表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の花嫁  作者: yaasan


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/106

魔族を虐めちゃ駄目

「お、おい、スタシアナ! 危ないぞ!」


 クアトロはそう叫んだが、それがスタシアナたちに聞こえたのかどうか……。


「だ、大丈夫でしょうか、スタシアナさん……」


 アストリアがスタシアナとエリン背中に視線を送りながら、心配そうな顔で言う。


「ま、まあ、スタシアナも天使ではあるからな。大丈夫だとは思うが……」


 根拠は同族であるということだけだったが、クアトロは取り敢えずそう言った。他にアストリアを安心させるような言葉は見つからない。


「クアトロ様、天使の一群がこちらに向かってきます。急ぎ撤退を!」


 ヴァンエディオが急かすように声をかけてきた。


「分かった。アストリア、ダース、行くぞ!」


「え、で、でもヴァンエディオさんは?」


 アストリアは驚いた顔をしている。


「私は少しの間、こちらで彼らを惹きつけます。その間にアストリア様はクアトロ様と一緒にお逃げ下さい」


「で、ても……」


「早く! 皆、アストリア様をお守りするために集まったのです。ならば、最後まで守られることに徹して下さい!」


 ヴァンエディオにしては珍しく、少しだけ声を荒げていた。そんなヴァンエディオの思いを汲み取ったのか、アストリアが小さく頷く。


「わかりました。ヴァンエディオさん、お気をつけて」


 アストリアがそう言って一礼をすると、ヴァンエディオはその端正な顔に笑みを浮かべた。巷で魔人の笑みと評されるあの笑みだ。


「アストリア、行くぞ!」


 クアトロはアストリアをそう促した。クアトロの傍には、これまでに必ず四将の誰かがいた。だが気がつけば、皆が散り散りになってしまっている。


 あの四将たちのことだ。不測の事態などないとは思うが、一抹の不安を覚えるのも事実だった。


 その不安を飲み込みながらクアトロはアストリア、ダースとともに撤退を開始したのだった。





 総崩れとなった魔族たちを見て、四か国連合の人族たちは息を吹き返したようだった。混乱の中で撤退を始めた魔族たちの背後から俄然と襲いかかって来る。


 そんな敗走する魔族たちを援護しようと、トルネオは前に進み出た。


 思えば妙な運命だなとトルネオは思う。気がつけば、自分には何の得もないのに魔族の手助けをしているのだ。しかも、それが嫌な気持ちではなくて、逆に愉快な気持ちになってくるのが自分でも少し不思議だった。


 まあいいでしょう。

 手助けの報酬として、天使と魔人の骨でもいただきましょうか。


 トルネオはそう独りごちると、展開させた複数の魔法陣から骸骨兵を呼び出し始める。


 トルネオによって魔法陣から幾多もの骸骨兵が出現すると、四か国連合の将兵たちが急に現れた何百体もの骸骨兵を見てたちまち恐慌に陥る。


 トルネオが思うに、どうも人族は根源的に骸骨というものを忌み嫌うようだった。


「何か傷つく皆さんの反応ですね……」


 自身も骸骨姿のトルネオはそう呟く。

 恐慌をきたした人族を援護するためなのか、十体ほどの天使がその原因を作ったトルネオの周囲を取り囲んだ。


「貴様、不死者か? なぜここで魔族に与している?」


 天使の一人がそう問いかけてきた。どこかの魔人とは違って、問答無用ということでもないらしい。


「ふむ……天使が相手ですと、さすがに少々分が悪いですかね」


 さてどうしたものかとトルネオが考えていた時だった。上空から黒い物体が急速に落下してきて、トルネオと天使たちの間に割って入ってきた。


「トルネオ、何を遊んでいるんですか? 遊んでいるぐらいなら、ぼくと天上に行きますよ!」


 黒い翼を広げて割って入ってきたスタシアナが言う。


「待ってよー。スタシアナ姉様ー」


 次いでエリンも姿を見せた。


「これは、これはスタシアナさんとエリンさんじゃないですか。お二人とも、いつも可愛らしくてお美しいですね」


 そんなトルネオの言葉に、スタシアナはえへへと笑っている。しかし、すぐに表情を変えると正面の天使たちに顔を向けた。


「スタシアナ様? スタシアナ様では?」


 天使の一人が自分たちと対峙している少女を見て、信じられないといったような声を上げた。


「クアトロと魔族を虐めちゃ駄目なんですよー」


 そんな天使たちの様子など気にする様子もなく、スタシアナが天使たちに向けて両手を翳した。


「え? え?」


 そのスタシアナの様子に不穏なものを感じたのだろう。天使たちに動揺のようなものが走った。


「だ、駄目、スタシアナ姉様! 怒られますよ!」


 エリンの忠告も虚しく、スタシアナが翳した両手から金色の光が発せられてしまう。


「消滅!」


 叫ぶ間もなく天使たちが金色の光に包まれると、跡形もなく消え去ってしまう。


「あ、ああ……やっちゃった……」


 エリンががっくりと肩を落としている。


 これは、これは随分と過激ですね……。

 さすがにトルネオも驚いて心の中で呟く。


 スタシアナは背後にいるトルネオを振り返ると、天真爛漫といった言葉がよく似合う笑顔をみせた。


「さあ、トルネオ、邪魔はいなくなったので、一緒に天上に行きますよ!」


 そう言って笑顔をみせるスタシアナの横にいたエリンは、スタシアナがやってしまったことの重大さですでに半泣きになっている。


 やれやれですね。不死者と天使は相性が悪いのですが、スタシアナさんが言うのであれば仕方がないでしょうか。ま、天上に行くのも面白そうですしね……。


 そんな二人を見ながら、トルネオは心の中でそう呟いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ