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「エヴァー!エヴァー!」


「エヴァー!エヴァー!」


 観客の旅人や私たちを襲ったものとは別の山賊からの歓声は止まず、リングにお金やお菓子が投げ込まれるほどだった。ありがたくもらっておこう。


「無様だな……弱すぎだろ」


「あいつらはもう終わりだな」


 対照的に敗者は惨めだ。この山を拠点とする山賊たちには階級や格があり、彼らは一番下に落ちた。リーダーを見限った子分たちが散り散りになることを考えれば、このまま解散だろう。



「いいものを見せてもらった。君たちを襲うやつは誰もいない……むしろ目的地まで我々に護衛させてもらいたい!」


「えっ、いいんですか?」


「やつらには同業の俺たちも迷惑していたんだ」


 強そうな剣士や魔法使いを連れたグループや一部の山賊たちが私たちの頼もしい仲間になった。これで私たちの旅の安全が保証された。




「………強いな。あの大男を倒すなんて」


「あなたはとても弱かったね〜」


 ようやく目覚めた護衛の女の人に対し、イヴが追い打ちをかける。何事もなく終わったからよかったものの、この人が期待外れだったせいで危うく私たちは死ぬところだった。


「……廃業するよ。恋人にも危険だからやめてほしいと言われているからな……」


「そうするべきでしょうね」


 お金を返せとは言わないけど、これ以上続けていたら今度こそ死人が出る。今回の仕事を最後に辞めると約束させた。



「しかしあんた、どこでそんな強さを身につけた?貴族のお嬢様じゃなかったのか」


「妹を守るために独学でいろいろ勉強しました。イヴのためになることなら周りも止めませんから」


 私はイヴの頼みなら何でも聞き、持っているものを惜しまずに差し出した。その中には当然、私の命も含まれている。


「それでも特別な能力や魔法があるわけではないので……できれば平和に旅を続けたいですね」


 あくまで少人数を相手にする技術であり、いざという時は敵を倒すことよりもイヴを逃がすことを考える。私の力はその程度だ。


「あんたらが目指す土地は事件の噂は聞かないが、田舎だからこっちまで届かないだけかもしれないぞ」


 何が待ち受けているとしても、戻るよりは安全だ。先へ進むことに迷いはない。私もイヴも、不安よりも希望が勝っていた。






「………あれ?そっちの道は……」


 リングでの戦いから数日、目の前に分かれ道が現れた。これまではほとんど一本道だった。


「戦士たちの街に行く道だ。今回は誰の目的地でもないが、これから目指すどの街や村よりも大きいところだ」


 話を聞くと、こんな山奥なのにかなり栄えている街らしい。数多くの優秀な兵士や冒険者がそこから生まれ、中には勇者と呼ばれることになる英雄もいたという。

 


「………」


「どうしたの、おねぇちゃん?そっちに行きたいの?」


 私が立ち止まったのを見て、イヴが近づいてきた。


「いや……ちょっと気になるだけだよ」



 予感というより確信があった。私はその街で生まれて、何らかの理由で孤児院に預けられた。そしてそこに行けば、私の出生の秘密を知る人間に会える。それはもしかすると、私の実の両親かもしれない。


「ここから半日もかかりません。もしよければ腕のいい護衛を一人つけるので、行ってみたらどうです?」


「若い人が新しい人生を始めるなら、何もない湖の村よりもそっちのほうがいいかもな。あんたは強いし、あそこでも成功できるよ」


 私の様子に他の人たちも気がつき、ぜひ行ってみるように勧めてきた。もし私がこの確信を明らかにすれば、ますますそうするだろう。




「おねぇちゃん……どうする?」


「私たちの楽園がある場所……そこにしか興味はないよ。目的地は変えない」


 私の思いは揺らがない。同じ血が流れる父親と母親がいたとしても、イヴよりも大事なものはない。今の私の家族はイヴだけだ。


「そろそろ休憩は終わりにしよう。出発だ」


 イヴが行きたいと言わない限り、これからもその街に行くことはない。この分かれ道に来ることすらもうないと思う。






 大人数での旅になったので、とても安全で快適だった。何度もこの道を歩いている人たちもいたから、予定よりも早く到着した。


「ありがとうございました。帰りも気をつけてください」


「いや、一泊してから戻る。あんたらからしてみたら詐欺師も同然の私なんかさっさといなくなってもらいたいところだろうが……」


「そんなこと言ってませんよ。こうして無事に着けたんですから、感謝しかありませんって」


 皆の言葉通り、この村ほど静かな場所はこれまで見たことがない。もちろん探せばこれ以上の田舎もあるはずで、私たちの旅のゴールはそういうところになるかもしれない。ここはまだ途中だ。


「この先は料理を出してくれる店なんてないぞ。村人はみんな自分でやっちまうからな」


「食べるものは豊富だ。魚を釣るもよし、動物を狩るもよし、山で野菜や木の実を収穫するもよしだ」


 次の目的地が決まるまではしばらくこの村に住むのもよさそうだ。誰もいない空き家を探そうと思っていたその時だった。



「……おねぇちゃん、むこうに道がある。もっと奥深くに向かう道が………行こう」


「えっ?もう?休まなくていいの?」


 イヴはすぐに次の地への旅立ちを望んだ。ひとまずのんびりする、それすらしないつもりのようだ。


「わたしたちの楽園を見つけるためには、ここに長くいないほうがいい……そんな予感がしたんだ」


 山道の途中で私も感じた『何か』。イヴの閃きは護衛選びでは大外れに終わったけど、今回は違う気がした。イヴの顔は真剣そのものだった。



「よし、それなら行こう。食べ物は途中でいくらでも手に入るだろうから心配ない」


「誰かが襲ってきてもおねぇちゃんがやっつけてくれるしね……また二人だけの冒険だよ!楽しみ!」




 私たちは狭い山道を通り、さらに奥深くへ進んでいった。実はこれから数日後、崖崩れのせいでこの道の入口が塞がれてしまったらしい。そしてほとんど誰も通らない道だったので、そのまま放置されているという。


 つまり、このタイミングしかなかった。私たちの運命を大きく分ける決断になった。

 私が生きているうちにキン肉マンの完結が見たい。でもいつまでも続いてほしい気持ちもある。動けなくなる前にもう一度キン肉マンミュージアムに行っておこう。

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