↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/11

 普段はのんびりしているイヴが、今日は速い。初めて来たはずの屋敷なのに、全く無駄なく門へたどり着いた。


「さっき調べておいたんだ。人が少ない、しかも最短のルートをね」


 まだ口にする前だった私の疑問に答えてくれた。しかし最大の謎はそれではない。


「……どうしてこんなことを?」


「わたしを心から愛してくれているのはおねぇちゃんだけ……だからかな」


 両親や王子のイヴに対する愛情がまっすぐなものだったかと言われたら、確かに違う。イヴの秘めた力への期待や財産、権力がもたらされるという欲望が愛の動機だった。



「まあ……私はそうだけど、イヴはどうなの?」


「さっきも言ったよ?おねぇちゃんはわたしのもの、そう思っているくらい大好きだよ。だからおねぇちゃんの服や道具をたくさんもらったんだ。ぬくもりや匂いを感じたかったからね」


 これまでのおねだりの真相を知り、私は混乱した。


「もらったドレスを着たらおねぇちゃんに包まれているような気持ちになって最高だったよ。そして今日、ついにおねぇちゃんそのものを手に入れることができたんだから……最高の日になったよ!」


 満面の笑みを見せるイヴ。兵士や門番に会うことなく無事に外に出ることができたけど、もし誰かに行く手を阻まれたとしてもこの勢いなら強引に突破できただろう。



「……そうだね。これが最高、あとは落ちるだけだ。もう家には帰れない……これからどうするつもり?」


「なんとかなるんじゃない?」


 イヴは何も考えていなかった。生まれてからずっと何不自由なく暮らしてきたお嬢様らしい発言だった。


「この間勉強したばかりのところと同じことになったね。最初の人間二人は楽園を追放されたあと、苦しみと悲しみに満ちた毎日になった」


 食べ物にも着る物にも困らず、両親や屋敷で働く人たちからたくさん愛されていた。その愛情が純粋ではなかったとしても、結婚後も含めてイヴは楽園で暮らせていたはずだった。それなのにあっさり捨ててしまった。



「……おねぇちゃんはどうするつもりだったの?わたしがいなくなったら……」


「悪評高いどこかの貴族に売られていただろうね。エデン家はイヴと王子の子どもの誰かに継がせることができる………だから私も手は打っていた!」


 私はイヴとは違い、どの道楽園に住み続けることはできない。隣国に来る今日はいい機会だと思い、密かに準備していた。


「これは……宝石?確か家にあった……」


「気がつかれないように、小さなものを少しだけ盗み出しておいたんだ。これくらいあれば当分は困らない」


 この国の港からは多くの船が出ている。適当な船に乗ってどこかに逃げたら、もう私を見つけることはできない。これから先の地獄を避けるためとはいえ、今日まで育ててもらったことへの裏切りなのは自覚している。私にイヴを責める資格はない。



「それなら話は早いね。わたしも連れて行ってもらおうかな」


「……そうするしかないみたいだね」


 イヴを放っていくわけにはいかず、二人旅が決定した。こんなことになるとは全く思っていなかったので、予定は全て狂った。


「私があげたいろんなものは持ってきていないみたいだけど……もう取りに帰れないよ?」


「時間が経つとおねぇちゃんの匂いが弱くなるから、もういらない。また新しくもらえばいいだけだし」


 頻繁にねだっていた理由はそれか。すぐに興味がなくなって飽きる性格というわけではなかったようだ。


(それ以上に厄介というか……いや、こんなかわいい妹に愛されてるのはうれしいんだけど………)



 

 船が出るまでの僅かな時間で私たちは、服を一から買い揃えた。これまで着ていたものは海に投げ捨てた。


「おねぇちゃん、似合ってる!でもあとで交換しようね。あっ!!毎日交換すればいつもおねぇちゃんを感じることができるんじゃ……」


「ははは。それもいいかもね」


 逃げ出した時と同じ服を着ているのはまずい、そんなことは誰でもわかる。豪華でかわいいドレスだとしても惜しまずに捨てる、それが重要だった。 




「ぐぐぐ……二人はどこへ行ったんだ!いくらイヴでもきつく叱らねば!エヴァーのやつは殺す!」


「落ち着いてください。彼女たちの居場所ならすぐにわかります。私の魔法があれば……」


 王子は魔法が使える優秀な人間だった。私とイヴはもちろん使えないけど、真剣に練習をしたことがないだけだ。もしかしたら…の可能性もある。


「お二人の服にちょっとした魔法をかけておいたのです。今回のような事態に限らず、迷子や誘拐、いろいろありますからね。今この水晶に映し出します!」


 そこまで読めていたわけではなかった。念には念を入れたことが身を助ける結果になった。


「………海の底?まさか………」


「そんな馬鹿な!イヴは自ら命を絶つような娘ではない!でたらめな魔法を使うな!そもそもあんたに魅力がないから逃げられたんだ!」


「なんだと!?殺されたいのか、没落貴族が!」



 

 屋敷での大騒ぎなど知らない私たちは船に乗り、長い旅が始まった。エデン家や王子の国とは縁のない土地に向かうのが安全だ。


「今日から新しい毎日が始まるよ。楽しみだなぁ」


「……うん。つまらないとか言ってる余裕や暇はないだろうね」


 自由を求めて楽園を飛び出した私たちを待ち受けるのは真の楽園か、苦しみに満ちた地獄か……全くわからない。それでもかわいいイヴとなら、私もなんとかなるような気がしてきた。

 2026総評①助っ人


 救世主エンカーナシオン様、ありがとう。チームリーダーレイノルズ様、ありがとう。ルイーズとマルセリーノはあと一歩だった。ヒュンメル、とりあえずお疲れ。


 あと3人いた気がするが……うっ、頭が

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。