第2話 ターボばあちゃん
ターボばあちゃん。
ギャグ的要素だいぶ強いよね。
「ねぇしってる?」
少女は微笑みながら言った。
暗い部屋、火のついた蝋燭が何本も立っているその部屋で……話し始める。
「ある山道のトンネルを車で走ってるとね。
後ろからものすごい速さで追い抜いてくるおばあさんが居るんだって。」
人気がない山道、暗いトンネル。
そこを走る車を、とんでもない速さで追ってくるおばあさん。
───「ターボばあちゃん」
「話によると、1人じゃなくて違う種類もいるとか。
でも、絶対に抜かれちゃダメだよ。」
彼女は声を低くして言った。
「追い抜かれたら事故に遭うらしい。
最悪の場合………もうこの世界には戻れないかも。」
――――――――――――――――――――――
─H県、R山で不可解な事故相次ぐ。─
”猛スピードで走る謎の老人”を目撃したと証言──
H県内、観光地として有名なR山で、突如謎の交通事故が発生。
その事故で幸い死者は出なかったものの、
乗っていた成人男性3人の内2人が意識不明の重体。
唯一軽傷者である1人の男性は
「運転中高速で横切る老人を見た!」
と怯えながら証言。
その一週間後彼は自宅で亡くなっているのが発見、通報される。
監察医による検査の結果、死因は自殺と判断された。
――――
きさらぎ駅の被害にあってから3日が経った。
景太は、学校終わりリリーの元で助手として働いている。
リリーはどうやら霊の気配を察知して、位置の把握はなんとなく出来るそうだが本体自体は見えないとか。
きさらぎ駅は、例外であり霊というより範囲的な物で幻覚的作用によるものだから見えたそう。
本来どんな人にも1%以上は霊感がある。
だが、リリーは霊感がゼロらしい。
そして、異世界から転移してきたため魔法というものが使えるものの、この世界では無効。
だからこそ、除霊道具を使って除霊をしている。
なぜこの世界に来たのかは、なぜ除霊をしているのかは教えてくれなかった。
リリーの霊に関する除霊を承る事務所は3階建ての建物の2階にあり、
一階は中古ショップ、三階はどうやらリリーに事務所を貸した大家さんが住んでいるそうだ。
「リリーさん、給料っていつ出るんですか?
これ、一応バイト的な感じですよね?」
景太がソファーで横になっているリリーにそう問いかける。
「ああ、、まぁ、払うよ。
払う払う。来月からかな……?」
リリーは目を泳がせてそう言った。
ダウトである。
「払う気あります……?」
「……」
その時インターフォンが鳴った。
それを聞いて、リリーは顔色を変える、
「依頼か!?」
声のトーンが上がる。
よほど嬉しいそうだ。
依頼は2日に一回程度で来る。だが、それほど額が多いわけじゃ無い。
ましてや、霊感はゼロなものの。
霊力といった魔力が強すぎるあまり、
リリーは怪異に避けられるらしい。
そのため、最近は依頼が少ないそうだ。
(だから、俺を助手にしたな?)
特殊な霊を引き寄せる体質のある景太は好都合というわけである。
きさらぎ駅の件は、行方不明者を救ったため、三万円が被害者の家族から支払われた。
リリーは扉を勢いよく開けた。
そこには、頭に耳がつきフサフサとした尻尾がついているスタイルのいいオレンジ髪の女の人が立って、リリーを見下す。
リリーはしっかり確認したのち扉を閉めようとする。
が、その女性は扉に足を捻じ込ませ阻止。
「閉めるな。」
「はい。」
静かにそう返事をした。
「ん?見ない顔だな。依頼主か?」
女性は景太を見てそう言った。
「いえ、助手としてここで働いてます。」
それを聞いて、彼女は驚いたように見つめた。
「よくここで働こうと思ったな。
ていうか、給料払えるのか?リリー。」
「まぁ、リリーさんには助けられましたし……ちょっと待って、給料払えるのか?ってどういう事?」
景太がそう聞き返すと、彼女は頭を抱える。
「言ってないのか。ここの事務所は私もリリーに助けられて半額で貸してるんだが、3ヶ月未払いだ。
なぁ?リリー、」
彼女はリリーの頬をつまみながら言った。
「払います〜。払いますから〜……」
景太は呆れつつもそんな事だろうと思っていた。
「まぁ、しっかり払ってくれるならいいです。
急ぎの用とか無いんで……」
「寛大だな。
私は、化けぎつねだ。ここの建物の大家。
それと、ここに来たのは家賃の件もだが、依頼だ。
リリー、家賃は今月こそ払え。」
「精進します!」
リリーは元気よくそう返事をする。
それを聞いて化けぎつねは、
「ふむ。励むように……」
と言って頷くだけ。
(精進するの、当たり前な気がするが……)
景太は黙っていたがそう思っていた。
化ぎつねは、ソファに座りながら話し始める。
「H県のR山と言うところで、事故が頻発している。
証言は全部、ものすごい速さで横切る老人を見たと言っていた。
十中八九ターボばあちゃんだろう。
除霊してこい。ただ、相手は速いしリリーは霊が見えない。
弓と矢では部が悪いかもな。」
「大丈夫。助手がいるからね。」
「いや、ちゃんとした仕事初めてですけど……」
リリーは黒と白のパーカーを着てすぐに出発の準備を始める。
化けぎつねは、リリーに対してある物を渡した。
「これは?」
「これでちゃっちゃと除霊してこい。」
「もうアンタがいけよ。」
「嫌だ。」
「わかった。助手くん頼んだ。」
「犯罪者になります。」
「法律違反か、、」
「いいえ、殺人事件です。」
「何をする気だ……?」
リリーは景太の発言を聞いて頭を抱えたのだった。
――――
H県R山トンネル前
「案外掛かりましたね。」
景太がそう言ってトンネルを見つめる。
リリーは上を見上げた。
トンネル全体を指で組み作った穴から覗き込みながら、
「それは?」
景太は興味本位で聞いてみると、答えてくれる。
「狐の窓。
あっちの世界が見える。」
「あっちの世界って、」
「怪異たちのね。薄っすらとしか見えない。
まぁ、少しでも見えるだけマシだよ。
ゼロだからさ、霊感。」
(なのに、なんで事務所までもって除霊を仕事にしてるんだろう、、エルフだしな……)
景太は横に置いてあるオレンジ色のスポーツカーを見つめながらそう思った。
景太たちは、これに乗ってきたのだ。
化けぎつねが渡したのは、この車の鍵だった。
「中古ショップだからな。色々あるんだ。
アイツ元々レーサーもやってたし、」
アイツと言うのは、化けぎつねのことだろうが……
(中古ショップにも限界はあるだろ。)
景太はそう思ったが、心の中で収めることにした。
そうして、景太達は車に乗る。
「運転任した!」
リリーはそう言って景太の背中を叩く。
「え?いや、未成年!」
その時である。
リリーが勝手にエンジンをつける。
その瞬間、景太にはすぐに理解できた、出たのだ。
ターボばあちゃんが……
「ほら走れ!追い抜かれたら死ぬかもよ!」
「いや、、なんで今!」
「おそらく、自分より速そうなのが来たからだろう。
心なしかあのババァ笑ってるよ!」
「飛んだ戦闘狂じゃねぇか!」
景太は未成年、かつ無免許ながら車を走らせる。
「事故っても知らないっすよ!」
「ここは、直線が続く。大丈夫だよ!」
リリーは窓を開けて、またしても現れた弓を使い気配を感じる方へ狙いを定める。
「金行……追跡。」
矢はまっすぐに飛び、トンネルにある蛍光灯を目標に急に曲がり外してしまう。
『甘いわ……若造!』
ターボばあちゃんは、100キロババアとも言われており、時速100キロから140キロ出せると言われている。
因みに、某球団に所属している某野球選手の最高球速は164キロと言われている、
「どう除霊する!」
「矢はやっぱり厳しいな。
追い抜かれなければいい。アイツを負かす!
そして、敗者という感覚を突きつけて強制成仏だ。」
「このスポーツカーは、元々300キロまで出せるみたいですけど……」
景太はメータを見ながらそう言った。
だが、中古車、少しボロいため最高速度に到達するまでは時間がかかる。
それに、そこまで出るのかはわからない。
その時、足音がいくつも増える。
景太は思わず横を向く、そこにはバスケットボールをドリブルしながら走ってくるもう一人のおばさん。
なんなら、レッグスルーまでもできる余裕ぶり。
他にも片手で棺桶を担ぐおばさんなど多種多様がいる。
「ねぇ!不審者みたいな!そっくりさんいるよ!」
「……?ああ、怪異は人間の噂によってその性質や見た目も変わるはず、派生系的な感じかも。
取り敢えず走って!」
そのとき、リリーは景太の肩をポンっと叩く。
その瞬間、触れた時に視界に映ったターボばあちゃんが、はっきりと見えたのだ。霊感がゼロなのに。
「嘘っ……」
リリーは思わず口を開く。
初めて見た光景だからだ。
「ったく……」
そんなこと気にせず、景太はアクセルを思いっきり踏み倒す。
『逃すか!!若造!』
『ババァの底力舐めんな!』
『お年寄りを見たら生き残りだと思いな!』
ババァ三銃士は、車と並走するものの徐々に切り離されていく。
「出口!」
トンネルから猛スピードで出てきたスポーツカーが一台。
その周りに人影は無く、車の後ろには複数の手形だけが残っていた。
「勝った!」
「いや、、疲れたわ……」
疲れ果てた景太にくらべ、リリーは全く疲れを見せない。
「成仏?したの?」
景太が恐る恐る聞いた。
「まぁ、多分?でも、しばらくは悪さはしないでしょ。よほどショックだと思うよ?」
それを聞いて、景太はようやくを息をつく。
「矢のこととか、そういえば教えてもらってない。」
「あれ?伝えてなかったっけ?
色々雇う作業とかで忙しかったからか。
事務所で教えるよ。」
リリーはそう言って、助手席でくつろぐ。
そして、リリーは気づいた。
景太に触れれば霊が見えるという事に。
その様子を見て、一先ず景太は車を走らせ事務所に戻ったのだった。
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少女は続ける。
「面白かった?
……ターボばあちゃんいろいろな種類があって、どれも速くて怖かったね。」
彼女は微笑みながら言った。
「怪異は人に恐怖されればされるほど、力が付くし、噂によって見た目や仕組みも変わる。」
一本の蝋燭の火を彼女は息を吐いて消す。
「これで、2本目。
さ、まだまだ話したい物語があるんだ。
じゃあ、次の話をしよう。」
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怪異名:化けぎつね
怪異階級:A級
攻撃力:A
スピード:C
知能:A
防御力:B
噂レベル:B
怪域:なし
種別:妖怪型怪異
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怪異名:ターボばあちゃん
怪異階級:B級
攻撃力:C
スピード:B
知能:C
防御力:C
噂レベル:C
怪域:なし
種別:高速型怪異
リリーメモ:スピードで勝てば問題なし!
事件について書いてる時が楽しくて簡単です。
敵の弱点が一番難しいです。
派生系作った人普通に遊んでると思います。




