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ヘタれ王子の求婚物語  作者: えるぜ


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17/21

書店にて

「書店?私はパスだわ。お腹一杯の時の字を読むと消化不良を起こすの」セシリアがそう言うと、「あ、俺も」とミッシェルが続けた。なんか腹痛くなるんだよねえ、そしてモーリスは「俺まだライフゼロだから。お願い休ませて」と。結局3人は書店近くの木陰のベンチで休む事になった。アレクサンダーとカイルがジュディスを挟むように嬉々として書店に向かう。


「…………王族が相手でもまだカイルだったら目があったんだろうけどなあ」


と、ミッシェルが天を仰ぎ見るようにして言った。


「カイルの父君、王弟殿下は、ご正妃腹でありながら、ご次男だからとあっさりと王位継承権を放棄なさって」とモーリス。


「しかも幼馴染みの男爵令嬢とさっさと結婚なさって。男爵令嬢との婚姻で更に王位から離れられた。あの風流人のお子なら、と誰もが納得したでしょうね」


と、セシリアが続ける。


「ねえ、ジュディスは魔法が全く使えないじゃない?ひょっとして伝説の光の聖女とか、って可能性はない?ある日ぱああっと聖女の力に目覚める。それなら王子妃だって夢じゃない」


「あのさあ」とモーリスがセシリアの言葉を遮った。「伝説の聖女?竹から生まれたとか、月から迎えが来たとか、そんなお伽話あるわけないでしょ」


「それならまだジュディスが伝説の勇者だって方が可能性あるよな」


ミッシェルの言葉にセシリアは視線を飛ばした。王子と伝説の勇者の結婚式。新郎が2人並んでいる図しか思い浮かばない。3人は同時に頭を抱えてため息を吐いた。


書店に入った3人が出て来る様子は無い。

では、彼らはどうしているかと言うと、書店に入るなりカイルは閲覧料を払って閲覧可能な書物を専用席で読み始めた。


「アレク、頼む」


それだけ言ったカイルにアレクサンダーは心の中でサムズアップをした。そう、こういうフォロー、流石従兄弟だけあって良く分かっている。

カイルお勧めの書店は大変にマニアックで大変に小さな店だった。だからどうしても書架は高くなる。上の方の書物は、梯子に登って取り出すしかない。


自分の背丈で確認出来る本を一通り見た後、ジュディスはアレクサンダーに頼んだ。


「もし良かったら………梯子が必要な場所の本の表題を読んで貰えるかな。あ、勿論面倒だったら自分で確認する」


「喜んで」とアレクサンダーが答えた。

それから時間をかけて2人は本を選んだ。アレクサンダーの胸の中は春風が通り抜けるような浮かれっぷりである。


「…………遅いわね」


流石に1時間を過ぎた頃にセシリアが呟いた。


「ちょっと、様子を見て来るわ」


やがて、そっと書店に忍び込み、そっと戻って来たセシリアは、興奮気味に語った。


「流石カイルだわ。あの2人の邪魔を一切せずに脇に寄って、アレクとジュディが本を選んでいる。ここから出る頃にはアレクのご機嫌も戻っている筈よ。良かったわね!モーリス」


やがて2時間が経とうとする頃、ジュディスは3冊の書物を選んだ。

全てが手書きの筆写に依る書物は大変に高価な物だった。だからジュディスはカイルの意見を聞きたかった。


「読書中ごめん、カイル」


ジュディスの声にカイルが顔を上げた。


「この3冊の本の中で、1番手元に置くべき本って、どれかな」


カイルはジュディスが並べた本を一瞥すると


「あげる」と言った。


え?と、カイルが言った言葉が理解出来ずにジュディスが首を傾げた。


「全部持ってるから。あげる」


いや、待ってよとジュディスが笑った。


「こんな高価な物、3冊も頂けない。それに、カイルだって後々読み返す事だってあるでしょう?」


カイルはゆっくりと首を振った。


「覚えたから、もう要らない」


漸く書店から3人が出て来た、がジュディスは一冊の本も持っていない。


「2時間もかけてもお目当ての本は見つからなかったの?」とセシリアが問いかけた。


「いや、見つかったんだけれど、どれもカイルが所持している本で……………私にくれる、と」


ん?とカイルを見るとそっぽを向いている。

何その思春期の子供みたいな「あげる」「…………ありがと」的な雰囲気は!

セシリアは覚悟を決めてアレクサンダーの表情を窺った。


「……大丈夫」


セシリアに目で問われてアレクサンダーは頷いた。


「ジュュディスを知ろう大作戦は少なくとも進捗があった。ジュディが興味がある事だけは少なくとも分かった」


最終的にはカイルに持って行かれたけれど、とアレクサンダーはセシリアにだけ聞こえるように呟いた。


「あ!じゃあ次は俺のオススメの飯屋の番な!」


何も考えていない脳筋野郎が高らかに宣言をした。


モーリスもカイルもしくじっている。脳筋なら脳筋らしく次はアレクサンダーに勝ちを譲りなさいよね、とセシリアは思った。

読んで下さってありがとうございます^_^

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