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第二十二話【三家】


「げっ!本島北部やんばるチビ」

「あっジーグヤー紅琳」

「誰が文句人(ジーグヤー)じゃボケッ」


 なんかスゴイ既視感(デジャブ)……。

 このふたりの挨拶的なもの?


 舜歌と舌戦を始めた女性は沖縄本島南部の守護を担っている蔡紅琳さん。

 双子の弟、碧巴(へきは)さんは後ろで黙ってふたりの漫才のような挨拶を見守っている。


 駐車場から降りて、ボウリング場の前で待ち合わせすることになっている。今回も大宜味村に続き順宋さんも参加するらしい。


「あれ? そこの背の高い兄ちゃん、この前の試合でピッチャーやってなかった?」

「そうだよ、金城瑛守」


 紅琳が瑛守に気が付くと、瑛守が「よろしくなっ」とニコッと笑うと、プイっと顔を背けた。


「あと小春~もいるよ」

「音無小春です。よろしくお願いします」

「あらっ……あらあらあら、紅琳(こうりん)です。よろしく♡」


 少し後ろに立っていた音無さんが舜歌の紹介で前に出ると紅琳さんの態度があからさまに変わる。なんかスゴイなこの人……。

 ちなみに自分はじめのことは一瞥もない。たぶん彼女には自分が視えてないのかもしれない……。


 って、今、気が付いたけどモジモジしながらも弟の碧芭さん、自分のことを相変わらずチラチラとみているが、いったい何なんだろう?

 

「お子様はもう寝る時間ではなくて?」

「大丈夫、昼、いっぱい寝てきたから」

「あら、自分がお子様と認めるのね?」

「嫌味を人に平気で言う人の方がお子様だと思うよ?」

「誰がお子様やねんっ!」

「ほらっすぐ怒るところもお子様……お子様でもこんなに怒らないか……じゃあアブない人?」

「てってめえ」


 紅琳さんが皮肉を言うと舜歌が本音で返事をして、紅琳さんの怒りがますます込み上げている模様。


「舜歌さん、紅琳さん、碧芭さん他の皆さんもよく来てくれました」


 舜歌と紅琳さんのいがみ合いの中、今日の主催者が登場した。


「世沙~久しぶり~♪」

「ふん、しょうがないから来てあげたわよ」


 舜歌と紅琳さんが返事をし、碧芭さんはペコリと頭を下げる。


 林世沙りんせいさ──中部の名門“林家„の現当主。

 長い髪をひとつに束ねて、右肩から流している。

 歳は、やはり舜歌や紅琳さんと同じくらいに見える。


 彼女は車椅子に乗っており、後ろで彼女を押す二十代半ばくらいの眼鏡を掛けた女性がいる。


 他にも中部の祓魔を生業としている人たちが十数名ほどいて、南部と北部を合わせると総勢二十数名にものぼる集団となった。

 中部のメンバーから虫取り網と虫かごの様なものと大量の卵を渡される。


「先にメールでお知らせしたとおり、今日は大量に発生している海の精(ザン)を捕獲します」


 海の精(ザン)

 初めて聞く名。

 他の皆さんはそれで納得したようだが、瑛守と音無さんと自分(はじめ)用に舜歌が補足をしてくれる。

 普通の虫取り網と虫かごに(しゅ)を掛けた特別仕様になっていて、卵の方は中身をもち米を砕いて粉末状にしたものに入れ替えたものだそうだ。

 ザンには二種類いて、ネズミのように地を這うタイプと空中をフワフワ浮いてるタイプがいるようで、フワフワ浮いているタイプは透明だが実体があるらしく糯米タマゴをぶつけたら、目を回して地上に降りてくるのでそこを虫網で捕まえるそうだ。

 

 今夜はザンが大量発生している区画を封鎖していて、この区画に入る際、どう手配したのか知らないが、工事中のフェンスを跨いで入ってきたため、自分達関係者しかいない。


 ちなみに絶対に傷つけないようにと、主に北部の新人(じぶんたち)に念押しされた。


「チビ、勝負よ」

「なんで?」

「アナタをボコボコにしたら私が楽しいから」

「いいよ~、でもまたジーグイするはずねっ」

「ちっ」


 また始めた。

 面倒クサイなこの人……。

 喋らなければ知性溢れる美人って感じだが喋るとその輝きが台無しになる。


「それでは始めましょう!」


 林世沙(りんせいさ)の合図で大捕物(おおとりもの)が幕を切って落とされた。



☯☯☯


「マロちゃん」

「にゃ」


 舜歌の影から猫の守護霊「マロちゃん」が飛び出ると、周囲に風が巻き起こり、舜歌の手に持つ虫取り網の中に浮遊タイプのザンが吸い込まれていく。


凝結(アサンブラージュ)


 一方、音無さんは超能力を使って、浮遊タイプのザンに超能力を当てると、動きが止まり固まって、レンガでできたタイルの上に落ちてくるのでそれを拾い集めている。

 自分(はじめ)や順宋さんはいたってシンプルで地面を這うタイプのザンを追いかけまわして少しずつ捕まえては虫かごに納めていく。


 そして金城瑛守は……。


『ヒュヒュヒュン』──風を切って複数の糯米タマゴが浮遊しているザンにあたっては落ちてきたザンをすごい速さで虫取り網で捕まえている。


 こういう時、コントロールのいいピッチャーって役に立つんだ。


 能力を使っている舜歌や音無さんよりも一匹を捕まえる速度が段違いで、瑛守の肩掛けしている虫かごがすぐにいっぱいになった。

 虫かごはすぐに中部の術士の人達に話すとふたつ目の虫かごを受け取る。


「本島北部(やんばる)チビの彼氏(おとこ)やるわね、でもみてなさい」


 紅琳さん、瑛守は舜歌の彼氏ではないんだけど……。

 ってか、紅琳さん、なにをするつもりだろう?


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