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ヘタれ王子の求婚物語  作者: えるぜ


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続 そしてドレスは

「銀…………良いかもしれません」


厳かに発言したのはルシアンナだった。若干1年生ではあってもそこは「ジュディス様ファンクラブ」創設者。その発言には重みがある。


「アレクサンダー様が贈った銀色のリボン、そしてアレクサンダー様もカイル様も銀髪の持ち主。これは………これはまさに妄想、いえ、想像を掻き立てられる余地がございません事?」


確かに、と令嬢達は頷き合った。アクアマリンと金というジュディスの色そのままよりも余程煩悩が滾る(たぎる)。


「あの………デニス様の色は、どうしましょう」


そこは同じ教養科の3年生女生徒、この目は無いな、とは思いながらもクラスメイトの為にひと言発言する。


「有り得ません。茶色などもっての外。前座は前座なりに身の程を弁えて頂かなければ」


最前、ジュディスの魅力は首の細さだ、と断言した美学家がばっさりと切り捨てた。


「そ、そうですわよね。いえ、あの。まあ、私どもにとっても最初で最後の機会なのでつい……」


そう言って頬を赤らめる先輩にセシリアが優しく声をかけた。


「様々なご意見を聞かせて頂いて、最良の1着を作る。それが私の望みでもあります。先輩の、級友を思うお気持ちは十分に有り難く存じますわ」


教養科3年がほっとしたように息を吐いた。


「では、先ずお色を」


セシリアがまなじりを正した。


「銀。そしてもう一色。ここは多数決を行いましょう」


令嬢達が一斉に考え込んだ。ジュディスのキャラクター的に暖色は有り得ない。ピンクのドレスを身に纏うジュディス様など見たくもない。赤も違う。けれどオレンジも黄色も違う。銀に合わせるのなら…………


「………ロイヤルブルーに1票」


絵を描く事が大好きだと言う、やはり今回初参加の少し気弱そうな女生徒が声を上げた。声を上げられた事に自分自身が驚いているような表情をしている。


「…………ロイヤルブルーのドレスは、ジュディス様の瞳に映って、その瞳のお色を濃くすると愚考致します。水色と銀よりも映えるのではないか、と…………」


一気に言って真っ赤になる。


「では私はアクアマリン、水色に。水色と金は何だか部屋の調度、壁の設えのようだけれど、そこが銀ならば家具とは異なります。ジュディス様の瞳の色に1票」


「他の方なら、下品になってしまうかもしれませんが、ジュディス様ならば。金と銀とアイボリーで」


「いやここはいっそ思い切って純白と銀は如何でしょうか!」


みんなセンスあるなあ………とセシリアは感嘆していた。正直、どの色もジュディスに似合う。というか全部見てみたい。けれどここは多数決。


「ご意見は出尽くしましたでしょうか。では多数決を取ります。ロイヤルブルー、アクアマリン、金とアイボリー、純白。順に挙手をお願い致します」




そしてジュディスのドレスの色はロイヤルブルーに決まった。

後々セシリアは述懐する。

全てはあの時にもう決まっていたのだろう、と。

そして、ジュディスにロイヤルブルーのドレスを誂えた事は、自分が歯車を回してしまったのか、と。





次の難題はドレスの形だった。

ジュディスの首命の美学令嬢は、ここはいっそハイネック、ハイネックにロングスリーブ、細い腰を強調するマーメイドライン、と持論を展開する。


「いやそれは如何な物でしょうか」


美学と芸術学が火花を散らした。

正直、元来の「ジュディス様ファンクラブ」の面々は、ジュディスのドレス姿さえ見られれば御の字である。と言うかむしろジュディスの男性礼装を見たい気持ち満々。礼装を纏ったジュディス様にエスコートされる自分を想像するだけで鼻血を吹きそうだ。


来年は、プリンスジュディスとエスコートされる令嬢、を企画しやがれ騎士科、とそれぞれが思った。いやだがしかし、今年を我々の力で完成させれば、来年の騎士科の企画に嘴を挟む事も可能かもしれない。


「如何な物でしょうか」


諸嬢は固唾を飲んで成り行きを見守った。


「秘すれば花、確かにそれは真実です。けれど、ジュディス様のうなじから背骨のライン、鎖骨の美しさ、デコルテの白さ、それらは私達ですら知らないのです。常に秘されているジュディス様の美しさ、それらを公開し、目に出来る機会を貴女はみすみす逃すのですか?」


うっ、とため息が漏れた。

確かに常に襟元をきちりと締めた姿しか見ていない。

………勿体無い!確かにそれは勿体無い!

と、全員が思った。


うんまあ、私はローブ姿で髪もタオルで巻いて上げているジュディスを知ってるけどね、とセシリアはほくそ笑んだ。この辺り、かなりカイル寄りである事にセシリアは気付いてはいない。


「鎖骨を!鎖骨を出しましょう!!」


芸術部員がどんどんとデッサンを描いて行く。あちらこちらからここはもっとこう、袖はこう、スカートのラインはこう、と注釈が入り、そしてやがて全員が納得するドレスが出来上がった。このデザインでオーダーをし、そして学院祭で初めて全校生徒の前でのお披露目となる。



読んで下さってありがとうございます^_^

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