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第三十話【廃村】



「あいたたたっ」


 翌日の朝も五時起床から始まり、早朝の特訓が始まる。


 今日は昨日の筋肉痛が一気に襲い掛かってきており、寝不足と純粋な疲労とあわせてトリプルパンチでK.O寸前となっている。


 自分だけではない。

 他の人も、少なからずキツそうで、若干数名ほどケロッとしている異常(イレギュラー)な人たちは気にしないでおこうと思う。


 生涯でこれほど腕立て伏せとか腹筋をしたことがない。

 徹底した筋トレ、トップアスリートの強化合宿か何かに参加しているのか? というくらいハードなメニューだ。


 そういえば昨日の紙皿争奪戦は、自分たち北部の勝利となった。

 やっぱり瑛守と山入端さんのおかげで二人が全体の半分近くを奪い、勝利を掴み取った。

 そして、悔しがるあまり、プルプル震えてる紅琳さんに向かって舜歌が「南部負けたね? 文句(ジーグイ)言わないの?」と進んで火の海に火炎瓶を投げ込むように炎上させ、また二人でその後も戦っていた。


 早朝のスパルタメニューが終わり、朝食、自由時間のあと、二日目と同じように各班に分かれて授業を受けるのかと思ったが違った。


 全員、マイクロバスに乗せられ、移動を始める。

 初日に説明していたはずだが、頭に入ってなかった。

 車内で隣に座っている山入端さんに聞くと、これから山の中に入り、実地訓練を行う予定と教えてもらった。


 一時間近くかけて移動すると、すっかり山の中で車も全然すれ違わないような細い道を上っていく。


 廃村……。


 舗装された道路が終わり、途中で砂利道に変わる。

 途中まで木々の間に見え隠れしていた送電線も走っている道路から見えなくなった。


 着いた先は山と山の間に縦に細長く形成された集落があり、手前の方でぎりぎりマイクロバスが転回できるスペースの所で降車する。


 バスから降りてすぐに分かる。

 うじゃうじゃと霊が集まっている。


 日中だからなのか、活性化は低く廃屋の中などに皆、潜んでいるようだ。


「ここは特異点、廃村みたいなところは特に霊が集まりやすいのです」


 引率は蔡姉弟と舜歌。

 林世沙さんは車椅子なので、地形が地形だけに同行していない。


 蔡碧芭さんが、あまり説明役に向いてない”犬と猿„の代わりに合宿参加者に説明し始めた。


「これから、班ごとに分かれて霊を祓ってもらいます」


 そう言いながら、各班の代表に何の変哲もないデジタルカメラを渡していく。


「今、渡したのは霊視眼鏡(ユーカガン)のガラスを使ったカメラです」


 霊視眼鏡、霊力(セジ)がない人でも眼鏡越しに霊を視ることができるアイテム。

 ということは、これで心霊写真撮り放題になるということでは?


「祓った後の“浄痕(・・)„を撮影してください」


 えーと、何だっけ? 

 浄痕……昨日、呪学で習った気がするけど猛烈な眠気でちゃんと覚えてないが、確か浄化した直後に視える天に昇る七条の光だったっけ?


 なるほど、祓った数を確認するためのモノか。


 自分の予想は的中しており、碧芭さんが浄化した霊のカウント用であることを説明した。


「奥に行くわよ」


 今日も一人張り切っている銘苅若菜さん、昨日は本当に申し訳ない。

 アレは事故だったんだ。


「朔さんってモテモテですね」


 奥に向かって歩いていると、珍しくBL好きな腐女子、平安山百香さんが隣に寄って来た。


「え? いや、そんなことないと思うけど」


 沖縄に来る前は、自分の事なんて誰一人、目に映ることさえなかった無価値な存在。

 そんな自分がモテモテ? そんなことはないと思うけど。


「程家のロリ当主、読モばりの黒髪美女、蔡家の美男子兼女子、弟コンプレックスを患ったヤンデレ姉守護霊、ハッ! もしかして山入端さんや、二班の野球部員まで……」


 ちょっと百香さん(この人)、なに言ってんだろ?

 妄想が行き過ぎて、自分の周りの人達全員を疑っている。


「でもやっぱり、碧芭様と『今日はどっちが男役?』とかイチャイチャしてくれたら私……ぐふふっ」


 隣を歩く見ちゃいけないものを視界に入れないように反対側を歩く山入端さんに顔を向ける。


「そういえば山入端さんはどうやって霊を祓うんですか?」

「ボクはこれ」


 山入端さんが鞄から取り出したのは、符札。

 舜歌も何度か使っていた一般霊から悪霊まで何でも応用が利く便利なアイテムという印象がある。


 符札を作った人の霊力の強さにもよるそうで、通常は札に自分の霊力を込めて使用するそうだが、高霊力サーダカの人が作ったお札は何もしなくても効果を発揮するとのこと。


 舜歌から渡された符札で小学校の頃に呪われたあの()の部屋への侵入を防げたから舜歌はやはり札術も一流ということになる。


 銘苅若菜さんが奥から攻めることにしたのには理由(ワケ)がある。

 この廃村の形状が縦長なので、入口付近で固まってしまうと、術士の過剰供給になるのでいきなり奥に行こうという作戦を取ったのだ。


「うわぁ、あそこヤバいんじゃない?」


 村の一番奥、少し小高い場所に建っている二階建ての洋館風の建物を銘苅さんが指差す。


 確かに……。

 いかにも何かいそうである。

 下手したら一般霊だけじゃなく悪霊もいるかもしれない。


「絶対ポイント高いでしょ? 行くわよ」


 銘苅若菜さんの一言で、洋館に潜入することが決まった。



 

 ……大丈夫かな?


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