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魔王の花嫁  作者: yaasan


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抗う者たち

「わ、分かった。悪かった。お前らの王を侮辱するつもりはなかったんだ。復活する神はこの神殿の地下にいるとのことだ。それ以上のことは流石に何も知らない」

「……まあ、今までの流れからするとそうでしょうね」


 ヴァンエディオが軽く頷く。


 そういう流れだったか?  

 そう思ったクアトロだったが、また皆に何か言われそうだったのでそれを口にすることはなかった。


「で、どうするよ、クアトロ? 細かい話は分からんが、この神殿には器となるろりろり姫の中に入りたがっている神とやらがいるらしい」


 エネギオスの言葉を聞きながらクアトロはアストリアに視線を向けた。アストリアは無言のままで固く口を閉じていた。心なしか顔が青ざめているように見える。無理もないとクアトロは思う。理由さえもがよく分からない過酷とも言えるような状況が目の前に提示されているのだ。


「おい、魔人、何でその器がアストリアなんだ?」

「知らん。たまたまだ。復活する神と器としての条件が合っただけだろう。人族や魔族の全てが器の候補なのだからな」


 捕らえられた魔人は最早、投げやりとなっている感があった。

 クアトロはそれを聞いて何なのだ、その偶然はと思う。

 それにアストリアの中へ入るって、何か卑猥な響きがあるぞとも思う。


「どうするよ、クアトロ?」


 エネギオスが重ねて返事を促す。


「決まってる。アストリアは俺が守る。ならば、やることは一つだ。その復活する神とやらをどうにかするだけだ」


 クアトロの言葉にエネギオスが不敵な笑みを浮かべた。


「面白い。魔族が魔人や天使だけじゃなく、魔神や神にも喧嘩を売るか」

「……クアトロさん、エネギオスさん」


 アストリアが深緑色の瞳をクアトロとエネギオスに向けた。


「そんな顔をするな、アストリア。大丈夫だ。何も心配することはない。今までも大丈夫だっただろう?」

「ですが……」

「そうよ、アストリア。前にも言ったけど、あなたは魔族の王、クアトロの花嫁なんだからね。それにアストリアもダースも私たちの仲間なの。だから仲間を守るのは当たり前なのよ」

「はい……」

「仲間か……そうだな。この魔人が言う話はよく分からないが、仲間だから守る。それでいいと思うぞ。それに魔族も人族も器だと言うのなら、次は俺たちが選ばれるかもしれない。ならば、その時はアストリアが俺たちを守ってくれ」

「クアトロさん……」


 クアトロの言葉にアストリアは小さく頷いた。


「……お前たち本当に神や魔神に抗うつもりか?」


 魔人がそう口を開いた。クアトロが視線を向けると魔人はさらに言葉を続けた。


「それに相手は神や魔神だけではない。お前たちの居所はこれで魔人や天使たちに分かったはず。すぐにでも魔人や天使がここへ押し寄せてくるぞ」

「知るか、馬鹿。ならば、その全員を排除するだけだ」


 そのクアトロの反論にエネギオスが笑い声を上げた。


「凄いな。馬鹿の一言で切り捨てやがったな……」

「本当ね。どこかの熱血漫画の主人公よね」


 マルネロも呆れたように溜息混じりで言う。


「うるさい。漫画とかよく分からないことを言うな。そもそも、俺は器などとやらになったつもりはない。勝手に奴らが俺たちを器だと言うのなら、俺はそれを勝手に否定するだけだ」


 クアトロの言葉にヴァンエディオが珍しく笑い声を上げた。


「クアトロ様はいつも単純で分かりやすいですね。いいでしょう。我らの王がそれを否定するのであれば、配下の我らも全力を持ってそれを否定するとしましょう」


 クアトロはアストリアに支えられながら横に立っているマルネロに顔を向けた。そして小声で口を開く。


「おい、単純って何だ? 俺は褒められているのか?」

「……違うわよ。馬鹿だって言われてるんでしょう」


 マルネロが呆れた声を出す。


 ……だよな。ヴァンエディオの奴、覚えとけよ。

 クアトロはそう心の中で呟くのだった。


「では、その神とやらはこの神殿のどこにいるのでしょうか?」


 ヴァンエディオの言葉に魔人は首を左右に振った。


「……それは知らん。俺のような末端にはそこまで知らされていない」

「ほう……あなたは魔人の中でもそれなりの地位に見えますが……」


 魔人の言葉にヴァンエディオの両目が再び細まった。

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