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魔王の花嫁  作者: yaasan


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支配者

 「こちらですかね」


 先頭を歩いていたトルネオが、神殿のほぼ中央に位置していた大広間といってよいような部屋で不意に足を止めた。


 トルネオのすぐ後ろを歩いていたクアトロも足を止めて、横にいるアストリアに視線を向けた。アストリアは心持ち緊張しているような顔をしていたのだったが、クアトロの視線に気がつくと健気にも少しだけ微笑んで見せる。そんなアストリアを見て、皆に心配をかけないようにしているのだろうとクアトロは思う。


 背後には四将といわれているエネギオス、ヴァンエディオ、マルネロ、スタシアナが続いており、更にはエリンとダースの姿もある。


「ここがどうした?」


 クアトロが素朴な疑問を発した。どう見ても足を止めた場所は大きめの広間にしか見えない。


「この部屋には秘密があるんですよ」


 トルネオが胸を反らしている。トルネオの偉そうで自慢のありげな様子がクアトロを先ほどから微妙に苛つかせていた。


「……ほう、それはそれは凄いですね。ところでトルネオさん、何故あなたがこのようなことを知っているのでしょうか?」


 ヴァンエディオが称賛の声を上げながら、もっともな疑問を口にする。


「それはあれですよ、ヴァンエディオさん。何といっても、わたしは不死者の王ですからね。この世の大概のことは知っています」

「ほえー。トルネオは凄いのです」


 スタシアナが素直に感心した声を上げている。


「それでは答えになっていませんね、トルネオさん……」


 いつでも天真爛漫なスタシアナの反応とは違って、ヴァンエディオは目を細めて危険な空気を発し始めた。



「待て、ヴァンエディオ。こいつは確かに何かと怪しい面白おっさん骸骨だが、トルネオが俺たちに危害を加えるとは思えないぞ。現にスタシアナやエリンを助けたのは、この何かと怪しい面白おっさん骸骨だからな」


 クアトロが止めに入ると一応は納得したのか、ヴァンエディオが考える素振りを見せた。そんなヴァンエディオを他所にトルネオが素っ頓狂に口を開いた。


「えーっ? クアトロ様、何だかわたしの形容詞が異様に長くなってないですか。そんな長い形容詞は、もの凄い変態ろりこん大魔王のクアトロ様だけで十分なのですが……」

「おい、トルネオ……」


 クアトロは無言で長剣に手を伸ばす。


「え? あは、あは。やだなあ、クアトロ様。冗談ですよ。冗談」


 トルネオがそんなクアトロの様子を見て慌てて取り繕うように言う。そして、更に言葉を続けた。


「で、ここに魔力を注入するとですね……」


 トルネオは床に片膝をついて床に向かって片手をかざす。


「おっ? 揺れた?」


 僅かな揺れを感じてクアトロは思わずそう声に出した。


「今、この大広間はゆっくりと下降していますので」


 トルネオがそう説明する。


「アストリア様は、ダースさんと少しだけ下がっていた方がいいかもしれませんね。エリンさんもアストリア様の近くにいてあげて下さい。何があるのか分かりませんからね」


 その言葉にアストリアたちが黙って頷く。


「トルネオ、危険ならばアストリアを連れてくる必要はなかっただろう」


 クアトロが文句をトルネオに言うと、アストリアがすかさず割って入ってきた。


「クアトロさん、私なら大丈夫です。ダース卿や皆さんがいてくれているのですから」

「そうですよ、クアトロ様。今更、アストリア様を仲間外れは駄目ですよ。本当にクアトロ様は女心が分からないんですから」


 そんなものかと思ったクアトロだったが、トルネオに当たり前のように言われると腹が立ってくる。


「それにしてもトルネオさん、色々とご存知なのであれば、神や魔神とはそもそもがどういった存在なのかも知っているのでは?」


 ヴァンエディオの問いかけにトルネオは少しだけ頷いてみせた


「神とは元々この大地の支配者ですかね。そう。今の人族や魔族と同じように……といったところでしょうか」

「ほう……」


 ヴァンエディオは分かったように頷いていたが、クアトロには今ひとつ分からなかった。

 神なのだから元々も何も、この大地で誰よりも偉い支配者だろうとクアトロは単純にそう思う。


「おや、着いたようですね。色々と疑問はあるでしょうが、詳しいことはすぐに分かりますよ。それでは皆さん、行きましょうか」


 トルネオはそう言って皆を促すのだった。

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