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「もう少しで街に着きます。馬車もそこまでですが、お二人はどこまで行かれるんですか?」
「さあ……決まった目的地はありません」
最初の港からまだそんなに離れていない。もっと先まで進んだほうが逃げ切れる可能性は高くなる。
「街の先……特に東は治安が悪くなります。山を越えたいなら護衛を雇わないと危険です」
「教えてくださってありがとうございます……どうしようか、これから」
大都市から離れると、悪事を監視して取り締まる人たちの目が届かなくなる。強盗や拉致事件が増え続ける一方だという物騒な話を聞き、引き返すことも選択肢に入った。
「護衛……どんな人たちがいますか?」
「元兵士に冒険者、スモウや闘技場の選手です。実力と性格、料金を見て決めるといいでしょう」
実績のある人を何人も雇えば安全は保証される。ただしこの旅がしばらく続くことを考えれば、お金は節約したい。悩むところだ。
「おねぇちゃんなら山賊ぐらい倒せるんじゃないの?昨日の大会でオオゼキ二人に勝ったんだから」
「相手がたくさんいたら無理だよ。しかもルールなんてない。専門の人に頼まないと」
イヴはこのまま東に向かって進んでいきたいと思っているようだ。そのほうが捜索隊に見つからず、安住の地に出会える望みがあるのは私もわかっている。しかし生活するだけで命が危ういとなると、常に気が休まらない。それでは逃亡者としての毎日と同じだ。
「昨日は海のそばだったからお魚がおいしかったね。今日はお肉が食べたいな」
「肉なら街のどこでも食べられますよ。安くてもおいしい牛肉の店がたくさんあります」
悩んでいる私とは違い、イヴは初めて訪れる土地を楽しもうとしている。これは理想的な形だ。苛立ちや不安、恐怖は私が全て背負い、イヴにはいいものだけを味わってもらいたい。
「牛肉……串焼きはありますか?」
「はい、もちろん!私の一押しの店を教えますよ!」
言うまでもなく、私も楽しむ時は楽しむつもりだ。先のことを考えすぎて我慢ばかりでは後悔する。イヴとの二人旅、いつまで続くかわからないけど全力で駆け抜ける。
「串焼き2本、お待ち!」
「いただきます………うん、おいしいっ!」
この肉厚と見事な味。それなのに銀貨1枚でお釣りがくる。周りに牛がたくさんいて、しかも物価が安いからこその値段だ。
「このあたりの街か村に住むのもありだな……」
食事の質は合格どころか満点だ。とはいえここは人が多すぎる。もっと田舎に潜らないと安住の地は見つけられない。
「おねぇちゃん、交換しようよ」
「味はいっしょのはずだけど……いいよ」
残っている量も同じくらいだ。交換する意味なんかないと誰もが思う。しかし私はイヴが何をするかわかっていた。
「ぺろっ……ぺろぺろ……れろっ」
私が食べた肉の切れ目を舐め始めた。その舌の動きがとても色っぽく、食欲以外の別の欲望を含んでいる。
「ふふ……おいしい」
「そ…そう。よかった」
周りの人たちはそれがわからず、彼女は食い意地が張っている、肉を食べるのが珍しいのだろうなどと小声で話している。屋敷にいた時なら絶対にしない、みっともない食べ方だ。
実はこれがとてもよかった。家で教えられたような食べ方をしていたら、貴族だと気がつく人もいたかもしれない。そこから話が広がってエデン家にまで届く……そんな最悪の展開もありえた。
「今日はこの街に泊まるとして、明日からどうする?」
「わたしはもっと先に行きたいな。見たことがない景色をおねぇちゃんとたくさん見たい!」
イヴがその気なら、今日のうちに旅に必要なものを買い揃えておこう。早めの準備が大事だ。
「買い物が終わったら護衛として同行してくれる人も探さないとね」
「おねぇちゃんと二人がいいんだけどな……」
「そうはいかないよ。どうしても私たちだけの旅がしたいなら安全なルート……来た道を戻る」
イヴがどちらを選ぶとしても、ひとまずの目的地は決めていた。戻るなら港まで再び馬車で戻り、先へ進むなら何日か歩いて湖があるという村まで行く。イヴに決めてもらうことにした。
「………しょうがないな。護衛を探そう」
「わかった。さらに先へ……行くんだね」
私よりもイヴのほうが神様や世界に愛されているはず。イヴの閃きに賭けよう。
「どんな人がいいかな……見た目よりも強さ……いや、性格も大事だ」
「わたしが見つけてあげるよ。これだ!っていう人をね」
これもイヴに任せることにした。イヴの純粋さが真に心の清い人間を引き寄せると信じた。
「……立派な建物だ。『安全な旅をサポートします』、『100人以上在籍』……すごいね」
壁には護衛候補の簡単な自己紹介や依頼料が書いてある。年齢や出身地、得意な戦術は様々でも、全員料金が高い。そのぶんみんな優秀なのだろう。
「とりあえず入ってみて詳しく説明を……あれ?」
「こっちだよ、おねぇちゃん。ここにわたしたちと旅をする人がいるよ」
イヴが選んだのは大きな建物ではなく、古くて強い風が吹けば壊れてしまいそうな小屋。ここにも『護衛を引き受けます』という張り紙があった。
「………ずいぶんボロボロだね……」
「こういうところだからこそいるんだよ。本物が」
自信満々といった感じでイヴは胸を張る。私もイヴの閃きを疑わず、迷うことなく扉を開けた。
2026総評⑤首脳陣
開幕直後にヤクルトにボコられていた時や、最悪だった6月は大バッシングを受けていた。「相川もおかしいよ」などという約20年前の名言(迷言?)が再び流行語になったが、7月以降には首脳陣やフロントへの批判は弱まった。ファンなんてそんなもの。
しかし細かい継投、代打や代走のタイミングが勝敗を分ける試合はほとんど落としているような気がする。とはいえ先発が好投して野手がホームランを打つ、そんな単純で豪快な野球がベイの持ち味なのは今年始まったことではない。ベンチの采配が大事になる展開になってしまったらこのチームは勝てないのだ。




