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終章


 まるで宙を舞っているようだ

 私は空の中にいる。

 吹き渡る風は

 今にも私の魂をこの体から引き抜いて連れ去っていきそうだ

 それでも構わない

 私はすべてを気まぐれな風に委ねよう

 構わない……けれど

 いまのこの想いまですべて消えてしまうのだろうか

 せめてこの想いだけはどこかに記しておきたい

 そう思い、服の糸を引き抜く

 自由にならない右手の代わりに口を遣い

 左手で小さな結び目を作っていく

 虚しいことだと分かっている

 でも記さずにはいられない

 この想いが形となれば

 いつか誰かがこの想いに触れてくれる

 そんな夢想を描きながら、最期の力を振り絞り

 私は縄文字に言葉を綴る






―― この体は、風となり空をさまよう

  この思いは、いつか大気に溶けてゆく


  しかし、己の生きた道に悔いはない

  それどころか、多くの人びとと出会えた人生は

  なんと豊かなものだったのだろう


  ただひとつ、大事な人を裏切ったことが

  決して癒えない哀しみとなって残る


  ふたたび人として蘇ることができたならば

  大事な人の手を

  私は決して離さない ――


 



                    (完)
















最後までお読みいただき、ありがとうございました。


この物語ははじめ、遊び半分で作った絵本でした。

インカ帝国版、義経の物語として……。

実の兄に滅ぼされるカパックという人物のことを

歴史書の中に見つけたとき、日本の源義経に似ていて

義経記のような物語ができるかも?

そんな単純な発想から生まれました。


それからだいぶ時間が経ってから、

この話を膨らませて小説の形にしたいと思いつき、

資料を集め始めました。


SF物語やミステリーの題材となることの多いインカ帝国。

でも資料を漁るうちにその国の中には

人間臭いエピソードがたくさんあることに気付き

それならばこの国を背景として

現代人と変わらないドラマを描いてみようと思いました。


時代背景や当時の生活の様子、習慣などは調べましたが、

実際にインカの人々がどんな価値観や恋愛感を持っていたかは

わかりません。

国も違えば、時代も違うとなると

価値観や常識も大きく違い

きっとこの物語で描いたことは、

現代日本人にしか通用しない内容なのでしょう。


それでも、架空の物語として

その時代にタイムスリップした気分で

楽しく読んでいただけたなら幸いです。


この作品と関連付けた物語も完結済みですので、

折をみて投稿させていただこうと思っております。


大変長いことお付き合いいただきまして、

誠にありがとうございました。




―― 参考資料 ――


・インカ国家の形成と崩壊 

 マリア・ロストウェロフスキ著/増田義郎訳


・インカ帝国探検記―ある文化の滅亡の歴史

 増田義郎著


・インカ帝国誌

 シエサ・デ・レオン著/増田義郎訳


・インカ皇統記(三)

 インカ・ガルシラーソ・デ・ラ・ベーガ著/牛島信明訳


・マヤ・アステカ・インカ文明 ニュートンムック 

 レンゾ・ロ・シ著/畑舜一郎訳


・太陽と月の魔女

 ― ジェンダーによるアンデス世界の統合と支配 -

 アイリーン・シルバーブラッド著/染田秀藤訳


・インカ帝国―その征服と破滅

 山瀬暢士著


・図説インカ帝国

 フランクリン・ピース著/増田義郎、義井豊訳


・他者の帝国―インカはいかにして帝国となったか

 関雄二、染田秀藤著


・アステカとインカ黄金帝国の滅亡

 増田義郎著


・インカ帝国歴史図鑑―先コロンブス期ペルーの発展

 ラウラ・ラウレンチック・ミネリ著/増田義郎、竹内和世訳


・ジャガイモとインカ帝国―文明を生んだ植物

 山本紀夫著



その他

インカ・マヤ・アステカ展図版

ケチュア語関連サイト

スペイン語関連サイト


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― 新着の感想 ―
[一言] とても面白かったです。 なろうでインカものって初めて読んだので新鮮でした。 退行療法なんかも受けると前世があるのも自然に感じるので、フィクションですけど古代の二人が日本で会えてよかったな、…
2022/05/14 02:44 退会済み
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