第二十八話【おっふ!】
舜歌が作った疑似悪霊をひとり一体、肩に乗るとズンッと身体にかなり負荷が掛かる。
みると、他の三人は手を地面につけて四つん這いになっている。
「朔~、じゃあ疑似悪霊を使ってヤシの実を取って」
ヤシの実?
あの上にあるヤツ?
ってか、どうやってこの疑似悪霊を使うの?
「やり方はどうするの?」
「〝取ってこぉぉい〟って念じると取ってくるよ」
「はっ?」
「ふんっ! て気合入れて、ぐわぁッて思うの」
「……」
アカン、さっぱり分からん。
「ふんっ!」とか「ぐわぁっ」ってなんだ?
それで人にモノが伝わると思ってるの?
舜歌をみると、いつもの顔だ。
目がキラキラしてる。なぜ?
(ふんっ!)
いや、ホラ、いちおう言われたとおり、やってみようかなーって。
疑似悪霊はウンともスンとも言わずに依然、背中にピッタリくっついている。
ダメやないかーーーいっ!!
っとココロの中でとりあえずツッコんでおく。
「ホラッもっと、こう……ずぐぶぅぁぁって」
なんなん「ずぐぶぅぁぁ」って?
誰かーッ、他の先生はいないんですかーーーッ!?
(ずぐぶぅぁぁ!!)
ちっ違うんだから。決して「イケるかも」なんて思ってないんだからぁぁぁ!
いかんいかん……。
舜歌のせいで人格がブレて自分が誰なのか見失うところだった……。
さて、ここはひとつ冷静になって考えてみよう。
いつも寿姉を喚び出す時ってどうしてたっけ?
少し考えてあることを思い出す。
そうか。
出てきてほしい時は強く思うんだ……。
「寿姉出てきて」って。
この疑似悪霊はすでに召喚されてる状態なので、行動を強く思えばいいのか。
(登れ!?)
今まで、ピクリとも動かなかった黒い魂が背中から離れてフラフラとヤシの木の上に登っていく。
(よし、いいぞ……実を取るんだ!)
黒い魂は自分が強く念じると素直にヤシの実を取ったが、しかし……。
ブンッ!
「おっふ!」
ヤシの実をあろうことか全力投球して、意識を集中しすぎて身体のことをすっかり置き去りにしていた自分の腹部にヤシの実が突き刺さる。
生まれてこのかた発したことのない変な声が口から勝手に漏れ出た。
「ダメだよ~油断しちゃ、一応悪霊だから」
誰だよ、その悪霊をわざわざ作ったヤツは?
「他の人達は立てる~?」
「くっ」
おおっ!
銘苅若菜さんが気合で立ち上がった。
しかし、疑似悪霊をなんとかコントロールはできているが霊力が足りないのか、ヤシの木の途中まで登ってそこで停止してしまう。
「朔は二体いってみよー♪」
はっ?
皆、一体で大変なことになってるのになぜ自分だけ二体扱わなきゃいけないの?
「二体くらいは軽いよ~、ホラ、五体でこんなこともできるよ?」
舜歌は疑似悪霊五体を完全に使役し、お手玉にして遊んでいる。
なるほど、化け物だ。
と、感心してる間に疑似悪霊を投げて寄越され、ズシンっと一体だけとは比較にならない程の重圧を感じる。
……なんとか立っていられるが、ヤシの木まで悪霊たちを登らせることができるかな?
先ほど同じく強く念じて試してみると、球状の疑似悪霊達から手と目と口が生えてきて「お前が行けよ」「イヤイヤどうぞどうぞ」と互いを牽制し合っている。なにこれ?
「しゃーない、コイツ行かせようぜ?」
「それは妙案だ。兄弟♪」
「はっ?」
くそー、悪霊達に命令されて自分でヤシの実を取りに登らせられた。
ロープをヤシの木の腰に巻いて引き締めながら上へ上へとよじ登っていく。
なんとかヤシの実を二つ捥いで下に落とすと悪霊達がキャッチする。
「「ボス、これでいいですかい」」
「いいよー、君たちもお疲れさん♪」
悪霊達はやけに創造主に慇懃な態度をみせる。
くそーっ今は自分が使役している筈なのに。
結局、悪霊二体を使いこなせないまま、喚魂術の授業が終わった。
「よぉぉー明日も元気に修行するために食うぞぉぉぉ」
夕食は砂浜でBBQをすることになった。
仕切るのはもちろんこの人、焼き肉大名「蔡紅琳」さんだ。
やっぱり「三家」っていうだけあって皆、スゴイんだなー。
今日、あらためて彼我の差があることをつくづく実感した。
霊力って、某有名なマンガのように、なんかこう身体中から溢れてくるのが視えるみたいなのでも、ゾクゾクと感じるものでもない。
なんとなく、あ、この人「持ってる」と感じるだけ。
「朔さん」
「あ、山入端さん」
BQQも何やら班ごとに分かれてて向こうでは教師陣、三家の人達が卓を囲ってるが例のごとく「不毛な争い」が勃発している。
玉ねぎを上手く焼けず焦げた裏面をひっくり返してどうやれば焦げ目を付けずに玉ねぎが上手に焼けるかひとり思案していると同じ北部の山入端さんが自分の横に寄ってきた。
「やっぱり程家に婿入りするだけあってスゴイですね」
大きな身体を小さく丸めて山入端さんは舜歌を見る。
いやぁ自分が意外と霊力が高いことにはビックリしたけど多分あそこに固まってる人達にはおいつけないだろう。
ちょっと前まで幽霊を見ることさえできなかったし。
その話しを山入端さんにすると霊を視るのはセジ=霊力が高いだけでは視ることはできないらしく、修行を積むか霊視眼鏡のようなアイテムの力を借りてコツを掴むかのどちらかで視えるようになるそうだった。
「朔、でしたっけ?」
同じ班の背の高い短髪の女の子、銘苅さんが自分を呼び捨てにしてくる。
まあいいけど。
「なに?」
「私と勝負しなさい」
……マジ?




