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第八十八話 王都周辺


「さてとお互いに実力も分かったことだし今日から本格的な調査といきたいが……実戦での動きも調査の前に見ておきたい。だから丁度良さそうな依頼を受けてきた」


 そう言ってリュウは冒険者ギルドで受注した依頼の内容が書かれた紙を見せた。ミレーア達もリュウの意見に異存はなかったため、何も言わずリュウが受けてきた依頼を確認した。


「……アーマーサウルスですか。私達の今のランクで受けられる依頼ではないですが、リュウさん達となら受けることが出来るということでしょうか?」


「ああ、ギルドの受付で受注するのは無理だが参加自体は俺達が認めれば可能だ」


 何かあった時の責任は受注した者が取ることにはなるが、パーティ内でランクが違う時などに活用される制度であり実力はあってもランクの低い者に経験を積ませたりする時にも使われたりする。悪用し騙す形で初心者を囮にさせることもあるが、それが冒険者ギルドにバレれば重い厳罰が科せられることになる。


「とりあえず詳しい話は飯を食べながらにしよう」


「分かりました」






「と、此処にも良いものがありますね」


 目的地に向かう最中にミレーアはそう言うと木の根元に屈むと枯葉や枯草をどかしその下にあったものを地面から引き抜いた。


「なんとまぁ……王都から出てそれ程経っていないのにそれを二個も見つけるなんて運が良いのか嗅覚が優れていると言えば良いのか」


 ミレーアが見つけたものを見て呆れるようにエリアルは呟いた。ミレーアが見つけた魔法薬の原料になる希少なキノコであり、状態の良いものを確保出来ればそれなりの大金が手に入る程のものだ。現在は供給不足で割高にもなっておりギルドに渡せば瞬く間に売れ現金となるだろう。


「ミレーアちゃん。それをメインにしても食っていけるんじゃないのか?」


「そんなことは無いですよ。今日は偶々運が良いだけど毎日見つけられるわけじゃないですから」


 そうミレーアが返答するが贅沢さえしなければ少なくとも一か月は暮らせるキノコを二つも見つけたのだから採取が目的だったならば十分な成果となる。


「と……ついでですか話に聞いていた痕跡も見つけましたよ」


 そうミレーアが視線を向けると笑顔から一転してリュウは真面目な顔となりミレーアが見つけたアーマーサウルス痕跡の検分を行った。彼は痕跡に掌を当てたりする等して入念の確認をすると一度周囲の確認をして検分の結果を伝えた。


「少し不自然な点はあるが痕跡の感じから直近ではないみたいだが、今日は出来たものには間違いは無いだろう。各自警戒は怠らないでくれ」


 それを聞いたミレーアはすぐさま周囲を探知魔法で探りを入れた。するとエリアルが何かに気づいたのかミレーアに尋ねてきた。


「……ミレーアちゃん。今何かした?」


「あ~そういえばこれに関しては説明してませんでしたね」


 自身が何をしたのかその概要を説明したミレーア。その話を聞いてリュウ達三人の表情が変わった。


「おいおい、そんな便利なものまで使えるのか。益々この件が終わったら正式にパーティに誘いたくなるぞ」


「そうねぇ。私としてもうちょっと詳しい話を聞きたいところだけど今は我慢しておくわ」


「それでミレーアの反応からして今のところは周囲にアーマーサウルスはいないということか?」


「詳しいことは分かりませんが少なくともそれと言える大きさの相手はいないですね……向こうの方に魔獣か何かの群れがいるようですが動きからして大人しいと思います」


 ミレーアが探知した中で一番大きな反応だった方向を指差した。この周辺の地理と生息している魔獣などを熟知しているリュウ達はそこに何がいるのか直ぐに察した。


「おそらくはロングホーンディアだな。しめた……おそらくその群れを見張っていれば腹をすかしたアーマーサウルスが狩りに来る筈だ」


「となるとミレーアちゃん。その場所に案内してくれる?」


「分かりました」


 ミレーアが先頭に立ち自身の探知によって見つけた群れに皆を案内した。






「成程、数はそれなりにいる中規模な群れだ」


「アーマーサウルスにとっては丁度良い量だろうな」


 ミレーアの案内で辿りつた先にはリュウの予測通りロングホーンディアがいた。ロングホーンが示す通り雄の個体は頭部に長い二本の角が生えており、繁殖期になると雄同士が角の長さを競い合ったり軽くぶつかけあったりするなどの行為を行っている。多くの肉食魔獣に狙われる種ではあるがその分繁殖能力が高く稀に増えすぎたこともあるが食害が起こる前に大抵魔獣よる淘汰が起こるため、今のところ問題が起きたことは無い。


「とりあえず交代で順番に見張ろう。最初は俺とリナの二人で行おう」


「分かりました」


 リーダーであるリュウの意見に異存はないため、リナはそれを承諾した。残りのメンバーは少し離れた場所で物陰に隠れて休憩に入るが何時襲撃があっても良いように武器は片時も手から離そうとはしなかった。ミレーアは自分が作ってきた軽食をマジックバックから取り出しお腹に入れた。エリアルとハロルドも同様に何かを食べていた。


「……?」


 ミレーアが何か気になるものを見つけたのかある一点を見た。アギト達はミレーアが何か探知したのかと考えそれぞれの得物を手にした。ミレーアは何も言わず探るように同じを場所を見続けていた。


「……大きな魔獣か何か近づいてきていますけど……それを中心として不可思議な反応が周囲に漂っています。この感じはもしかしてあの蟲や亀の同類?」


「っ!! 空けた場所に出るぞ……急げ!!」


 ミレーアの言葉に真っ先に何かが近づいてきていることを察したアギトはエリアルとハロルドにそう叫びながら言った。只ならぬ雰囲気にエリアルとハロルドは理由も聞かず大人しく従い見張りをやっているリュウとリナの元へと急いだ。


「どうした? そっち側にアーマーサウルスが出たか?」


 慌てた様子で自分達に向かってくるミレーア達に何かがあったと察したリュウがそう質問した。


「説明は後だ!! 今はロングホーンディアがいる空けた場所に急げ!!」


 それだけアギトが伝えるとリュウとリナの二人も詳細は分かっていないものの大人しく従った。六人が空けた場所に出ると突然の事態に驚いた雌個体のロングホーンディアが慌てたように逃げ出した。雄の個体は雌を守ろうと突進しようとするが森の奥から発せられる不気味な雰囲気に気づくと慌てて雌達を追うように逃げ出した。


「それで何か来ているのかそろそろ教えて欲しいんだが」


「ミレーアが此処に来る前に戦った魔獣の同種の気配を感じだそうだ」


 アギトの返答に自身も当事者であったことから何がこれから起ころとするのか直ぐに察したリナ。状況を飲み込めていないリュウ達にアギトは王都に来る途中で自分達が遭遇した突然変異体個体の話をリュウ達に行った。あくまで軽くであり詳細な話はしなかったが、リュウ達は最大の警戒態勢で向かってきている何かを迎え撃つつもりだ。


「……少し冷えてきてませんか?」


 身軽に動くため一番薄着だったリナが最初に異常に気付いた。リュウ達やミレーアもリナの感じた異常を確かめようとするがそれよりも早く明確に周囲の温度が下がっているの文字通り肌で感じた。


「これは……」


「なんだ、これは!?」


「こんな異常なことを起こせる魔獣は記憶に無いぞ!!」


 異常事態に動揺するリュウ達だが何らかの足音が聞こえ始めると冷静になり足音が聞こえる方向を向き警戒する。乾燥した木の枝や枯葉を踏み砕く音も聞こえ始めたから近くまで来ていることが音で分かった。そして木々の間を縫って現れたそれを見てリュウ達は息を飲んだ。先行する形で冷気が来ていたことから冷気を操る魔獣だとは予想していた。


「おいおい、流石にこれは……」


 現れた魔獣は体表に氷を鎧にように纏っていた。それだけでも珍しいと言えるが問題なのはそれを行っているのが本来なら氷を操る能力を持っている筈に無いアーマーサウルスであるということだった。

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