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魔王の花嫁  作者: yaasan


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天使長ミネル

 実際、スタシアナの能力は高いとエリンは思っている。普段はぽーっとした頭が少しだけ足りないかのような振る舞いをしているから、時にその実力を忘れそうになるのだったが。


 言動や行動はともかくとしても、その実力は数名しかいない天使長に匹敵するかもしれないとエリンは思っていた。


 だが、今回の相手は天使長の一人であるミネルだ。そしてこの数の天使たち。

 エリンはごくりと唾を飲み込んだ。


「劣化し、壊れたものは排除します。消滅!」

「エリン!」


 ミネルの言葉に続いてスタシアナの鋭い声が飛んだ。


「は、はいっ!」


 エリンが慌てて防御魔法を自分たちの前方に展開した。


「エリンの防御壁は完全無欠です。そんなへなちょこ魔法じゃ破れないんですよー」


 何故かスタシアナは得意げだ。エリン自身もそんな風に得意げなスタシアナを見ると、今の困難な状況も忘れて少しだけ嬉しくなる。


「ほらほら、行きますよー。神炎。神炎!」


 スタシアナはそう言いながら、炎の魔法を連続で放ち始めた。

 

 ……え? 

 天使って光系の魔法しか使えなかったはずじゃ……。


 エリンは心の中でそう呟いたが、すぐにその疑問を封じた。あのスタシアナならばあり得るのだろうと思ったのだった。そして、これがこぴーとその劣化の結果なのかもしれない。


「クアトロとマルネロ直伝の炎魔法ですよー。早く逃げないとぼくが全部燃やすんですよー」


 スタシアナは同族の天使たちに魔法を乱射しながら何故か楽しげだ。天使たちからの攻撃は全てエリンによって防がれていく。 


 天使たちは確実にその数を減らしつつあった。このまま力押しでこの場を切り抜けられそうだ。エリンはそう考えていた。そういえば不死者の王、トルネオはと思ってエリンはトルネオに顔を向けた。


 トルネオもそれに気がついたようでエリンに視線を向けると口を開いた。


「エリンさん、駄目ですね。ここが天上だからなのか地獄の門が開かないです。スケルトンたちを呼び出してもいいですが、天使が相手ではすぐに消されてしまうでしょうしね」

「……それで?」

「え? いやだなあ、もう。エリンさんもクアトロ様に似てきましたよ。察しが悪いんだから……」


 そう言ってトルネオが大きく仰け反ってみせる。


「いえ、だからどういうことでして?」

「ワタシは全くもって今、役に立たないということです」

「……」


 この骸骨、このまま消してやろうかと思ったエリンだったが、こんな阿呆を構っている場合でもなく、エリンは正面に位置する天使長のミネルに茶色の瞳を向けた。


「スタシアナ、エリン……」


 ミネルはそんな呪詛めいた呟きを漏らしていた。片頬が派手に引き攣っている。

 あまりにミネルが恐い顔をしているので、私は関係なくてよと言いたくなるエリンだった。


「ほら、ほら、ほらー。全部、ぼくが燃やすんですよー」


 スタシアナはそんなエリンの気持ちなどを知るはずもなくて、相変わらずに炎の魔法を放ちながら上機嫌だった。


「スタシアナ、エリン! 摂理を曲げることは許しません」


 ミネルは大音量でそう言い放つと両手を伸ばして上空で掲げた。両手の先に金色の球体が生まれ、瞬く間にそれが大きくなっていく。


「ほえー! エリン、最大級の防御壁をするんですよー。ミネルが怒ったんですよー」


 スタシアナが両手をぱたぱたと上下に振る。

 

 ……これだけ同族に被害を与えれば、ミネルだって怒るだろう。

 そんな言葉を頭の隅で泳がせながら、天使長であるミネルの攻撃を防ぎ切れるだろうかとエリンは思う。ごくりと再び唾をエリンは飲み込むのであった。





 特大魔法を放ったマルネロは魔力が底をつきかけて失神寸前のようにクアトロには見えた。血の気が引いた青い顔でふらふらとしながらも、それでもクアトロに悲しげな顔を向ける。


「ク、クアトロ、ヴァンエディオが……」


 その言葉にクアトロは無言で頷く。まさかあのヴァンエディオがとクアトロ自身も未だに信じられない。しかし、それを裏づけるように胴体と切り離されたヴァンエディオの頭が大地に転がっている。当然、ぴくりとも動きはしない。


「……あのままじゃ可哀想だ。早く弔ってやらないとな」

「……うん。そうだね……」


 マルネロもそう言って頷く。やがてエネギオスが苦い顔をしながら戻ってきた。


「マルネロ、やり過ぎだ。殆どが死んじまった」

「うっさい! ヴァンエディオの仇討ちよ」


 マルネロが青い顔で荒い息を吐きながら言葉を返す。


「で、その魔人は?」


 マルネロがそう言ってエネギオスの足下にいる魔人を睨みつけた。

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