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幕内よりも序ノ口のほうが面白い。これ、マジ
「この船は南の王国まで行くみたいだけど……」
「途中で降りる。貨物船か漁船に乗せてもらって、絶対に追っ手がこない土地を目指す」
お義父さんたちは財産と権力のため、王家はプライドのためにイヴを必死で探すだろう。とはいえ捜索のための費用と労力を考えれば、1年探して見つからなければ諦めるはずだ。
「貨物船か漁船……面白そう!」
「面白くないよ。荷物のついでなんだから、乗り心地は最悪に決まってる。そのぶん誰にも見つからない辺鄙で遠い場所に行ける」
経験者から話を聞いただけで、実際にはどんな環境なのかその時にならないとわからない。私だけならともかく、イヴがいることを考えれば柔軟に予定を変えることも必要だろう。
とはいえ旅は思い通りにならないもので、私の意志に関わりなく行き先や日程の変更を強いてくる。エデン家で穏やかな毎日を過ごしてきたことを考えたら、大きな違いだ。
「……えっ?船が出ない?」
「港にいる預言者が言ったんだ。しばらくは海が荒れるから航海はやめろとな。少し前にその忠告を無視した船が大変な目に遭ったんだ」
その人が本物の神様の預言者なのかはわからないけど、実績があればみんな信用する。この土地にしばらく残るか、陸路での旅にするかを選ぶことになった。
「どうしようかな……あまりぐずぐずしているわけにもいかない」
「そんなに急がなくてもいいんじゃないの?もしわたしたちがここにいるとわかったとしても、来れるのは何日か先だろうしね。探検しようよ」
イヴは楽観的だ。確かに瞬間移動の魔法でもなければ今すぐここまで来るのは不可能だ。そんなものがあれば私たちはもう捕まっている。
「そうだね。街の中心に行ってみようか」
せっかくの旅だ。この土地のおいしい食べ物や土産品を探すのは楽しそうだ。焦る必要はないとしても、いつかはここを離れないといけない。もう二度と味わえない何かとの出会いがあれば、イヴにとってもいい思い出になる。
もしこの逃亡の旅が失敗に終わっても、素敵な思い出のおかげでイヴはその先も生きていけるだろう。私は即斬首がほぼ確定だから、捕まった後のことを考えなくてもよかった。ある意味イヴよりも気楽だ。
「あっ!早速面白そうなものを発見!」
壁に貼ってあったポスターの前に立ち、イヴがはしゃいでいる。そのポスターには、立派な体つきをした男たちが何人も描かれていた。
「これは……『スモウ』だ。何年か前、屋敷のそばにも来たよね」
異世界から転移してきた人間によって伝えられたと言われている競技、スモウ。狭い円の中で武器を使わずに戦い、倒すか円の外に出せば勝ち。ほとんどの場合すぐに決着がつき、闘技場での試合よりもスモウのほうが面白いと思う人も多い。
「ちょうど今日、2時間後だ。いいね、見ていこう」
私も興味があるから観戦を決めた。ところがイヴは別のことを考えていた。
「……おねぇちゃん、お願いがあるんだけど……」
これはイヴのおねだりだ。この声と目にやられて、これまで何でも言うことを聞いてきた。
「何?特等席で観戦したいとか?」
「……ここを見て。優勝賞品は『黄金のまわし』……これ、欲しいなぁ」
「………え?」
スモウ大会が始まった。参加者は8人で、トーナメント戦が行われる。その第1試合、私は観客席ではなく土俵の上にいた。服の上から下半身に『まわし』と呼ばれるスモウ専用の装備を身に着けている。
「小娘……この土地の人間じゃないようだが、冷やかしで参加したのか?」
「い、いや……その……」
目の前には大男が立っている。身長は私の2倍以上、体重は5倍くらいありそうだ。しかも特に強い選手だと認められた者に与えられる称号『オオゼキ』だという。
「きっと後悔しているだろうが、スモウにギブアップはない。俺には怪力を誇るオークの血が流れている」
「はあ…そうですか」
「お前を粉々にすることも、ぺしゃんこに潰すこともできる。しかしそんな無粋な真似はしない。観客たちの望みを叶えるのがオオゼキである俺の務めだ!」
一方的な試合になるとしても、瞬殺ではつまらない。手加減を重ねて私にも見せ場を作らせた上で完勝するつもりなのだろうか。
「若い女が少しずつボロボロになっていく姿……とても興奮する!だんだん抵抗できなくなり、服が乱れ、されるがままになる……素晴らしいショーだろう?」
「……そういうことですか……」
悪趣味な男だった。徹底的に辱める気のようだ。
「女は参加費タダ、まずはそこを疑うべきだったな。さあ、俺が地獄に……いや、場合によっては天国に連れてってやる!」
この男はスモウよりもルール無用の決闘のほうが向いている。どこかの地下とか決闘場に腕自慢や戦闘奴隷を集めてやる戦いだ。実際に見たことはないから詳しくはわからないけど。
「おねーちゃーん!頑張って―――っ!」
私はイヴの望みを叶えるために戦う。筋骨隆々の大男に勝つための作戦はいくつか考えていた。
「待ったなし……ハッケヨイ、ノコッタ!」
「ウホホ――――――ッ!!」
互いに同じタイミングで手をついてから戦いが始まる。これ以降は足の裏以外が地面についたら負けだ。勢いよく襲いかかろうとしていた男に対し、私の狙いは一点だ。
「えいっ!!」
どう嬲ろうかとへらへらしていた男は油断していた。土俵についたばかりのその右手を素早く両手で掴み、全力で再び土俵に触れさせた。
『あ……お手つきだ!オオゼキ敗れる!』
「………あ?」
2026総評② 投手
前監督だったリーゼント馬主のせいで東以外は先発経験の浅い者ばかりだったが、終わってみれば前途有望な若者たちが次から次へと現れた。ベイの未来は明るい……と言いたいところだが、このチームの若手は投手野手問わず『経験値リセット』の不安が常に付き纏う。オフシーズンの過ごし方がとても重要だ。
リリーフは運用の仕方が雑で、次々とポジションや一軍二軍の入れ替わりが発生した。長いイニングを投げられない先発のせいでもあるが、まさか浜地がセットアッパーになるとは誰も予想できなかっただろう。ヤスアキの残り4セーブ、いつ達成させるのがベストなのだろうか?
7月の頭にヤスアキが登録抹消となり、レイノルズが守護神どころかブルペンのリーダーの座を乗っ取ったことが結果的にはチームにとって大きなプラスとなった。




