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ヘタれ王子の求婚物語  作者: えるぜ


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抽選会

「私(わたくし)セシリア・カミーユ。幸甚なることにジュディス嬢のドレスをデザインする権利を得る事が出来ました。けれど、私はこの僥倖を独り占めするつもりはありません。ご存知の通り、私は「ジュディス様ファンクラブ」の名誉総裁を務めております。今回の機会を、一個人の娯楽としてではなく、正式なクラブ活動として、クラブ員の皆様と共に分かち合いたいと思っております」


おそらく「ジュディス様ファンクラブ」のクラブ員らしい面々から歓声が上がった。


「………流石次期女侯爵だな」と、モーリスが感心したように呟いた。「堂に入ってる」


「そして、この場にて、新たにクラブ員になりたいと思われる諸譲がいらっしゃいましたら、我々は諸手を挙げて歓迎致します。以前から、今日から、そこには区別はございません。共にジュディスのドレスをデザインしたい、ヘアメイクを施したい、そんな皆様のご参加を心よりお待ちしております!」


「……………おまけに根回しと事業拡大。末恐ろしいね」


モーリスの言葉に、ヘタれて一口しかチキ券を買わなかったアレクサンダーは力無く頷き、カイルは愉快そうな表情を浮かべるだけだった。


「さてそれでは皆様!」


と、騎士科を代表する3年生が高らかに声を上げた。


「いよいよ、本年の騎士科一大イベント!『レディ・ジュディス』と踊る権利のくじを引きます!」


全員の心の中にドラムロールが響いた。3年生の生徒が、綺麗な箱の中に手を入れて、やがて一枚の紙を引き出した。


「教養科3年!」


教養科の生徒溜まりから歓声が上がり、他学科の男生徒達はがっくりと肩を落とした。


「デニス・ピーター!!!」


辺りをざわめきが包んだ。


「………デニス・ピーター?聞いた事のない名前だな」


モーリスの呟きが皆の気持ちを代弁していた。


「どこのどいつだ、そのすっとこどっこいは」


あまりにもモブモブしいその名前に、アレクサンダーが唇を噛んだ。


「惜しい」そう言ったのはカイルだった。やがて、デニスと入れ替わるようにして戻って来たセシリアが会話に加わる。


「ミッシェルからチキ券を見せて貰ったわ。スコットドツコイ子爵のご三男らしいわね。元々がご三男だし………目立った活躍もないし、余り知名度のある先輩ではなさそうね」


壇上に上がったデニスは、ブラウンの髪にブラウンアイズ、どこと言って特徴もない、けれど少しはにかんだ笑顔が素朴な魅力溢れる青年だった。


「…………一生の思い出になります」


デニスはそう言って、先ずは騎士科の面々に軽く黙礼をした。


「この3年間、学院でたくさんの思い出が出来ました。騎士科の皆、最後にこんなに素晴らしい経験をさせて貰えて本当にありがとう。そして、教養科という遊学のような学科に、快く三男の自分を送り出してくれた両親に。この場を借りて心からの感謝を届けたい。それから、ジュディス譲…………」


そう言ってデニスはジュディスに向かい右手を差し出した。


「宜しければこの機会に是非貴嬢との友誼を結びたい」


まさかのお友達から始めて下さい!お願いしまああす!!である。最初の「ちょっといい話」からの直球、朴訥なようでいてデニP(デニピー)なかなか侮れない男であった。


「…………あの野郎………」と、アレクサンダーがいささか品のない言葉を口にした。


「まあまあ落ち着いて。俺やミッシェルだってジュディの『お友達』なんだからさ、そんなに目くじら立てる事もないだろ」


ジュディスは、と見るとにっこりと微笑んでその手を握り返していた。それを見たアレクサンダーは、自分が沸点に到達したかと思ったが、いやいやまだまだ。伊達にヘタれではない。この後、アレクサンダーは更に臨界点に至る事になる。


さて、2名の当選者が決まり、これでこのチキチキ前哨戦も終わりかと、生徒達が解散し始めたまさにそのタイミングで、3年生が再び声を上げた。


「この度は、ほぼ全生徒と言っても過言ではない程の、諸君のご協力と資金援助を心から感謝する。学院祭当日は是非贅を凝らしたドレスを身に纏ったレディ・ジュディスをご堪能頂きたい。そして、騎士科の出し物としての一曲で、せっかくのドレスが終わってしまうのは余りにも皆の気持ちとドレスが不憫だ!」


生徒達がざわざわと小声で話し始める。


「最後の抽選!後夜祭でジュディス譲と踊る権利!!!」


…………………あの野郎!!!!


今度こそ殺気を込めてアレクサンダーがミッシェルに視線を飛ばした。ジュディスにドレスを贈る機会(チャンス)を奪われ、その上、後夜祭でのダンスの申し込みまで騎士科が権限を持つと言うのか!

ミッシェル…………夏休みの間にここまで考えていたのか…………、とアレクサンダーは奥歯を噛み締めた。


「こ………ここまで金に汚い男だとは思わなかった………」


アレクサンダーがそう呟くと、カイルが「お肉でしょ」と呟いた。


「ま、まあまあ、例え目的が打ち上げの焼肉食べ放題だとしても、これに味を占めたミッシェルは来年も再来年もきっと同じ企画を立案するわよ。今年が最後って訳じゃないんだから、ね?」


と、セシリアが精一杯の慰めをかける。


「あ、ほら抽選終わったみたいだよ」とモーリスが言った。


「教養科1年!!」


また教養科かよ、とブーイングが起こった。




残暑も厳しいですね

皆様お大事にお過ごし下さい

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