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第二十九話【皿取合戦】

 

「私と勝負しなさい」

「何の勝負?」

「どちらが首席でこの研修が終えるか勝負よ」


 マジ?

 この強化合宿って成績みたいなのがあるんだ。

 初めて知った。


 っていうかなんで自分と勝負することになったんだろ?


「あなた、程家の婿入り候補らしいじゃない」


 なるほど、そういうことか。

 どうやら、あとであの舜歌の疑似悪霊でヤシの実を取れたのが自分だけだと聞いて一方的にライバル認定したようだ。


 そういうの興味ないんだけど?


 思えば小学生の頃から身体が弱かった。何をやっても上手くいかなかったし、人と競走なんてする事なんてとてもできなかった。いつだって人から見下されてた自己肯定感が地面スレスレの超低空飛行の自分に、いつも一番じゃないと気が済まないような人生の勝ち組のような年下の女の子に剥き出しの敵意をあてられても困るだけなんだけど……。


 山入端さんに助けを求めると「あははッ」と笑って、どうやらデかいカラダに似合わず気が小さいらしい。助け船は期待できないことを知る。


「ははっお手やわかに」

「ふん」


 あ~。

 なんでだろう。誰とも争いたくないのにこうなっちゃうのはなぜ?


「よしっあんた達、北、中、南に分かれなさい」


 向こうで舜歌との不毛な争いを続けていた蔡家の(かまびす)しい方が、なにやら良からぬことを閃いたようだ。


 多分、ロクなことにならない。しかし、相手は合宿の教官の一人で沖縄本島南部筆頭。皆、逆らうこともできず、おとなしく地域ごとに分かれる。


「おっ朔、なんか久しぶりだなっ」

「朔くん」


 金城瑛守と音無さん、なんか久しぶりに話した気分になる。


「あっこちらは山入端さん」

「こんばんは初めまして、山入端といいます」


 二人に山入端さんを紹介すると、山入端さんは年下の高校生二人に丁寧に挨拶したので、瑛守も音無さんも慌てて自己紹介をする。


 北部班は自分達四人の他、あと二人……三十代の男女がおり、計六人となっている。

 中部班は自分と同じ三班の平安山百香さんと他六名、南部班は銘苅若菜さん以外に七名と南部班が一番、人の数が多い。


 各チームの代表三人が全員、頭の上、背中、両肩、お腹と五か所に紙皿を粘着テープで貼り付ける。

 その状態で三チーム入り混じっての紙皿争奪ゲームをするそうだ。


 北部は自分はじめ、金城瑛守、山入端さんの三人で出ることになった。

 中部は全員男性が出てきたが、南部には銘苅若菜さんが男性に交じって前に出た。


「お前ら北部(やんばる)に負けんじゃねーぞ」

「勝って紅琳にもっと文句を言わそう。面白いから☆」


 両陣営のトップから檄が飛ぶ。

 いやー自分達の争いに人を巻き込まないでくれる?


 それに比べて中部は静かなものだ。

 林世沙さんが静かに成り行きを見守っている。大人だなー。


 ゲームが始まった。


 南部の紅琳さんには悪いが、負ける気がしない。

 現役高校生二人に二十一歳の百九十㌢の大男。

 瑛守だって、山入端さんほどではないが百八十五㌢と身長(タッパ)もある。

 このゲーム、どうしても頭の部分だけは攻めるのも守るのも身長が高い方が有利にできてる。


「朔ぇぇぇっ!!」


 いやん、怖い……。

 自分の名前を叫びながら、銘苅若菜さんが他に目もくれず、自分に突貫してくる。


「スキあり!」


 瑛守と山入端さんが、自分しか見てないため、無防備に特攻してきた銘苅さんを左右から挟んでお腹以外の紙皿をあっという間に奪った。


 しかし彼女の足は止まらない。


 二人を無視して、自分(はじめ)の紙皿を奪おうと手を伸ばしてくるので両手で払って、抵抗する。


 思ったより速い。

 何か運動系の部活でもやっているのだろうか?

 俊敏なステップに足場の悪い砂浜のせいもあって、彼女の動きが追えず、両肩の紙皿が奪われた。


 うわぁ。ダサいなぁ、中二の女子に運動神経で負けてるし。


 向こうでは瑛守と山入端さんが他の人達と乱戦に入って、こちらを助ける余裕がない。


 これで自分の紙皿を全部、銘苅さんに剥ぎ取られたら、とんでもなくカッコ悪い。

 舜歌や音無さんが見てる手前、これ以上いいようにされるわけにはいかない。


「うおおおぉぉっ、っとっと」


 銘苅さんのお腹にまだ残っている紙皿に向かって必死に踏み出し手を伸ばすと勢い余って前に倒れてしまった。


『むにゅ』


「ん? げぇぇッ、いやこれは決してワザとでは、へぶっ!」


 銘苅若菜さんを巻き込んで倒れてしまった自分は、焦って手をついた先に柔らかい何かを握りしめていることに気が付き、思わずワシワシッ(・・・・・)』とソレがなんなのか確認してしまった。


 気づいた時には時すでに遅く、慌てて後ろに身体を起こした自分を顔を紅く染めた銘苅若菜さんにグーで殴り飛ばされた。


 痛ったぁぁぁ。

 ワザとじゃないって言ったのに……。


 しかし反対の手には銘苅さんのお腹についていた紙皿が握られていたため、かろうじて勝利を収めた。


「朔~ッのえっち♡」

「ふふっ朔くん、年下の子も好きなんだ」


 舜歌は面白そうに笑っているが、音無さんは顔は笑っているが目が笑っていない。




 そのケダモノを見るような目、お願いヤメテ……。






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