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ヘタれ王子の求婚物語  作者: えるぜ


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13/21

ジュディスの好きな物

「ジュディの好きな食べ物は………特に無い、と言っていたな」


考え込むようにアレクサンダーが顎先に拳を寄せた。


「特には無いけれど、強いて言えば………」「強いて言えば!?」落ち着け、王子、とセシリアは思う。


「女子寮の食事、特に夕食はとても軽いんだ。勿論、必要最低限のタンパク質は含まれているんだけれど、就寝前と言う事もあって、どちらかと言うと、胃に負担をかけず、眠っている間美容に良さそうな野菜がメインかな。でも私は、一日中体を動かしているからね」


ぽっと頬を染めたジュディスは、アレクサンダーを除いた全員から「もっと肉食いたい」と語る成長期の少年にしか見えない。しかし、アレクサンダーフィルターは違う。


「………それは由々しい問題だな。セシリア、君も夕食には不満が?」


そうですねえ、とセシリアは答える。


「それでも全部食べられないと言う子もいれば、とても足りない、と夕食後に持ち込んだ軽食や甘味を摂る子もいますわね。私は、やはりダンスのレッスンが2コマある日などはやはり物足りないか、と思います」


「軽食や甘味ではなく、体を作る物、が好きかな」


「あ!じゃあさ!今度の休み、門限もあるだろうから夕方俺の好きな店に連れてくよ!肉系ガッツリ、でも油控えめ、お財布にも優しい!」


ほんと!?とジュディスの頬が更に赤くなった。

…………可愛い。脳内が剣術と肉で一杯のジュディ可愛過ぎる。アレクサンダーは心の中で悶絶していた。餌付けしたい。俺(が持って行く肉)が無ければ生きて行けない体にしたい。


「どちらにしろ、寮の食事については検討の余地がある。セシリア、君から提案する事は出来るか?」


「それは………カイル様がご同席下さる所に寮監をお招き出来ればスムーズかと。カイル様から一言お言葉を頂ければ」


僕?と言うようにカイルが首を傾げた。


「寮監は、カイル様のお祖母様、先代の正妃様の侍女長を務めていた方です。ですから、アレクサンダー様絡みで男装を許可されているジュディスには好感を持っていないご様子ですし、食事までジュディスだけ別扱いは難しいかと………」


「いいよ」とカイルが若干重苦しくなった空気を払うように言った。「ありがとうございます!では詳しくは後ほど相談致しましょう」


「そうそう、それよりさ、週末の計画立てようよ。食事だけじゃなくて、もっと早く城下で集まって、色々見て歩かない?ねえジュディ、武器や防具の店や、鍛冶屋なんかもあるよ」


モーリスの言葉に、ほんと!?と目を輝かせるジュディスを前にアレクサンダーは内心焦りまくっていた。食堂ではミッシェルが、店舗ではモーリスが。寮の食事ではカイルがそれぞれポイントを稼いでいる。その時閃いた。


「ジュディ、良かったら……」そう言って机の引き出しからチケットを取り出した。


「日数分あるけれど、都合で登校出来ない日や、簡単な執務があってここで持参した昼食を取る事もある。2ヶ月でかなり溜まってしまった。寮の食事が改善されるまで、当座良かったら………3時頃これでメインディッシュだけでも食べて貰うのはどうだろうか」


アレクサンダーが取り出したのはまさかのランチチケットだった。


「……………肩叩き券レベル?」


カイルとセシリアの声が見事にハモった。王子様がランチチケットをプレゼント!とミッシェルとモーリスは大笑いをしている。けれどジュディスは真剣だった。


「………ありがとう。とても嬉しい。大切に使わせて貰うよ」


いや、大切に使わせて貰う、の対象がおかしくね?真面目に渡すアレクサンダーも真面目に受け取るジュディスも何もかもが彼らのツボに刺さった。

ああ、こういうので、と言うかこういうのが良いんだわね、とセシリアはしみじみ思った。



そして迎えた週末。

お天気は快晴。少し歩くと汗ばむ程だ。アレクサンダーとMMKはそれぞれ王宮と自宅から、ジュディスとセシリアは寮から待ち合わせ場所へと向かった。結局、早めのお昼も食べようという流れになって、待ち合わせは10時だった。


「セシリア、私に付き合って歩いてくれているけれど、大丈夫?」とジュディスが思案気に尋ねた。安定のこざっぱりとした男装。そしてセシリアも気軽な平服である。


「ドレスは軽いし、ヒールも低いから大丈夫ですわ。でも気遣ってくれてありがとう。それじゃ、そうね、ジュディスがエスコートして下さる?」


「私で良ければ喜んで」そう言って腕を貸してくれる。男性ではないから気を使う必要もない、ちょっとした冗談のつもりだったのに、ジュディスの腕に自分の腕を絡めると何故かどきどきしてしまった。父親や兄のような筋肉の着き方とはまた違う、しなやかでそれでいて頼り甲斐のある腕の形に惚れ惚れとする。

ジュディスにエスコートされて城下を歩くと、周囲の女性達が皆羨ましそうにこちらを見る。いかん。私が思い出を作ってどうするんだ!とセシリアは脳内で自分の頬をぺちぺちと叩いた。


読んで下さってありがとうございます^_^

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