第五十七話【時には美食(グルメ)の話でも】
「私、小春~も好き~ッ♪」
「うん、舜歌のこと私も好きだよ」
「えへへ」
「うふふ」
「……」
ビックリした。
なんかすれ違ってるが、ふたりがそれでいいなら他の人が口出しするべき話ではない。
それにしてもあの冴えなさそうな男、モテすぎててちょっと腹が立つ。
まあ、自分も精進せなあかんと言うことだ。
バシャ
足元は膝より少し高いくらいの水深のところで立っていた自分の足を誰かに強く引っ張られ沖の方向へ引きずられる。
「オジーッ!?」
ヒュン、シュバッ
さすが沖縄最強の霊体。
自分の足元に一瞬で近づいて足元の「なにか」を殴りつけた。
ちなみに自分は水中では役たたず。助けてもらえなかった時のことを考えると思うとぞっとする。
「あちゃー逃がしちゃった」
すでに気配が消えている。
正体を確認したか聞くと、よく見えなかったがタコの足に似ていたそうだ。
「何してるのキミ達? ふざけてると危ないよ~。こっちに来なさい」
地元の人と思われる男性が、大きな声でビーチ側から声をかけてきた。
「あんなところでふざけて遊んでいたら危ないよ~」
「はーい」
「すみませんでした」
程舜歌ともう一人の超絶美人、音無小春が中年の男性に謝っている。
まあ、視えない人からしたら、高校生がふざけて海で遊んでいるようにしかみえなかったんだろう。
「さっき、橋の上に誰かいませんでした?」
気が付かなかった。
音無小春の質問に日不見と程舜歌は首を横に振る。
先ほどの触手のようなものは、人的なものなのか?
「お腹すいた~ッなんか食べてから次行こう?」
車の自分のバッグパックから着替えを出して海浜公園内のトイレでずぶ濡れになった身体を拭いて着替えを済ませると、自分が着替えている間に運転手兼ボディガードの程家の兄が、近くのステーキ店を予約してくれたそうだ。
体格がいいし、筋肉も相当ついている。いかにもなにか武術の心得のある動き。小学生にも見える妹が夜中に活動するためには、この兄の支援が必須であろう。
ヲナリ信仰ってヤツなのかな?
ヲナリ信仰とは、沖縄地方の信仰で、妹が兄を霊的に守護すると考えるもの。妹は兄に手拭いや毛髪などをお守りとして渡したり、夢や神託で助言したりするという。ヲナリ信仰は、女性の霊力や神職としての役割を重視する信仰といえる。
この兄妹はふたりで一セットと捉えた方が良いのだろうな。
車で移動すること一〇分。
沖縄の国際通りに到着した。
那覇国際通り。別名「奇跡の一マイル」。
那覇市のほぼ中心部にある長さ約一.六㌖のメインストリートで、お土産店やカフェ、レストラン、雑貨店、ホテルなどが軒を連ねる県外に知名度の高く観光、お土産店の立ち寄りスポットとして鉄板といえる場所である。
国際通りの名前の由来は、様々な説があり、一説によると1950年、商店街店主が集まって通り会を結成する際に「アーニー・パイル国際劇場の名前にあやかって、国際通りでどうだろうか」と言われたのがきっかけだと言われている。
国際通りのほぼ中央にあるステーキ店に到着した。
沖縄は戦後、アメリカ統治下にあったことから、アメリカンスタイルのステーキが多く見られる。分厚くジューシーな肉に、ガーリックやバターなどのソースをかけて食べるのが特徴で沖縄県産の黒毛和牛である沖縄牛を高級ステーキ店で提供されることが多く、沖縄牛は脂肪分が少なく、赤身が多いため、さっぱりとした味わいが楽しめる。
実は不見知は今回の沖縄遠征にあたって密かに楽しみにしていたひとつにステーキ店に訪れることであった。
沖縄そばも捨てがたいが、肉もやっぱり食べたい。そしてどうせ食べるならやはり美味しいステーキを食べたい。
だから、現地の人に美味しいお店に連れてきてもらったのは正直大変ありがたい。
この分なら他のグルメも堪能できそうなので、不見知は「喰えれば」なんでもいい、という味覚バカと別行動になって正直、ラッキー♪だと思っている。
店構えからコンセプトが「船内」をイメージしていて、店内はエントランスから船のブリッジを模しており、船長や船乗りの人形が乗船客を出迎えてくれる。
そして何よりの売りは、どこかの有名海賊マンガの戦う料理人を彷彿させる専属コックによる料理演出披露である。
日不見は野菜の早切りや、胡椒入れや塩入れの空中回転など、味覚のみならず目で見て美味しさを感じることができる極上の時間を堪能した。
「アカン、お腹いっぱいで歩けない」
「私も、げぷッ」
その小さい身体のどこにあのUSサイズのボリューミーな料理が収まったのか?
自分と程舜歌はあまりのおいしさに目がくらみ、食べ過ぎたようだが、程舜歌の兄と音無小春は自分の胃の中に程よく収まる量を頼んだらしく、平然としている。
「食後の運動をしてから次に行こうね~」
舜歌の提案に皆、同意した。




