表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
24/26

第24話 選んだ方を正解に

 午後十時。


 いつもの時間。


【エリシア・アルヴェイン 配信開始】


:こんばんはー

:おつ王!

:王都配信よかった

:橋見てきた!


「皆様、こんばんは」


 エリシアは一礼する。


「先日の昼配信もありがとうございました」


:楽しかった

:市場また行きたい

:マリアさん元気?


「元気ですよ」


 エリシアは微笑んだ。


「本日も一緒に視察へ行っておりました」


:仲良し

:マリアさん有能


「はい、とても助かっています」


 少しだけ誇らしそうだった。


 しばらくの雑談後、

 エリシアがノートを開いた。


「本日は議会のお話です」


:来た

:政治の時間

:ガチ王回


「最後のは聞かなかったことにします」


 即答だった。

 コメント欄が笑う。


「本日は、人材登用について話し合っておりました」


:求人出す?

:面接だ

:有能な人集めよう


 エリシアは少し困ったような顔をした。


「それが簡単ではないのです」


:なんで?

:能力高い人採ればよくない?


「能力は大切です」


 エリシアは頷く。


「ですが、それだけでは決められません」


 コメント欄が少し止まった。

 エリシアは説明を続ける。


「例えば、 

 北部復興局の責任者を任命するとします」


:うん


「能力だけを見るなら、ある人が最適です」


:じゃあ決まりじゃん


 エリシアは首を横に振る。


「その方を登用すると……

 別の貴族家との均衡が崩れます」


:あー

:派閥か

:めんどくせぇ


「はい」


 エリシアは真面目に頷いた。


「また、地方ごとの力関係もあります」


:ゲームみたいだな

:思ったより政治だった


「政治ですので」


 即答だった。

 再びコメント欄が笑う。


 だが、エリシアの表情は真剣だった。


「優秀だから採用する。

 それだけで済むのであれば、とても楽なのですが」


 その声には少しだけ疲れが滲んでいた。


:理想と現実

:どこも一緒か

:胃が痛くなる話だ


太陽:適性が無い人を置くと住民が困りますよね


 エリシアがそのコメントを見る。

 少し黙った。


「そうなのです」


 静かな声だった。


「だから難しいのです」


 コメント欄も少し静かになる。

 エリシアは続けた。


「能力だけを見れば反発が起きるかもしれません。

 均衡だけを見れば住民が困るかもしれません」


 小さく息を吐く。


「私は、どちらも守りたいのです」


:うわぁ

:正論

:王様大変だな

:正解ないじゃん


「はい、仰る通りです」


太陽:市民から登用することはないのですか?


「なるほど。民間からですか」


 陽太のコメントを見つけて反応すると、

 少し考えて。


「そうすると、

 利権を失う貴族家からの反発が大きそうですね」


 真剣な顔で答える。


:まあそうだよな

:なるほどね

:貴族めんどくせー

:くじ引きで決めようぜ!


 エリシアは苦笑した。


「はい、ですので、正解はありません。

 ただ、利権に絡まないところなら……

 参考になる考え方です」


 エリシアは、考え込み、

 手元のノートにメモを取る。


 それから、顔を上げて続けた。


「実は、今回は」


 エリシアは少しだけ背筋を伸ばした。


「能力を重視した人事を行うことを決めた、

 というご報告にもなります」


 その言葉に重みがあった。


:おお

:反発大丈夫?


「大丈夫ではないと思います」


 即答だった。

 コメント欄が吹き出す。


:正直w

:草


「ですが」


 エリシアは続ける。


「結果を出せば、納得していただける可能性があります」


 その表情には迷いがなかった。


「ですので」


 小さく頷く。


「説明を尽くし、思い切ってやってみようと思いました」


:エリさま強い

:いいじゃん

:頑張れ

:応援してる


 コメント欄が流れる。


太陽:結果が出れば、反対していた人も納得するかもしれません

太陽:選んだ方を正解にすることができますね


 エリシアは、なるほど、とつぶやき言葉を続ける。


「どちらが正解か、ではなく」


 言葉を区切る。


「選んだ方を正解にする。

 太陽様の仰る通りかもしれません」


 エリシアも少しだけ肩の力が抜けたようだった。


「皆様のお話も参考になりました」


:いや、何もしてないぞ

:ただ聞いてただけ

:太陽さんが良いところ持ってった


「それでもです」


 穏やかに笑う。


「私自身の考えを整理する助けになりました」


 その言葉に、コメント欄も少しだけ温かくなる。


◇ ◇ ◇


 配信終了後。

 陽太は椅子にもたれた。


 優秀な人を採用すれば終わり。

 そんな単純な話ではなかったらしい。


 家柄。

 派閥。

 貴族と一般市民。

 地方との関係。

 積み重なった歴史。


 王様は、その全部を背負って決めなければならない。


「大変だな……」


 思わずつぶやく。


 だが同時に思う。


 エリシアは逃げなかった。

 正解のない問題からも。


 反発が来ると分かっている決断からも。


 今日の配信で見えたのは、

 より王様らしくなったエリシアの姿だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ