表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の花嫁  作者: yaasan


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/106

魔煙

「やっぱり、いるんじゃないですかー」


 スタシアナはそう言って、リベラートを睨みつけた。


「あらあら、スタシアナさん。そんなに怖い顔をしていては、可愛らしい顔が台無しですよ」


 リベラートはそう言って薄く笑う。その様子にスタシアナは、むーといった顔をしている。


「リベラート、久しぶりね。何か随分な物言いのような気がするわね」


 エリンがそう言うとリベラートはたった今、初めてエリンの存在に気がついたような顔をしてみせた。


「あら、エリンさんもいたのね。相変わらず、スタシアナさんと仲がいいみたいで。そうね、一緒になってしまうぐらいだものね。堕天使なんかに……」


 昔からそうなのだが、自分たちへの物言いには棘があるとエリンは思う。前からこのリベラートと自分は気が合わないとエリンは感じていた。


「あら、随分な言い方じゃない? それで何か迷惑をかけたのかしら?」


「かけているじゃない! 天使なのに魔族なんかと一緒にいて。しかも、同族の天使を何人も消してしまうだなんて……なんて恐ろしい……。」


 リベラートはそう言って、悲しげに柳眉を寄せてみせた。


 とても……苛っとする。 

 今に始まった話ではい。リベラートは感情表現が芝居がかっていて、いつもエリンの癇に触るのだった。


「あれは天使たちが、クアトロたちを虐めたからですよー」


 スタシアナが少しも悪びれることなく、呑気にそう言葉を返した。だが、そんな理由で同族である天使たちをスタシアナは殺してしまったのだ。


 捕らえられるのは当然だったし、こうして糾弾されるのも分からなくもなかった。


 だけどもとエリンは思う。自分が手を直接は結果として下さなかっただけで、あの時に自分だって魔族の皆が傷つけられるのを黙って見過ごすことはできなかった。


 そもそも、魔族の皆が何をしたというのだろうか。

 そんな思いがエリンの中にも強くある。


 それに何よりも、このリベラートの物言いが気に入らない。

 そして、スタシアナを牢獄に閉じ込めたことも……。


「あら、エリンさんまでそんなに怖い顔をしてしまって、どうしたの? 当然、エリンさにも、スタシアナさんと一緒に罪を償ってもらうわよ。そうね……多分、二人そろっての抹消になるのじゃないかしら?」


 その言葉にエリンが一歩、前へと進み出た。


「リベリベ、あまりエリンを怒らせない方がいいんですよー。エリンは怒ると怖いんですからねー」


「は? 噂のへろへろ光弾でも見せてくれるのかしら」


 注意を促すカリンに対して、リベラートは甲高い笑い声を上げてみせた。


 あ、何か本当に頭にきた。

 エリンはそう心の中で呟いた。


「絶対障壁。絶対障壁。絶対障壁。絶対障壁。絶対障壁!」


「何の真似かしら? そんな障壁で四方を囲って……」


 リベラートの顔には余裕の笑みが浮かんでいる。リベラートが言うように、彼女を含めて三十人程の天使たちは、エリンが作り出した魔法の壁によって四方、天井と余すところなく塞がれ閉じ込められた格好となっていた。


「何かしら? 閉じ込めたつもりなのかしら? こんな障壁なんて……」


「魔煙……」


 エリンが呟いた。その言葉を聞いてリベラートの血相が瞬時に変わる。

 リベラートは即座に両手を翳した。そして、見えない壁に向かって光弾を数回放つが、その全て弾かれてしまう。


「そんなへろへろ魔法じゃ無理なんですよー。エリンの障壁は破れないんですよー」


 エリンの横でスタシアナが淡々とした口調で言う。

 それを聞いてリベラートは青ざめた顔を左右に向ける。


 その瞬間だった。リベラートたちが閉じ込められている中央付近で、禍々しい色をした紫色の雲が湧きあがった。


「魔神が住む世界の奥深くにある大森林。そのさらに奥。その毒池から湧き上がる毒素よ。魔族への仕打ち、そしてスタシアナ姉様を傷つけようとしたこと。後悔なさい……」


 エリンが冷然と言い放った。その直後、天使たちが次々と呻き声を立てる間もなく倒れていく。


 リベラートは絶望的な顔で次々と倒れていく周囲の天使たちを見ている。そして何かを叫ぼうとしたのだろうか。


 エリンに顔を向けて口を大きく開けた瞬間、そのまま倒れ込んでしまう。


 エリンはリベラートが動かなくなったことを確認して、大きく息を吐き出した。


 やってしまったと思う。頭にきたとはいえ、これだけの数の同族を手にかけたのだ。もはや、ただでは済まないだろう。もう二度と天上には戻れないし、他の天使たちからこれから先、永遠に追われ続けるかもしれなかった。


「こらあ、エリン!」


 そんな暗澹たる気分だったエリンに向かってスタシアナの怒声が飛ぶ。


「そんな馬鹿みたいな顔をしてないで、早く行くんですよー。」


「スタシアナさん、馬鹿みたいな顔は、さすがに失礼ですよ」


 エリンを不憫に思ったのかトルネオが口を挟んでくる。


「大丈夫です。エリンは少しも悪くないんですよー。さあ、さっさとミネルのところに行きますよ。あんなリベリべみたいな小物をやっつけても、話になりませんからねー」


「あ、はい……」


 エリンがスタシアナの言葉に慌てて頷いた時だった。エリンたちの目の前にある空間が大きく歪み始める。


「これはまた大規模な空間転移ですね……」


 トルネオがどこか呑気な口調で言う。


「こっちから行く手間が省けたんですよー」


 スタシアナの嬉しそうな声が聞こえる。エリンは生唾をひとつ飲み込んだ。

 これは……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ