第三十六話【術合戦前半】
「やっぱり程舜歌様が最強ですよ」
「そうなんですか?」
「最強の魂はご覧になられましたか?」
「それは聞き捨てならないわねっ!」
「あっいやこれはその……」
「紅琳様と碧芭様が北部のお子様当主なんかより弱い訳ないでしょ」
身長百九十センチ、大柄なのに気の弱い山入端さんと他愛もないお喋りをしていたのだが、同じ三班の南部から参加している銘苅若菜さんに聞き咎められた。
「私も同意見です。林世沙様が最強です」
「は? 何言ってんの? 蔡姉弟が最強に決まってるでしょ」
平安山百香さんまで話に交じってきて、内容がより渾沌に陥っていく。
「舜歌様の符術は沖縄で一番だと」
「紅琳様の封印術、碧芭様の瞳術は並ぶものはいないでしょ」
「それなら世沙様の字術など、唯一の使い手となっています」
山入端さんまで参加して、銘苅さん、平安山さんと自分のところの代表を自慢する。
「なら、北、中、南で分かれて術合戦しましょ」
なんでそうなるかな~。
同じ術士同士、仲良くすればいいじゃん。
それともこうやって競い合って力を高めるようにしてるのかな?
「面白い話をしてるじゃないの」
「──っ!?」
いつの間にか蔡家のちょっと怖い方……蔡紅琳さんが後ろで自分達の話を聞いていた。
また、始まるのか、意地の張り合い……。
強化合宿六日目。
明日でこの合宿も終わるのになにか新たなイベントが発生する気配。
二日目の廃村で孤立してしまったが、翌日には応急復旧が行われ、車で研修所に戻ってくることができた。
三日目は、自分は于児との激闘の後、身体中が痛くて翌朝まで寝込んでいた。
四日目から研修に復帰し、知識習得、技術や霊力アップを積極的に覚え、磨いた。
昨日の夜、瑛守がようやく、霊視眼鏡無しで霊が視えるようになって、メチャクチャ驚いていた。
一番伸びたのは音無さん、彼女は元々、霊力の一種と定義づけされている超能力の使い手であるが、その類まれな先天的能力の甲斐もあって、今回参加している術士達をごぼう抜きして、トップの成績を収めている。
序盤、銘苅若菜さんがトップだったので、彼女をライバル認定したらしい。自分に音無さんのことを色々と聞いてくるようになった。
ちなみに自分……閏弥生朔の成績は中の上。
霊力こそ高いものの制御力に欠けていて、この成績におさまっている。
原因はわかっている。
──于児。
使役化して自分の霊力がずっと乱れていて、霊力のコントロールが覚束ず、封印術や喚魂術でもうまくいかなくなった。超常的な存在で、全容がハッキリしない未知の存在。
今は振り回されているけど、ちゃんと使えるようになったらスゴイことになる。舜歌がそう教えてくれたが、果たしてこのじゃじゃ馬を自分は扱いきれるようになるのだろうか?
術合戦の舞台が整った。
会場はビーチ、競技内容は「鬼退治」。
退治といっても舜歌が符術で作った鬼で本土の方だと式神と呼ばれている。
赤鬼、青鬼、黒鬼。
順に強さが増すらしく、赤鬼だと一㌽、青鬼三㌽、黒鬼五㌽獲得できるそうだ。
各地区から代表五名。
喚魂術以外は何でもあり。
各代表は。
北部は舜歌、音無さん、瑛守、朔、順宗さん。
中部は林世沙さん、平安山桃香さん、林世沙さんのお付きの女性と術士二名。
南部は蔡姉弟、銘苅若菜さん、順宗さんと一緒に武術を教練していた人と他生徒一人。
中部の林世沙さんは術合戦にあまり乗り気ではなかったが競争による全体の実力の底上げになると蔡紅琳さんに説得されて「そういうお話でしたら……」と渋々了承した形となった。
各地区で剣道のように出る順番を決める。
ちなみに北部はジャンケンで決めた。
先鋒は金城瑛守で赤鬼。
武器の使用は有りなので木製のバットを持っている。
対する赤鬼は大きな金棒を持っていて木製バットでは太刀打ちできないように見える、が。
瑛守のバットは程家が発注した特別製で桃の木を材料に呪を込めたものだそうで、鬼の金棒の一撃と瑛守のスイングがぶつかり相殺された。
ヒュンヒュンっと、少し距離を取って瑛守が海の精、ザンを捕獲する時に使った糯米タマゴで弱らせて、動きが鈍ったところをバットで倒し一点を獲得した。
中部も南部も他班の自分と交流のない術士が同じく赤鬼を倒して一点取り、各地区一点と得点が並んだ。
次鋒として順宗さんが出る。
霊力がないので心配はしたが、持ち前の格闘術を使いながら祓塩と糯米タマゴだけで赤鬼を圧倒した。
しかし二番手で出た中部の術士が赤鬼につかまった。
手に持っている仙木剣を折られ、顔面ギリギリのところで寸止めされ崩れ落ちた。
南部も順宗さんと同じく霊力の無い人。例の武術担当の人がほぼほぼ順宗さんと同じような戦い方をして赤鬼をくだし一点獲得し、これで南北二点、中部が一点追う形となった。




