた。恐らく、カイルから勝ちを取るのは難しいと踏んで相手を変えたのだろう。


「………その情報は何処から?」


アレクサンダーがそんな姑息な真似をする男だとは思いたくなかった。


「あ!私の叔父が学院の事務官を務めておりますの。先程、血相を変えて走り回っていたので、どうしたのかと尋ねましたら『前代未聞だ。相手が変わった。しかも………』とだけ言ってまた走って行ってしまいました」


そうなのか、王子様も色々大変だな、とジュディスは淋しく笑った。


読んで下さってありがとうございます^_^

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