第6話 コトリバコ
「ねぇ、しってる?」
彼女はそのまま語り出す。
蝋燭はまだ残っているものの、既に5本も消した。
そして、今6本目の怪談が始まろうとしていた。
「ある時ね、木箱を見つけたんだって。
でもそれ、少しおかしくてね。」
謎の木箱、
呪いにより女性と幼い子供が亡くなる不思議な箱。
───「コトリバコ」
「話によると何箱もあるとか。
そんな物絶対に触れたり開けたりしちゃダメ。
とくに子供はね。
なんたってそれは、子取り箱なんだから。」
彼女は笑みを浮かべていた。
その笑みは、灯りに揺れ不気味な影が浮き上がる。
――――――――――――――――――――――
─アパート内で女性と幼い子供が死亡。─
家には謎の”木箱”が──
S県のアパートで女性と幼い子供が死亡しているのが発見された。
室内で争った痕跡はなく、遺書も確認されていない。
部屋の隅に古い木箱が見つかり、数日前に近隣の神社から盗まれたものと判定。
その木箱は数日前に女性と幼い子供が住むアパートへ届いた物であり、これをきっかけに事件は警察から協会へと移り変わった。
協会は数日前に失踪したコトリバコが事件の原因とし
それから警察は、コトリバコを送った無職男性を逮捕した。
――――――――――――――――――――――
某テレビ局のスタジオ裏。
「おいおい、これ大丈夫か?本物なんじゃ……」
不安そうに、テレビのスタッフが問題の”木箱”を裏から運び出そうとする。
「大丈夫だ。
男は被害にあったっていう噂は聞かない。
それに、どうせ偽物だ。」
軽く言い切ったディレクターは、余裕の笑みを浮かべながら、スタジオの準備を進めさせた。
――――
「さぁー!
今夜お送りするのは、怪異的現象特別協会に所属している有名な霊能力者御三方に来てもらいました!
ゲストのミカちゃん!どう?」
唐突に始まった番組。
”除霊しまショー”にて、司会者が明るい声で
アイドルのミカに話を振る。
「私、昔ある男性に命を助けられて……
その日からこういうオカルト的なことに少しハマってしまい………とにかく今日は呼ばれて光栄です!」
たどたどしいながらも、ミカは真っ直ぐにそう答えた。
「なるほど!
では、さっそく登場してもらいましょう。
今回は、今話題の怪異的現象特別協会から四人の特別な霊能力者に来ていただきました!
その方々には今日!生放送で、ある”物”を除霊してもらいます!」
司会者は、入場口に向けて腕を広げた瞬間、ライトが眩く灯る。
【ワイト・ヨミス】
協会で知らぬ者はいない、長身のイケメン霊能力者。
端正な容姿に加え、確かな霊能力を併せ持ち、
”力”と”人気”という二つの数字で協会トップクラスを誇る。
落ち着いた判断力と確かな除霊技術で、過去には
準S級怪異を助手と共に二人で撃破した実績も。
今日も的確な助言と、冷静な霊視解析が期待される。
「えっと、どうもー。」
ワイトはカメラを見つけ、すぐに柔らかな微笑みを浮かべ手を振る。
【リリー・スサラ】
赤髪で少し小さく可憐な女性霊能力者。
たった2ヶ月前、安倍晴明以来となる人類初のS級怪異除霊を果たした“新星”。
しかし彼女は 怪異の姿が見えない という珍しい体質を持つ。
それでも恐れず前に出る姿勢が、多くの人々の心を掴んで離さない。
今日はその弓を使うかどうかにも注目が集まる…?
「こんばんわ……」
【零霊感太】
圧倒的カリスマ。圧倒的人気。
20代後半の若さで協会の中心的存在となり、
“圧倒的な霊力で怪異を一瞬で祓う男”として伝説的な評価を得ている。
現役引退した“あの大物”からも信頼を寄せられており、
「もう少し早く生まれていれば、肩を並べる存在だった」と評された天才。
今日は“トップエリート”として現場を監督する立場で出演する。
「どうも!よろしくお願いします。」
【土御門 小雪】
現役高校1年生。若き女子霊能力者にして、安倍晴明の血を受け継ぐ名門・土御門家の末裔。
霊力自体はトップクラスだが、まだその力を完全に使いこなせているわけではない。
それでも努力家で、協会内の期待度は急上昇中の“期待の超新星”。
今日は安倍家直系として、ある物の呪術的側面を読み解く役割で招かれた。
「こんばんわ。よろしくお願いします。」
四人はそれぞれ軽い挨拶を交わし、ゆっくりと席に着く。
全ての発端は1週間前に遡る。
―――
「テレビ!?」
景太は驚きの声を上げ!目の前に座るリリーを見る。
腕を組んだまま、紬はその様子を静かに見守っていた。
「まぁね。急遽………霊能力者が出るのは珍しくないんだけどさ。
宣伝にもなるし、依頼も増えるし。」
「その場で除霊とかするんですか?」
紬が問いかける。
「んー。
まぁ、しないかな。他の人に任せるよ。私見えないし?」
「まぁ、確かに。
一人で行けます?」
「あんたは母親か。」
―――
「いやー!!
勢揃い!今話題の霊能力者がこう揃うとは!」
司会者は興奮冷めやらぬ様子で横一列に並ぶ四人の霊能力者を見回す。
「まぁまぁ。大袈裟ですよ。
ね?リリー?」
「ああ?そうだな……」
ワイトはわざとリリーに話を振る。
そう、ワイト・ヨミス。
彼は、ダークエルフとリザードのハーフ。少し特殊だが見た目は褐色肌の人間。
見えないものの、防御力はリザードの鱗のような強靭な肌をしているのだ。もちろんリリーと同じ異世界出身であり、なんなら同じ学園である。
ちなみに、ワイトは耳が尖っているのを隠すことができるため、リリーのようにフードをかぶる必要はない。
二人の仲は悪いわけではないが、ワイトだけリリーに少しだけライバル心を抱いていた。
「さて、今回はこちら!コトリバコを皆さんに除霊していただきます!」
「「「………!」」」
「……?……」
赤みを帯びた木箱が運び込まれた瞬間、空気が重くスタジオ内が少し暗くなる。
ワイト、リリー、小雪は直感した。これは本物だと。
「うわー。雰囲気ありますね!」
アイドルのミカが無邪気に声を上げるが、3人は既に本物だと感じとっていた。
(これ、本物……)
小雪はそう思い、思わず座席から立ち上がり指をさす。
「では、一人一人話を聞きましょう!」
司会者が促し、まずワイトが口を開く。
「そうですね。おそらく、四人。葬ってる。
ざっと、見たところC級怪異ですね。子供が何人か……」
ワイトは見える情報を淡々と告げていく。
「えっと、見えないんですけど。雰囲気的に多分ワイトが言った通り、子供が4人ほどいますね。」
リリーは困ったように答え、司会者はすぐにフォローを入れる。
「大丈夫ですよ。見える範囲で構いません。」
どうやら、司会者はすでにリリーに惚れかけているらしい。
「はい。いますね。というか、本物だと……
神社とかにあったやつですよね?なんとなく、そんな気配が混ざってる。」
小雪は真剣な眼差しで言う。
一方その頃。
(やっべ。わかんねぇー。)
感太は心の中で叫んでいた。
そう、この男──霊力が無い。除霊の才能もない。
ただ運だけで上り詰めた奇跡の凡人である。
彼ができることと言えば、市販で売っている塩を大量に撒き散らすだけ。
(やべー。どうしよっ。とりあえずで出演おっけいしちゃったけど……霊?しらねぇよ……!
こんなの少し古臭いティッシュ箱にしか見えない……)
「えっと……そうですね。
かなり強い憎悪を感じます。いますね!確実に……」
「ほほぉ!感太さんもそう言いますか。なるほど、これは本物だと……」
司会者は完全に信じ切った。
だが、ワイトとリリーは瞬時に見抜いた。
((ダウト。))
(これが先輩なんだ、、歴の違いってやつ……?)
小雪は純粋だった。
「では、早速除霊を!!」
司会者の合図と共に最初に立ち上がったのは、
ワイトだった。
胸ポケットからお札を取り出し、木箱へ貼りつける。
「コトリバコは呪いの箱。女性や子供、とにかく
めちゃくちゃ触ったり、開けたりしなければ影響はない。
まぁ、強い霊力で除霊をして仕舞えば………」
ワイトはリリーの方を見る。
リリーは手で大きくバツ印を作った。
(……ムリムリッ………)
(なんでだよ!!)
本来の予定では、ワイトがお札で霊力を弱め、リリーの弓で仕留める計画だった。
だがリリーには弓が使えない理由がある。
次に立ち上がったのは小雪だった。
印を結び、強い霊力をそのまま箱へ叩きつける。
「おい!女性が触ると……」
『うっ、強い……』
微かな声が聞こえた気がした。
ワイトの制止も間に合わず、コトリバコには微かなヒビが入る。
そして、砕け散った。
邪悪な気配が消え去り、スタジオないが明るく軽くなる。
「私の霊力に食らいつきすぎたみたいです。
壊せました……」
小雪はそう言うと、その場に崩れ落ちた。
スタッフは慌てて駆け寄り、司会者はすぐにカメラをワイトへ切り替える。
「え?えっと、コトリバコには子どもの身体の一部が入ってるんです。それで、、呪いの箱を……対象者に送る。
皆さんは辺な贈り物を受け取らないでくださいね?」
口角を上げワイトは軽く手を振った。
「えっと!今日はここまでありがとうございました!
また、、来週お会いしましょう!」
〜除霊しまショー終了〜
「何このテレビ……」
景太は紬達と事務所で番組を見ながら呆れた声を漏らす。
――――
テレビ局。放送終了後のバックヤード。
「まだ弓のこと気にしてんのか?あの子の前で使わないって……お陰で霊力を変に使いすぎて倒れたぞ」
ワイトは壁に寄りかかりながらリリーに問いかける。
「まぁね。でもあの子努力家でさ。
安倍晴明の子孫っていう重圧があると思うんだけど、頑張ってたんだ。正式な継承者でもなければ、違う世界のエルフだよ?
そう易々とあの子の前で弓を使った除霊は出来ないよ。」
「エルフの得意武器は弓と矢だろ?」
「エルフは全武器が得意なの。」
二人は軽く言い合いながら小雪の見舞いに向かった。
「あ!お疲れ様です!」
感太はスタッフや裏方全員に丁寧に頭を下げ、テレビ局を後にする。
霊力はなくても人の良さは本物だった。
――――――――――――――――――――――
少女は6本目の蝋燭の火を消した。
「全く、あまり強くないな。コトリバコ……
次こそは……」
彼女は少し声を低くしてそう言った。
そして、すぐにいつものテンションへと上げる。
「まぁ、皆んなはそういう変な箱には気をつけてね?
コトリバコって、人の数ほど生まれるんだ。あれは、ほんの一部。それに、まだ四人の子供の身体の一部しか入ってない。
じゃあ次の話ね。」
彼女はそう、揚々と話し始めた。
──────────────────────
怪異名:コトリバコ
怪異階級:C級
攻撃力:B
スピード:E
知能:E
防御力:B
噂レベル:C
怪域:なし。
種別:呪詛型怪異
リリーメモ:受け取るな。




