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第二十三話【沖縄の闇(ダークサイド)】


「オラオラオラオラァァ」


 すごっ……。


 紅琳さん、中国拳法を取り入れたような移動芸術パルクール的な動きをみせ、浮遊しているザンまでもその射程内に収め、壁やら屋根の上を飛んだり跳ねたりしながら虫かごの中身を埋めていく。


「金魚すくいのようにすると捕まえやすいですよ」


 え?


 紅琳さんを唖然としてみてたら、いつの間にか自分のそばに碧芭へきはさんが立っている。

 気が付かなかった。


「金魚すくいって?」

「見ててください……」


 碧芭さんはフッと音もなく、動くと近くにいた地を這うザンを下から掬ってみせた。


 なるほど。

 下の方に意識がいってないのか、上から被せるように虫取り網を振っても素早く逃げるが、まるで自分で罠に誘いこまれるように面白いように捕まえることができた。


「あっ」


 次の獲物ザンをみつけて、下からすくうように虫取り網を動かしたが今度は逃げられてしまった。


「あれー?」

「こうです」


 まただ。


 いつの間にか碧芭さんが自分の虫取り網を握っている右手の甲を後ろから握ってきて、するりっと正面に向かって地面を擦る様に這わせると先ほど逃したザンが身動きもせず、網の中に入れることができた。


「あっ……ありがとうございます」

「いえ、あの、アナタのお名前は?」


 碧芭さんにちゃんと挨拶してなかったっけ?

 紅琳さんと双子である碧芭さんはやはり端整な顔立ちで、この甘いマスクに女性はイチコロだろうと思うが、碧芭さんって確か男の


閏弥生朔じゅうさんがつはじめです」

「守護霊の人はお姉さんですか?」

「あ、ハイ、姉の寿那です」

「スゴイ……朔さんのお姉さんだけあって美しくて気品がありますね」


 ポワンッ


「朔がお世話になります」

「いえ、ボクの方こそ朔さんにこれから色々とお世話になります」


 寿姉、自分が呼び出してないのに勝手に出てきた。

 寿姉の弟コン障壁バリアを一瞬で破壊した……。恐ろしい。


「まだまだたくさんいますからお互い頑張りましょう」

「えっあ、はい」


 碧芭さんはニコッと笑いかけ、すぐさま少し離れたところにいるザンの群れのところに向かって行った。


「うーん、弟の《《彼女》》候補かぁ……ま、いっか」


 いやいやいや……よくないよ?

 なに弟の恋愛事情を勝手に予測してるの?

 普通ノーマルですからね、俺……。


 碧芭さん、すごく美形だし、紅琳さんと似てるから身体の線も細いから女性と見間違うくらいだから、あれで化粧でもしたらホント、わからなくなるかも……。


 って、いやいやいや。

 舜歌っていう自称許嫁もいるし、それにほら、音無さんのことも……。


 ガポッ


「……なにやってるの舜歌?」

「あちゃー、逃げられた」


 舜歌の虫取り網が自分の頭を捕まえている。

 みると目の前にフワフワと逃げていく浮遊型ザンがいる。


「ヨイショ」

「おっ朔~、ナイッス~♪」


 手に持つ網で初めて逃げそびれた浮遊型ザンの捕獲に成功した。

 舜歌がまた蝶々を捕まえるようにフラフラと向こうの方に浮遊している獲物を捕まえんと角を曲がり姿を消すと、またすぐに声を掛けられる。


「朔、タマゴ持ってないか?」


 瑛守の質問に首を横に振って答える。


「そっか、くっそぉ、もうタマゴが切れちゃったらしいんだよ」


 糯米タマゴが切れてしまうと、瑛守も空中に浮いているザンの捕獲は難しくなる。

 その間にも紅琳さんが続々と地上に集中している人達の中、浮遊型ザンを捕獲し点数を稼ぎまくっている。


「しょうがない、下のヤツを捕まえるか」


 瑛守と別れてネズミ型ザンを追いかけてアチコチ角を曲がって追いかけていくと、音無さんが長椅子に座って休憩している。


 超能力って結構、疲れるらしい。

 昨夜教えてもらったが、一分間能力を使うと一時間くらいぶっ続けで勉強するくらいの精神的な疲労度があるらしい。ハッキリ言って自分には使いこなせそうもない。


「ちょっと、アナタ達、看板が見えなかったんですか?」

「F●ck if I know」


 どうした?

 このエリアはクネクネと曲線を描いた通路でちょっとした迷宮のようになっているが、角を曲がった先の出入り口近くで声がしたので顔をだす。


 あっヤバい。


 中部の術士の一人が、片手にビール瓶を持った五人組のゴツい外国人に注意するが突き飛ばされて尻もちをついているところが、目に映った。

 沖縄では《《酔っ払った外国人》》はとても物騒だと聞いた事がある。


「ピュ~♪」


 男達は自分のうしろにいる音無さんを見つけると、口笛を鳴らしズカズカと近づいてくる。


 くそっ


 手を広げて音無さんの前に立つ。


 デカい……。

 多分、米軍人なんだろう。身長一九〇㌢前後の男五人に少し離れてこちらを囲む。ひとり近づいてきて目の前に立たれ、血の気を失う。

 至近距離、一〇㌢もないほど密着して自分を見下ろしている。


 うわぁ、殴られたら一発で吹き飛びそう……。

 

 そっと視線を上げると、メチャクチャ睨んでいる。

 コチラがなにか動きを見せたらすぐに襲われると思う。


 音無さんは自分のうしろで動かない。動けないのか?


 目の前の外国人がポケットからゆっくりと両手を出した瞬間。


「おーい、なにやってんのぉ?」


 建物と建物を繋ぐ二階の歩廊から舜歌が見下ろしている。


「舜歌、酔っ払いだから近づかないで!」

「なんで、帰ってもらえば?」


 あぶなっ


 舜歌はヨイショっと歩廊の欄干を飛び越えて、飛び降りた。

 

 フワッ


 舜歌はゆっくりと着地する。

 まあ、自分には視えてるけど、オジーが舜歌をキャッチして静かに降ろした。


 でも外国人にはそれが衝撃的だったみたい。


「Oh, it's amazing …… ”NINJA„!?」


 驚きながらも舜歌に手でシッシッと追い払われるまま外に出ていった。


「まったく、基地外だからって酔っぱらって《《キチガイ》》になるなんてジョークだけにしてよね~」


 さむい。さむいよ舜歌……。


 まあ舜歌に何かしようものなら、最強ご先祖様がいるから瞬殺だけどね。

 寿姉は物に触れないが、オジーは実体干渉が可能らしい。


「朔くん」


 振り返ると音無さんが、ホッと安堵した表情をみせていた。

 そうだよな。やっぱ、怖いでしょ? あんなゴツイ男達に囲まれたら……。


 でも自分も我ながら勇気を出したと思う。




「ゴメンね。さっき能力ちから使い過ぎてたから、朔くんを護れる自信がなくて」



 えぇぇぇぇーーーーーーーー俺?


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