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相撲漫画の最高峰は『ああ播磨灘』一択
スモウには数多くの技、『決まり手』がある。それでも私がやってみせたお手つきはその中にない。
「おおっ!番狂わせだ!」 「お手つきとは……」
観客席からどよめきが起こる。まさかの敗北に大男は取り乱し、観客たちに向かって叫んだ。
「ま、待て!こんなセコい手……取り直せ!」
このオオゼキが言うには、私が裸にされて痛めつけられるのを皆は見たいらしい。もしそれが事実なら観客たちもやり直しを求めるだろうけど、そうはならなかった。
「うるせえ!つまらない負け方しやがって!」
「何が取り直しだ!クズ野郎!」
「ひっ!」
怒号や罵声が響き、物が投げ込まれる。悪趣味なのはこの男だけだったようだ。
「真面目にトレーニングしないからだ!お前なんかオオゼキじゃない、ただのクソデブだ!」
「オオゼキの称号を返上しろ!豚屑が!」
容赦のない言葉を浴びせられ、すっかり小さくなってしまった男は逃げるようにして土俵を去っていった。
「やったねおねぇちゃん!準決勝進出だよ!」
「あと2回勝てば優勝……いける気がしてきたよ」
これからの旅がかなり楽になる賞金、そしてイヴが欲しがっている黄金のまわし。最初はとても無理だと思っていた。でもあんな大きな相手を倒せたのだから、優勝も夢ではなくなった。
「次の相手は……あれ、女の人だ。しかもおねぇちゃんやわたしよりも小さいよ」
「本当だ。どうやって初戦に勝ったんだろう?」
小柄で色白、筋肉はほとんどない。何か秘密がありそうで、ただの怪力自慢より不気味だ。それでもイヴに黄金のまわしを持ち帰るために全力で戦うだけだ。
『準決勝第1試合!オオゼキを破った期待の新星の前に立ちはだかるのは、この街が誇るもう一人のオオゼキだ!』
「あなたもオオゼキですか……」
人は見た目で判断できないとはいえ、さっきの大男とこの小さな女性がスモウで同格とは驚いた。オオゼキになれるのだから、私のような奇策ではなくちゃんとした戦い方で勝利を重ねているのだろう。
「ウフフ。私は魔法使い。力任せの単純なやつほど私の幻術にやられちゃうの」
力と力のぶつかり合い、それがスモウのはずなのに魔法もありとは意外だった。
「炎や電撃で勝負を決めるわけじゃない。対戦相手の精神を操って、ほんの少し押すだけで勝てるようにする……それが私の勝ち方」
「……敵の私に教えてもいいんですか?」
「どうせ抗えないのだから関係ないわ。それに私、若い女の子が大好きなの。これからたっぷり楽しむんだから、正々堂々やらなくちゃ!ああ……早く揉みたい、舐めたい、いろいろしたい!」
オオゼキというのはこんな人たちばかりなのか。醜い欲望の塊だ。
「あなたの妹さんもかわいいわね……土俵であなたをかわいがったら、その後はベッドで妹さんを食べてあげるわ!」
「………は?」
この一言が彼女にとって命取りだった。絶対に負けられない理由を私に与えてしまった。
「汚しがいがありそうで興奮してきたわ〜〜〜っ!」
イヴのために、こいつは絶対に潰す。そう決めた時、私の闘志は炎よりも熱く燃え上がった。
「ハッケヨイ……ノコッタ!!」
「ウフッ!じゃあ早速……」
女オオゼキはゆっくりと手をつき、魔法の発動に入ろうとしていた。この幻術が決まりさえすれば私を空き放題できたのだろう。
「うお――――――っ!!」
スモウでは拳を握ってのパンチは反則となる。平手打ちなら許されるので、女の顔をフルパワーで張った。
「ぶげっ………」
「もういっぱ――――――っつ!!」
右手で張ると女の意識は飛んだようで、追撃の左手での張りで完全に動きが止まった。鼻と口から出血し、私も返り血を浴びた。
「お前をイヴに触れさせるわけにはいかない!倒れろ!」
『顔から叩き落とした―――っ!!エヴァーの勝ちだ!』
気絶している相手を土俵に叩きつけ、完勝した。オオゼキの女は倒れたまま動かず、担架に乗せられて退場していった。
『すでに勝負は決まっていたように見えましたが、勢いに乗るエヴァーは攻撃の手を緩めず!場内は凍りついています!』
「やったぁ!おねぇちゃん、かっこいい!」
静まり返った観客席、その中でイヴの歓声が響いた。私は土俵上から手を振り、それに応えた。
「あがが………」
「鼻と頬の骨が折れてる!鼓膜も破れたか!?」
どこかに治癒魔法が使える人がいればどうにかなるだろう。もしいないならじっくり休んで治してもらおう。イヴを汚そうとした罪は重く、死んだとしても文句は言わせない。
(待てよ……死んじゃったら何も言えないか)
イヴのためならどこまでも残虐に、非情になれる。スモウ大会の優勝だってできるだろう。
「よし、いよいよ決勝だ!あと一つ……」
「……おねぇちゃん、あれ見てよ。準優勝の賞品なんだけど……」
イヴが指差した先には、ピンクのかわいいまわしがあった。最初に見たポスターには優勝賞品しか書いてなかったから、2位以下は何がもらえるかをいま初めて知った。
「こっちのほうが……いいよね?」
「……うん。そうなると………」
『決勝戦を前に残念なお知らせです!エヴァー選手が体調不良を訴え棄権!不戦敗となります!』
「え……え?」 「終わりかよ!?ふざけんな!」
私の棄権で大会は終了し、最低の結末に観客たちは暴動寸前だ。開催者が謝罪を繰り返していた裏で、私とイヴは賞金とピンクのまわしをもらうと逃げるようにしてこの街を離れた。
2026総評③捕手、内野手
シーズン途中に正捕手を放出という前代未聞のニュースは球界を騒がせた。それでも松尾、古市の活躍がトレードを批判する者たちを黙らせた(尾形と井上朋の働きも大きい)。打撃が論外、もしくはただ若いという理由だけで質の低い捕手を使っているチームが多い中で、ベイは希望に溢れている。
ベテラン勢の積極起用が批判されがちだった内野だが、夏場の快進撃はベテランたちのおかげ。牧の偉大さは今更語るまでもなく、ルーキー宮下の堅守ぶりは見事だった。代走要員の三森以外は全員足が遅いのが悩みとはいえ、このチームが足を使った野球をするのは最初から無理な話。毎年のようにやろうとしては諦めているので、やはりホームランこそ正義。




