表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の花嫁  作者: yaasan


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/106

冷静な解説

「……スタシアナ姉様、少しは私やダースの身を心配して下さい。私たちはいきなりあの耳長女に吹き飛ばされたんですよ。凄く可哀そうなんですよ!」


 薄い灰色の頭を痛そうに擦りながら、エリンがダースと共にスタシアナの傍に来て不平を言っている。エリンの隣にいるダースの顔はと言えば、アストリアが連れ去られたためにこの世の終わりをそれは見事に体現していた。見ていて何だか可哀そうになるぐらいだ。ただ幸いなことに、二人とも目立った怪我などはないようだった。

 

 少しだけ安堵の溜息を吐いた後、マルネロはヴァンエディオに視線を向けた。


「ヴァンエディオ、クアトロたちの行き先は分からないの?」

「流石に無理ですね。今はまだ見当もつきません。時間をかけてクアトロ様たちの魔力を辿れば……といったところでしょうか」


 マルネロにヴァンエディオが淡々と言葉を返した。クアトロに命じられたとはいえ、あの面白骸骨、勝手なことをしてくれたとマルネロは思う。


「おい、クアトロたちの心配をしている場合じゃなさそうだ。ほれ、でかいのが出てくるぞ」


 エネギオスがそう皆に注意を促した。見ると自分たちの正面に巨大な魔法陣が出現していることにマルネロは気がついた。やがて、そこから人の三倍以上はありそうな巨大な人型の物体が姿を現した。


「わー。凄く大きいのですー」


 スタシアナが小さな口をあんぐりと開けて感心したようにそれを見上げている。スタシアナの横ではエリンも同じように口を開けてそれを見上げていた。確かにスタシアナが言うようにそれは縦にも横にも大きかった。


「へ? 何これ……ゴーレム?」


 マルネロは思わずそんな言葉を漏らした。だが、こんなゴーレムをマルネロは見たことも聞いたこともなかった。表面は禍々しい不気味な黒褐色で、その素材は光沢があって何かの見知らぬ金属のようだった。


「どうやら天井が開くようですね」


 ヴァンエディオが呟いた。


「……へ?」


 マルネロは思わず間が抜けた返事をする。天井を見上げると、鈍い音を発しながら天井が左右に割れていく。同時にぱらぱらと小石のような物も雨の如く降ってくる。


「へ? だってここは地下でしょう……違うの?」


 マルネロの素朴な疑問を無視するかのように天井は完全に左右に開ききってしまい、その後は当然のように頭上に見事な青空が広がる。どのような仕組みになっているのか、もはや意味が分からないとマルネロは思う。そして案の定と言うべきなのか、その青空には天使たちの姿があった。その数、二百ぐらいだろうか。マルネロの顔に暗い翳りが浮かぶ。


「天使が現れたということは、魔人たちも姿を見せるでしょうね」


 ヴァンエディオが淡々と言う。


「はあ? 何、さっきから冷静に解説してるのよ。ヴァンエディオは!」


 マルネロは思わずヴァンエディオに向けて甲高い声を発した。やがてヴァンエディオの言葉通りゴーレムの背後にいくつもの空間の揺らぎが起こり、そこから魔人たちが次々と姿を現してくる。その数は百程度だろうか。


「はあ? 次から次へと毎回、虫みたいに湧いてきて。もう、こいつら何なのよ!」

「ゴーレムはこの部屋の守護者。天使と魔人は神とやらが私たちに襲われたので、駆けつけてきたといったところでしょうかね」

「はあ? 守護も何もここにいた主はアストリアを連れてどこかに行っちゃっているじゃない! 来るのが遅いのよ。全然、守護してないじゃない。天使たちもそうだけど、今更わらわらと出てきて何をするつもりなのよ!」

「……私たちの排除でしょうね」


 マルネロの悪態にヴァンエディオが冷静に言葉を返す。その冷静さがマルネロを更に苛立たせる。


「分かってるわよ!」


 マルネロは吐き捨てる。何か血が上り過ぎて頭が痛いと思う。


「おい、来るぞ!」


 エネギオスが皆に鋭く注意を促した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ