ぼくたちの味方
「まあ、それはそうとして、やはり皆さんは皆さんですね」
「何だ? 今度は何を言い出したんだ?」
トルネオの唐突なよく分からない言葉にクアトロは思わずそう言った。
「どのような状況でも、皆さんは変わらないなということです。頼もしい限りですね」
よく分からないが、どうやらトルネオは自分たちのことを褒めているらしい。
だが同時に面白おっさん骸骨に褒められても、全くもって嬉しくないとも思う。
「さあ、行きましょうか。この先にいるかつての支配者、その一人のところへ……」
いつになく重い口調でトルネオが言うのだった。
薄暗く狭い回廊を抜けると、クアトロたちは再び開けた場所に出た。ここは先の広間と同程度の大きさと言ってよかった。おそらくは神殿の地下に位置しているのだろうが、どういった構造の神殿なのだろうかとクアトロは思う。
「広いし、明るいですねー」
スタシアナが感嘆の声を上げる。
「そうね。それにしても広いわね。これなら遠慮なく特大魔法を発動できるわね」
マルネロの言葉にどんな基準なのだとクアトロは思う。
「で、トルネオよ、どこにその神とやらがいるんだ?」
エネギオスがそう言いながら、早くも愛用の大剣を引き抜いている。
どうやら最初から喧嘩腰らしい。
魔族はどうして、こうも血の気が多い者ばかりなのだろうか。
何だか溜息を吐きたくなってくる。
ふとアストリアに視線を送ると、やはりその表情は緊張で漲っているようだった。
「アストリア、大丈夫だぞ。皆もいるのだからな」
クアトロが声をかけると、アストリアは口を堅く結んで静かに頷いた。
「あそこ……ですかね」
先ほどのエネギオスの問いに対して、トルネオは中央に位置している一点を指差した。
そこには大きさとしては、人ひとりが寝られるぐらいの暗い色をした台座がある。いや、あれはまさに寝台であることにクアトロは気がついた。
上部は半円形の透明な物で囲われている。床上から管のようなものがいくつか出ていて。それらは全て寝台と繋がっているようだった。
「では皆さんこちらへ」
トルネオが皆をそう促した。
「トルネオさん、危険はないのですか?」
ヴァンエディオの言葉にトルネオは頷いた。
「大丈夫ですね。まだ彼女は眠っているだけですので……」
トルネオに促されるままにクアトロたちは寝台に近づいた。
寝台を覗き込むと、そこには一人の若い女性が眠るように横たわっていた。浅黒い肌で銀色の髪が腰まで伸びている。
その顔には人の温かみがあったが、同時に人ではない何かの冷たさも宿っているようにも見える。そして、特徴的なのはその長い耳だった。銀色の髪からは先の尖った長い耳が覗いている。
「これは……眠っているのか?」
クアトロが問いかけるとトルネオが軽く頷いた。
「そうですね。では、起こして差し上げましょうか。皆さんは少し離れていて下さい。彼女の寝起きがマルネロさんみたいに悪いと面倒ですからね」
ひと言多いトルネオの言葉に従って、皆が二歩、三歩と下がった。トルネオは寝台の上にある透明な蓋のようなものを何やら指で叩き始めた。
最初は何かの合図を送っているのかと思ったが、どうやら透明の蓋に文字のような物が浮かんでいて、それを押したりしているようだった。それがどういう仕掛けになっているのか、クアトロにはさっぱり分からない。
「クアトロさん、トルネオさんって一体、何者なんでしょうか?」
アストリアがそんな様子のトルネオを見ながら、少しだけ不安そうな様子で訊いてきた。
確かにトルネオは神とやらの情報に精通しすぎている。
いや、知っていたと言った方が、表現としては正しいのだろう。とすれば、トルネオも神側の存在といって間違いないのかもしれない。
だが……。
「心配するな、アストリア。何であれ、トルネオはトルネオだ。どこまでいっても、面白おっさん骸骨だ」
「そうなんですよー。トルネオはかっちょいい首なし骸骨で、いつでもぼくたちの味方なんですよー」
スタシアナもクアトロに続けて天真爛漫な笑顔で言う。
かっちょいい首なし骸骨の意味は分からなかったが、今の言葉を聞く限りではスタシアナもトルネオのことを十分に信頼しているようだった。




