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第5話 首なしライダー

書くのに一番時間かかりました。

「ねぇしってる?」

 暗い一室、少女は火がついた蝋燭の目の前でゆっくりと語り始める。


「夜道、道路でバイクに乗った人が現れるんだって。

 でもそれはよくあるよね?

 でもね。その人、首がないんだって。」


 人気がない、夜の道。

 バイクのエンジン音が鳴り響く。

 首がないライダー。


 ───「首なしライダー」


「気をつけてね。首が見えてると襲って来るらしい。

 凶暴らしいよ。」

 彼女は声を低くして続ける。


「今度は勝てるかな?」

 彼女は静かに微笑んだ。


 ――――――――――――――――――――――


 ─1975年、男性の首が切断される事件発生。─


 現場は血だらけ。何者かによる悪戯か──


 1975年。県内の道路で夜。

 バイクに乗っていた男性の首が切断される事件が発生。


 その後首のないライダーを乗せたままバイクはしばらく走り続けたという。


 道路など、周辺には異常は見られなく、事故ではない。

 決定的となったのは、現場数百メートル離れた公園に血のついたピアノ線が発見された。

 何者かが、道路に一時的に張り被害者男性が引っかかったのを確認したのちピアノ線を外し逃走したと思われる。


 愉快犯による反抗、殺人事件として警察は捜査。

 だが、証拠が少なく犯人は捕まっていない。


 その数年後。

 首のないライダー、首なしライダーが人々の間で噂になり始め、首なしライダーを見たと証言者が多数。


 遭遇者の多くは衝突、転倒による重傷を負い、

 中には首の損失を伴う死亡例も確認されている。


 怪異的現象特別協会は、首なしライダーをその凶悪性や執着性を判断し。


 A級怪異として、正式に”首なしライダー”を登録した。



 ――――


 若葉台高校。

 ごく一般的な普通科の学校。

 高校2年性。田崎紬(たさきつむぎ)、窓際隣の誰も座っていない席に視線を向ける。


「………」

 教室の扉が開き、岩瀬景太は一直線、自分の席へと

 向かい着席する。


「ん?なに?」

 景太は紬に視線を向ける。

 景太の幼馴染であり、景太の霊による取り憑かれやすい体質もずっと昔から知っている。

 だが、彼女は霊感がない。


 家は神社であり、本人は巫女として渋々働いている。だが神様を信じているわけではない。

 彼女は、景太の数少ない友人の一人である。


 紬は思い切って聞いて見ることにした。


「最近さ、景太明るくなった?」

 昔は暗く、誰とも話さない。誰にも心を開かないという感じだったが、最近はやけに明るくすぐに帰ってしまう。


「陸上またやり始めたとか?入って少しやってもう行かなくなったでしょ?」

「オマエは俺のお母さんか?」

 いつもよりグイグイとくる紬に対して、

 景太は少し気味悪くなった。


 放課後。学校が終わり、景太は教室を出ていく。

 紬は、景太の後をつけることにした。


 景太の後ろ姿、今までは俯きながら帰っているのを目撃したが、

 今はもう景太は前を向いてしっかりと一歩一歩歩いている。


(明らかにおかしい。)


 ここで安心せず、怪しく思うのが紬である。

 少し尾行を続けると、景太はとある建物に入って行ったのがわかった。


「怪異特別事務所……?…」

 紬は思わず2階にある看板の文字を読んだ。

 その時紬は思い出したのだ。

 景太がアルバイトを始めたというのをこの前言っていた。


(このこと……?)


 紬は、建物の中に入った。


 ―――


 事務所内で、景太はリリーに問いかける。

「それで?今回の依頼は?」

 リリーはパソコンを弄りながら画面を見せる。

 どうやら、昔の新聞記事のようだ。

 そこには、前に言っていた怪異的現象特別協会の文字があった。


「A級?」

 そこには、協会が今回の怪異をA級と登録したと記載されている。


「そう。A級となると一筋縄では行かないかも。」

 リリーはいつになく真剣な眼差しで景太を見据える。

「まぁ、俺たちなら余裕だろ?」

 雷獣がトボトボ歩いてそう言った。

 何をもってそう思っているのか。


「お前は使えない。」

「なんでそんなこと言うんだ……!!」

 リリーの一言に、雷獣は崩れ落ちた。

「そんなやばいんですか?A級って……」

「まぁ普通に強いね。

 けど、何回か除霊したことあるし、S級も一回祓ったことある。犠牲者は出ちゃったけど……」


 リリーは少し俯きながら視線を落としそう言った。

 景太はそれを聞いて少し黙り込んだ。

「今回は、協会からの直々の依頼。お金は高く付く。これで家賃を全て払う!」

 いつも通りのリリーに戻った。


「……俺も行きます。どうします?」 

 景太がそう言うも、リリーは首を横に振った。

「ダメ。今回は最小限の人数で行く。化けぎつねはいつも来てくれるわけじゃない。私と……雷獣で。」


 リリーはゆっくりと視線を雷獣に向けた。

「なんでそんな嫌そうなんだ!!」

 雷獣はリリーの足に、小さい身体で体当たりする。

 リリーはそれを軽く無視した。


「でも……」

「危ないんだ。助手だろうが。

 死んでほしくない。」

 リリーは声を小さくしてそう言った。

 その時、玄関から足音。

 その瞬間、扉が勢いよく開いた。

「そうだよ!

 景太は行っちゃダメ!」

 手を伸ばし制止する紬。


 どうやら、先ほどの会話を書かれていたようだ。

「え、紬?」

「「誰?」」

 リリーと雷獣の声が揃う。

 そうして、紬はリリーに近づき指をさす。

「最近景太が元気になって何があったのかと思って付けてみたら、貴女だったのね!

 こんな危ないことダメだよ。」

「ストーカーか、気持ち悪っ!」

 リリーが迫真にそう言うも、お前もだろ。

 と、景太は思った。


「こんな所やめよ?」

 紬は、景太にそう問いかける。

「いや、、でも。」

 景太は少し黙り込む。すると、紬は思わぬことを言った。


「なら、、私もここで働きます!」

「……ん?無理でしょ…」

 リリーはそう言ってパソコンに戻り依頼を受領した。

「え、なんで!?」

 紬は声を上げる。

 だが、景太は気づいていた。


(給料払えないんだな……)


「じゃあ、今回の依頼で、見返します、」

 紬はリリーにそう宣言するも、パソコンの画面を見せる。

「首なしライダー。いけるの?」

「………いける!」

「無理!とにかく君たちは参加なし。

 この依頼は私と雷獣で片付ける。もう目の前で助手は死なせないから………」


 景太は、口角を上げ、笑顔で言った。

「行ってこい!」

 リリーには狙いがすぐにわかった。


「勝手に来たらマジで怒るから。」

「あ、はい。まじすいません。」


 ――――


 夜。時刻は23時過ぎ。


 フードを被り、肩には雷獣が乗っている。

「見える?」

 リリーがそう問いかける。

 だが、雷獣は首を横に振った。


 あたりが静まり返ったその瞬間、

 バイクのエンジン音が遠くから微かに聞こえる。

「このエンジン音と、この時間。」

「多分、いや。確定で首なしライダー……」


 リリー達は茂みの中でそのバイカーが目の前を通りかかるのを待つ。


 ブオオオーーン!!


 エンジン音が近づいてくる。

 リリーは目を凝らす。


(あんなはっきり………)


 それは、、

「お前ら何してんだ。」

 バイクに跨り首にマフラーをつけた化けぎつねだった。


「こっちのセリフだ!」

「思わせぶりやめろ!」

「なんのことだ?

 二人して怒りやがって……」


「ビビるだろ。どこにでもいるし、」

「ワイルドすぎるわ。ん?」


 その時、後ろから一つの光が近づいてくる。バイクの光、

 2人はよく目を凝らし、バイクに乗っている人の顔を見た。

 すると、頭がない。

 そう、首なしライダーがいたのだ。


「「出た〜〜!!」」

「え、出た!?」


 リリーは音しか聞こえなく、姿が見えないものの、

 雷獣と一緒に化けぎつねのバイクの後ろに乗り発進。


 首なしライダーから距離を取る。


 ――――


 リリー達の地点から2キロほど離れた地点

(だんだんと近づいてきてます。)


「本当に来て良かったのかな。」

 景太は心配そうに、首なしライダーの事件現場へとやってきた。

 数十年前、ここで首なしライダーが生まれた。


「大丈夫!多分………」

「頼りないな。」


 景太は紬の様子を見て少し笑った。

「安心した。

 ずっと暗かった景太が、あそこで楽しそうで、仲良いんだね。あの人と……」

「まぁね。助けられたし、、」


(あれ、人というか……異世界から来たエルフだけど。)


 景太は思ったが、まだ伝えなかった。

 すると、景太は紬の後ろの方へと視線を向ける。


「……あのさ、いつか伝えようと思ってたんだけど、

 紬の家は神社だよね?」

 紬は、思わず頷く。


「うん。そうだけど……」

「狛犬とかいる?」

「そりゃあ………」

「見えないんだよね?」

「霊感ないし、親にも特に、、私は神様とか信じてないし、渋々巫女として少し働いてるだけだけど。」

「そっか……あのさ、、」


 そう言おうとしたそのとき、、

 後ろからバイクの音が響き渡る。

 そこには、化けぎつねとリリー、雷獣が乗ったバイクが。


「リリーさん!?」

「え!何してんの!?」

 3人の乗ったバイクを追いかけるようにその後ろには

 首のないライダー、がバイクに乗り迫ってきている。

 すぐに景太はあれが、首なしライダーということがわかった。


 そして、紬と景太の二人は首が見えている。

 首なしライダーは相手の首を狙うという説がある。

 そのため、対処法として首を隠すというのがあるが。


 化けぎつねは、首をマフラーで、リリーはフードを被っている。雷獣は人間の姿ではないので、首はほぼなし。

 だが、バイクを運転しているため勝手に追われているのだが。

 首なしライダーの近くには、制服を着ている景太に紬。


 どちらも首がはっきり見えている。


 首なしライダーは、狙いを変え二人に向かってバイクを突っ込ませる。


「こっち!」


 景太は、紬の手を引き横にずれる。

 首なしライダーは建物の扉にバイクごと突っ込んだものの、一切怯む様子はなく、すぐに二人を再度追いかける。


 猛スピードであり、執着性。

 ターボばあちゃんとは明らかに……


「違う。」


 リリーの手元に弓が現れる。

 リリーは雷獣を置いてバイクから降りる。


「リリー?」

 化けぎつねは、すぐに止まりリリーに視線を向ける。

 リリーは走り、景太の肩を掴んだ。

 その瞬間、


(うわ。ハッキリ見えんじゃん……)


 リリーは首なしライダーの姿を見て思わず下を向いてしまった。

 その時、首なしライダーはエンジンを掛ける。

 リリーは弓を構えるのが遅れてしまった。


「リリー!!」


 景太はリリーの手を引っ張る。

 だが、間に合わない。

 首なしライダーは猛スピードでこちらに迫ってきている。

 当たる、その時。


 紬は景太の近くに寄った。

 その瞬間、首なしライダーはバイクごと吹き飛ばされた。

 景太とリリーの目の前に現れたのは2体の白く大きな犬。


「……狛犬?」

「え?」


 首なしライダーは、すぐに立ち上がり体勢を立て直そうとする。

 口が空いた狛犬と閉まっている狛犬。

 首には注連縄(しめなわ)と大きな鈴が付いている。

 頭の上には一本のツノ。

阿形、吽形(あぎょう、うんぎょう)。守ってたのか。紬を。」 


 リリーはすぐにハッとして、矢で狙いを定める。

 リリーが構えた矢は燃えており、しっかりと狙いを定める。

 狛犬が、首なしライダーに向かってゆっくりと歩いていく。

 それに対して首なしライダーは、静かにバイクに跨り攻撃の準備をする。


 それを見て、リリーはすぐに矢の種類を変えた。


「そっか………水行(すいぎょう)……月影(げつえい)。」


 矢は、首なしライダーの胸に突き刺さり、

 そのまま首なしライダーは白い光となって消えていった。


「除霊完了。」


 リリーは紬を呼びかける。

「景太に触れるとその視界に入っていた怪異は見えるってことに気付いたんだ。

 流石特殊体質。それで景太に触れて見えたでしょ?守護霊。」


 リリーは淡々と話す。

 それを聞いて、景太が驚いたような仕草をする。


「あの狛犬。首なしライダーはわざと姿を現した。驚かすために、私は霊感ゼロだから触れるまで見えないけど、紬には最初から見えてたと思う。

 でも、狛犬はあくまで守護霊だから姿を見せなかった。」


「景太から少し聞いてた君の話。

 こんな俺にもずっと仲良くしてくれる数少ない友人って。

 神社なんでしょ?家。」


 それを聞いて、景太と紬は恥ずかしそうに目を逸らす。

「嫌々だろうが、狛犬に好かれるのはすごい。いい守護霊だ。

 首なしライダー、怪異をあそこまでハッキリ見たのは久しぶり。

 怖かったのは私の方みたい。助けてくれてありがとう。」


 リリーは紬の目を見て、ゆっくりと頭を下げた。

「そんな、私は何も………」

「景太が心配なんだよね。

 いいよ。今回の依頼料は協会から出てる。高いからね。

 君を雇う。第二の助手として、それと景太の給料と貯めてた家賃を払う。」


 リリーはそう言って、化けぎつねの方に目をやった。

「上出来だ。」

 化けぎつねはそう一言言った。


 そしてリリーは口角を上げる。

「でさ。さっき咄嗟に呼び捨てした?

 リリー!って言ったよね?」

 リリーはそうして、景太の肩をつついた。


「は!?、いや……別にいいだろ?!」

 景太は少し顔を赤らめる。

「いいよ。別に。タメで行こう。」

 リリーは景太の顔を覗き込み少し頬を赤らめてそう言った。


 だが、そこから見える笑みはいたずら心からなる笑みだった。


 ――――――――――――――――――――――


 少女は5本目の蝋燭の火をフッと吹いて消す。

 そして少女は、また静かに口を開いた。


「これにも勝つか……

 ああ、ごめん。こっちの話ね。

 物凄く強い怪異だったね。皆んなはそもそも夜道に軽く出歩いちゃダメだよ?

 どんな時も周りには注意しないとね。」


 少女は肩の力を抜き、姿勢を整え直し次の話に移る。


「じゃあ、次の話をしようか……」


 ──────────────────────



 怪異名:狛犬

 怪異階級:A級


 攻撃力:B

 スピード:B

 知能:D

 防御力:B

 噂レベル:A


 怪域:不明。

 種別:特異型怪異


 ―――


 怪異名:首なしライダー

 怪異階級:A級


 攻撃力:B

 スピード:B

 知能:A

 防御力:B

 噂レベル:B


 怪域:不完全。首への執着により発生する斬撃。

 種別:高速型怪異


 リリーメモ:狙えパンク!

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