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まだ微熱と喉の違和感が治まりません。
土日の内に治したいです。
よろしくお願いいたします。
2026/4/20
陽子の体質名を【完全邪気耐性】として確定させたので編集しました。
陽子たちの歩みは、もはや「移動」という物理的な概念を完全に逸脱していた。
一歩踏み出し、角を曲がるたびに、空間のピースが不気味なほど無音で入れ替わる。つい数分前まで歩いていたはずの、赤い絨毯が敷かれた昭和レトロな廊下は、瞬きをした瞬間に、湿気でカビの生い茂る古い寄木細工の床へと変貌し、右側にあったはずの客室の扉は、不自然な角度で口を開けた「真っ暗な物置」にすり替わっている。
もはや「元の道に戻る」という選択肢は、この建物が牙を剥いた瞬間に消滅していた。
「……陽子さん、待ってください……。さっきから、同じ『302号室』の前を五回は通り過ぎてます。でも、さっきは扉が木製だったのに、今はなぜか鉄扉になってて……」
陽子の背後で、日和が不安げに周囲を見回しながら呟いた。
陽子が持たせた霊験あらたかな厄除けのお守りが、彼女の周囲にわずかな聖域を作ってはいる。だが、空間そのものが「悪意」を持って組み変わるこの迷宮においては、気休めにしかならない。
「気にするな。階層の概念が死んでるんだ。……それより、足元に気をつけろ」
陽子が事務的なトーンで警告を発した直後だった。
「ひゃうっ!?」
日和が何もない平坦な床で派手に足を滑らせた。不幸体質の彼女にとって、平穏な歩行すらも難易度の高いタスクと化す。彼女はバランスを取ろうと、咄嗟に傍らにあった飾り棚を掴んだが、それが運の尽きだった。
経年劣化で脆くなっていた棚は、彼女の細い腕の力にすら耐えきれず、「バキィッ!」という乾いた音を立てて崩壊した。
「……あ」
棚の上に置かれていた、趣味の悪い巨大な青磁の壺が、スローモーションのように宙を舞う。壺は陽子の肩を掠め、床に叩きつけられて粉々に砕け散った。
「す、すみません……! 陽子さん、わざとじゃなくて……!」
「……チッ。あたしの肩を狙ったのか? 請求書に『精神的苦痛への慰謝料』を追加してやろうか? あと、その壊した壺の出所も後で洗っておけよ。骨董的価値があれば、お前の給料から天引きだからな」
「そんなぁ……!」
陽子の冷徹な宣告に日和が崩れ落ちそうになったその時、さらなる鈍い衝撃音が回廊に響いた。
「ぐ、ふぉっ!?」
振り返れば、一八五センチの長身を持つ鬼塚が、不自然に低くせり出した鴨居の縁に、派手に額をぶつけて悶絶していた。
「……ちょっとぉ、ヨウちゃん! この建物、嫌がらせが過ぎないかな!? さっきまで天井、もっと高かったよね!? ボクの華麗なポニーテールが鴨居に絡まって、危うく首がもげるところだったよぉ!」
「お前の図体がデカすぎるだけだ。……黙って頭を下げて歩け。アホ」
陽子は残念な物を見るような目付きでそう吐き捨てた。
「ひどいなぁ! ボクはこれでもモデル顔負けのスタイルなんだからね!? あ痛たた……。でも見てよ、この鴨居の材質。二十年以上前の煤竹だ……。瘴気を吸って、いい感じに黒ずんでる。これ、削って持ち帰ったら結構な値段の呪物の材料になるかも……」
鬼塚は額を真っ赤に腫らし、涙目になりながらも、その瞳には不気味なコレクターとしての熱が宿っていた。彼女の首元でジャラリと鳴る数珠が、空間の歪みに反応してパチリと小さな火花を散らす。
三人が進むにつれ、館内に満ちる瘴気は、その密度を物理的な重圧へと変えていった。
それは本来、触れるだけで魂を削り、精神を磨耗させる毒だ。だが、陽子はこの異様な気配の中でも、まるで手入れの行き届いた庭園を散歩するかのように平然としていた。あらゆる霊的・呪詛的障害から一切害されることのない【完全邪気耐性】を持つ彼女にとって、この瘴気はせいぜい「湿気の強い霧」程度の認識でしかない。
しかし、それは陽子が例外なだけである。
「……うぅ、喉がイガイガする……。陽子さん、ここ、空気の味が変です……」
日和が、胸元に下げた厄除けのお守りを握りしめながら喘いだ。陽子が持たせた霊験あらたかなお守りのおかげで、彼女は「少し息苦しい」程度で済んでいるが、そうでなければ今頃、正気を保つことすら難しかっただろう。
「……ボ、ボクも、そろそろ数珠の玉が弾けそうだよぉ……。でも、この『密度』……ゾクゾクしちゃうね……っ!」
背後で這うように歩く鬼塚も、首から下げた黒い数珠や、手首に何重にも巻かれたアクセサリー型の呪物をジャラジャラと鳴らしている。顔色は青白く、呼吸も荒いが、その瞳だけは爛々と輝いていた。
「……チッ。効率が落ちる。鬼塚、お前のその無駄な高揚感で心拍数上げるんじゃねぇよ」
陽子は一度足を止め、バッグの奥から数枚の古びた紙札を取り出した。
「【天狗の邪気祓い札】だ。使い捨てだが、この程度の淀みなら弾き飛ばせる。……一枚十万。後でまとめて請求書に乗せる。拒否権はねぇからな」
陽子が手首を振ると、札は吸い付くように二人の胸元へ張り付いた。
刹那、清冽な気が放たれ、まとわりついていた泥濘のような重圧が霧散する。
「あ……。楽になりました。陽子さん、ありがとうございます……」
「生き返ったぁ……! さすがヨウちゃん、出すものは高いけど効き目は抜群だね! これでボクの寿命も三日分くらいは延びたかな!」
現金なもので、鬼塚は即座に息を吹き返し、またその瞳に不気味なコレクターとしての光を宿し始めた。
迷宮の深部へと潜り込んだ三人が辿り着いたのは、旅館の豪華な――あるいはかつて豪華だった――意匠とは完全に隔離された、異様な一画だった。
そこは、現代の建築様式を完全に無視していた。
天井は圧迫感を感じるほどに低く、剥き出しの太い梁には、数十年にわたる煮炊きの煤がこびり付き、漆黒の光沢を放っている。壁は漆喰ではなく、藁の混じった荒々しい土壁だ。
それは旅館の個室などではない。大戦前、この山間にひっそりと存在していた「村」の古民家の残骸が、建物の中に飲み込まれ、化石化したかのようにそこにあった。
「な、何……ここ……。旅館の中に、別の家が埋まってます……。間取りが……おかしいですよ。玄関を抜けたはずなのに、また勝手口が出てきたり、床の間が廊下の真ん中にあったり……」
日和が震える手で土壁をなぞる。足元には、埃を被った古い木箱が転がっていた。陽子がそれを無造作に蹴り開けると、中から風化した数枚の木札が現れた。
陽子はそれを拾い上げ、目を細めて判読する。
「……『戌の年。……の恵み、清流の……溢れる。湧き出る湯は、山の血なり……』……。チッ、ほとんど消えてやがるな」
それは、記憶の断片だった。
この古民家に住んでいた人たちは、この山から流れる温泉を山の「血液」として崇めていたようだ。
しかし、文字はかすれて他の部分を読み解く事は出来そうになかった。
「……温泉街が作られる前、大昔の村の記述か……」
陽子はそれ以上言葉を続けなかった。
ただ、この土壁の奥から伝わってくる、かつての村の温もりとは正反対の、粘りつくような「負の気配」に、わずかな懸念を抱いただけだ。
「……陽子さん、あそこ!」
日和が、廊下の突き当たりにある重厚な観音開きの扉を指差した。
古民家の間取りを通り抜けた先、その扉の隙間からは、瘴気とはまた異なる、強烈な「不浄の熱」が漏れ出している。
「おいデカブツ、遊んでないでアレを出せ。ここから先は『道』そのものがない。お前の趣味で買った、あの悪趣味なやつだ」
「遊んでないよぉ! 今まさに、鴨居の破片を回収しようとしてただけだよ! ほら、これだね? ボクのとっておき!」
陽子に言われて、鬼塚は懐から黄ばんだ小さな骨を取り出した。
「これが、ボクが先日オークションで落とした【千年前の骸の指骨】だよ! これを使えば、神社だろうがライブハウスだろうが、どこにだって強制的に『霊道』を繋げられるんだから……っ!」
陽子はそれをひったくるように奪い取ると、冷淡な手つきでバッグを掴み直し、扉へと歩み寄った。
陽子は、鬼塚から受け取った【千年前の骸の指骨】を、観音開きの扉の隙間に迷いなく突き立てた。
金属と骨が噛み合う、重苦しい「音」が空間の端々に反響する。本来、この先に物理的な道は存在しなかった。しかし、古の死者の骨を「楔」として打ち込んだことで、歪んだ空間は強制的に固定され、一本の「霊道」が無理やりこじ開けられた。
「……っ、開いた……!」
日和が息を呑む。重厚な扉が左右に開き、そこから溢れ出したのは、湿った土と、凍てつくような真冬の山の匂いだった。
三人が一歩踏み出した先――そこは、もはや「旅館の内部」という言葉が虚しく響くほどに広大な、異常な庭園だった。
「な、何……これ……。本当にお庭、なんですか? 広すぎて、先が見えません……」
日和が呆然と呟く。かつては贅を尽くした回遊式庭園だったはずの場所は、空間そのものが異様に拡張され、鬱蒼とした「森林」へと変貌を遂げていた。見上げるほどに巨大な杉の木が、天井の闇を突き破るかのように立ち並び、その隙間を縫うように冷たい山風が吹き抜けていく。建物の外皮という物理的な限界を超えて、庭園という器を内側から無理やり引き伸ばしてしまったかのような、病的な広大さがあった。
「……空間の整合性が完全に死んでるな。ヒヨコ、あたしの影から離れるなよ。ここで迷えば、一生出口は見つからねぇぞ」
陽子の警告に、日和は顔を真っ青にして頷き、陽子のコートの裾をぎゅっと掴んだ。陽子は先頭で目を細め、瘴気の流れを読みながら「核」となる仏像の所在を集中して探っている。三人は、膝まで届く深いシダ植物や、不自然に生い茂る下草を掻き分けながら、森の奥へと進んでいく。
「あの……鬼塚さん。鬼塚さんと陽子さんって、どれくらいのお付き合いなんですか?」
あまりの静寂と不気味さに耐えかね、日和が小声で尋ねた。
前を行く陽子の背中を気にしながら、鬼塚は鴨居で打った額をさすりつつ、ニヤリと笑う。
「んー? そうだねぇ、もう三、四年くらいになるかな? 馴れ初めは、とある闇オークション! ボクが購入者で、ヨウちゃんが商品の出品者として参加してた時だね!」
「へぇ、オークション……」
「そう! ボクが落札したのは【黄金の左腕】っていう、本物の骨が仕込まれた純金の腕でさ。実はそれが、ミダス王の呪いを模倣した『人間を金に変えて殺す』ための装置だったんだよ」
鬼塚の言葉が、霧の中に不吉な影を落とす。
その呪物は、所有者の片腕を黄金に変えて殺害し、その腕を「純金」として量産しようとする殺人集団の道具だった。陽子は遺品整理でそれを発見し、詳細不明のまま出品したが、その裏に潜む悪意に気づくのは後のことだった。
「それを量産しようとしてた殺人集団がいてさ、ボク、落札した直後に彼らに攫われちゃって……。でもね、絶体絶命のボクが連絡したら、ヨウちゃんが乗り込んできて集団をちぎっては投げ、ちぎっては投げと壊滅させてくれたんだ! 『あたしの商品で、勝手な死体を増やすな』って。あの時のヨウちゃん、最高にヒーローっぽくて……」
言いかけた鬼塚の言葉が、物理的な衝撃によって断ち切られた。
陽子が振り返るよりも速く放たれた後方への回し蹴りが、鬼塚の無防備な尻を捉えたのだ。空道を始めとした武術を修め、全身の力を一点に集約させる術を熟知している陽子の一撃は、重戦車のような重みを持って鬼塚の巨体を軽々とシダの群生へと弾き飛ばした。
「あべしっ……!? い、痛いいぃぃ! 何するのさヨウちゃん! 感動の回想シーンだったのに!」
「黙れ。いつまで無駄話を垂れ流してやがる。一秒ごとにあたしの時給が発生してる自覚を持て。この状況で思い出話に花を咲かせてる余裕なんぞねぇ」
陽子の冷徹な視線が、次に日和へと向けられた。
「ひっ……!」
「お前もだ。ここはピクニック会場じゃねぇ。客のつまらねぇ話に付き合って集中力を欠くなら、ここでお前を置いていくぞ。……ほら、こっちを向け」
「は、はい……ふぇっ!? ――っ!?!?!?」
陽子の中指が、日和の額を正確に射抜いた。
『呪いのビデオ』の時のような霊的な解呪のそれとは違う、純粋に「物理的な痛み」を分からせるための加減された、しかし苛烈な一撃。武芸百般に通じる陽子は、どう打てば最も痛みを与えられるかを知り抜いている。
「あ……あぅ、あ……っ……!!」
日和は絶叫することすらできず、あまりの激痛に両手で額を押さえ、その場に崩れ落ちた。視界の端々で火花が散り、額から頭蓋骨を突き抜けて後頭部まで電流が走ったかのような衝撃に、涙と鼻水が止まらなくなる。
「少しは頭が冷えたか。……次はないぞ」
陽子の瞳には、事務的な冷徹さを通り越した、真の「不快感」が宿っていた。日和はガタガタと震えながら、真っ赤に腫れ上がった額を必死に押さえ何度も頷き、陽子の後ろを必死で追う。泥にまみれた鬼塚も、陽子の本気の苛立ちを感じ取り、慌てて口を閉じた。
三人が歩を進めるごとに、足元に広がる光景は凄惨さを増していった。
それは単なるゴミの投棄ではない。かつてこの場所で神隠しに遭い、そして終わっていった人間たちの、生々しすぎる生の証明だった。
「……っ、陽子さん、これ……見てください……」
日和が震える指先で指し示したのは、一本の立ち枯れた杉の木だった。その幹には、無数の「爪痕」が刻まれている。樹皮にはどす黒く変色した染みが付着し、その隙間には、二十年前の少女たちが好んだような、安っぽいプラスチックの髪飾りが蜘蛛の巣に絡まるようにしてぶら下がっていた。
周囲を見渡せば、さらに異様な光景が視界に入る。泥に半分埋もれた使い捨てカメラ、腐食したカップ麺。そして、ある一画には、数人分の靴が、まるで玄関先であるかのように揃えて並べられていた。その中には、小さな、幼児用の赤いエナメル靴も含まれている。
「ひっ……、あ、うぅ……」
日和の喉から、掠れた悲鳴が漏れた。
麓で陽子から「ここは客を喰うための巨大な胃袋だ」と聞かされていたが、こうして目の前に転がる遺留品を見れば、それが比喩ではないことを痛いほどに理解させられる。ここで絶望し、出口を求めて彷徨い、力尽きた人々。それを追い詰めたのは、仏像よりもさらに根深い「何か」なのだ。
「あはっ! 見てよヨウちゃん、この靴の並び方! やっぱりあの仏像、噂に違わぬ蒐集癖だね。これだけの人間を呑み込んで、自分だけの展示室を作っちゃうなんて。ボクのコレクションに加えるのが、ますます楽しみになってきたよぉ!」
鬼塚が、蹴り飛ばされた尻をさすりながら追いついてきた。彼女は転がっていた遺留品を、興奮を隠せない手つきで眺めている。
「……めでてぇな。お前は、このゴミの山が全部あの木彫りの人形一つのせいだと思ってんのか」
陽子は、足元に転がっていた「主を失った眼鏡」を無造作に踏み砕いた。パキッ、と乾いた音が静まり返った森に冷たく響く。
「え……? 何言ってるんだい、ヨウちゃん。この旅館がこうなったのは、あの呪われた仏像のせいで……」
「麓のじいさんは、仏像を置いてから神隠しが始まったと言ってたが、怪現象自体はそれ以前からだ。……恐らく、オーナーが仏像を担ぎ出したのは、温泉に紐付いた元々この土地にいた『何か』を鎮めるためだったんだろうが、それが逆効果だった。仏像って器で無理やり蓋をされた結果、そいつは腐り落ちて、ただ人間を食らうだけの化物へとなり果てた。……ここは今、その腐敗した泥の底だ」
陽子の冷徹な指摘に、鬼塚はこれまでにないほど素っ頓狂な声を上げた。自信満々だった鑑定結果を、現場の状況から導き出された事実によってあっさりと否定され、その巨体を揺らして驚愕している。
「じゃ、じゃあボクが欲しがってるあの子は……一体何なんだい!?」
「檻にしては、中身がデカくなりすぎたな。恐らくあそこに鎮座してるのは、もはや仏でも何でもねぇ。この土地に溜まった泥を吸い上げて膨らみ続ける、巨大な『腫瘍』だ。……そしてその腫瘍は、今も新しい肉を欲しがってやがる」
陽子の言葉を裏付けるように、深い霧の向こう側、木々の隙間に見える影が蠢いた気がした。日和は涙目で陽子の背中に必死でしがみつく。陽子はそんな二人を背後に、一層冷たさを増した声で告げた。
「……着いたぞ。お喋りは終わりだ」
霧が晴れ、ようやく辿り着いた庭園の最奥、泥濘んだ池の中央。
そこには、二十年以上の時を経て肥大化した「仏像」が鎮座していた。本来は精巧な木彫りだったはずの体躯は、元の数倍の大きさに膨張し、爆ぜた木肌の隙間からは血管のような赤黒い根が、ドロドロの泥水へと這い出している。
「……っ。あ、あはは……。ボクの想定より、随分と『育って』しまっているね……。これは場所を取りそうだよ」
鬼塚は、目の前の異形に圧倒されながらも、引き攣った笑みを浮かべた。その禍々しさは、彼女のコレクターとしての想像を絶していた。
「……寝言は寝て言え。あれはもう、中身が器から溢れ出してる。回収方法はこっちで決めるぞ」
陽子はバッグの奥底から、鈍い銀色を放つ巨大な「鋏」のような形状の呪物を取り出した。
「仏だろうが、化物だろうが関係ねぇ。あたしの計算を狂わせ、あたしの貴重な時間を浪費させた対価は……」
陽子がその鋏を構えた瞬間、森全体の木々が一斉に、激しくざわめき始めた。社に鎮座する異形の仏像が、ギチギチと木材の軋む音を立て、ゆっくりとその首を――陽子の方へと向けた。
「……その魂ごと毟り取って、きっちり精算してやるよ」
不快な静寂を切り裂いて、陽子は一歩、泥濘んだ地面を踏みしめた。それは対等な戦いの宣言ではなく、ただ一方的な「帳理合わせ」の始まりだった。
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