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第二十一話【日本の中の「外国」】


「ホテルの人に何号室か聞いてみる?」

「いや、宿泊客の個人情報はホテルの人は教えてはくれないよ」


 山高帽の黒ずくめの男、月城一夜が宿泊しているホテルの駐車場で順宋さんの車、国産の七人乗りSUV車に乗ったまま、方針をどうするか相談する。


 世間知らずの自分たち高校生と違って順宋さんは大人なのでこういう時、助かる。

 こんな夜中にホテルに自分達高校生がうろついたらまず怪しいし、順宋さんだってホテルのフロントをスルーしたら怪しまれるかもしれない。


「だったら、〝視えない(・・・・)人と猫(・・・)〟で行けばいいさっ」


 なるほど、その手があったか。

 自分達はは車内に残ったまま、寿姉、マロちゃん、比嘉用高さんの二人と一匹で行くことになった。

 ちなみにオジーは舜歌から数十㍍くらいしか離れることができないらしい。


 比嘉用高さんは一般霊だったが、舜歌が出発前に術を掛け、高位守護霊……「チヂ」に昇華させたうえ、寿姉のように武器として、舜歌から大きなフライパンを手渡されていた。

 大きなフライパンって役に立つのかという疑問が拭えないが、用高さんが喜んでいたので、それでいいのかもしれない。


「朔の姉ちゃんよろしくね~」


 舜歌が用高さんではなく、寿姉に声をかけた。。

 用高さん、二十八歳だけどどうにも頼りがいがない。マロちゃんはその……ニャンコだし。


 月城一夜の部屋番号と部屋の中にいるかどうかの偵察行動。危険はそこまでないはずだが、相手が相手だ。少し心配になる。

 

(閏弥生寿那です聞こえますか?)


 十数分後、車で待機しているメンバー全員へ寿姉から精神感応テレパシーで連絡が入る。代表して自分はじめが聞こえていることを返事すると、寿姉が部屋の中の説明を始めた。


(月城一夜名義で借りられてた部屋は三〇五号室でしたが、中は綺麗に引き払われてて、部屋のカードタイプの鍵とメモ二枚、あと現金が置かれています)


 寿姉がテーブルのうえに置かれているメモを読み上げ始める。


(一枚目はホテル宛てで、『理由(わけ)あって、鍵と宿泊代金を置いておきます』と書かれてます)


(二枚目は、どうやら私たち宛て(・・・・・)のようです)


 自分達宛て? どういうことだろう。

 どうやら、自分達がホテルに踏み込むことを予測していたらしく、沖縄から一時撤退する旨のことが書かれていて、ホテルのチェックアウトを済まさなかったのは、こちらが何らかの方法でチェックアウトをしたかどうかを知る方法があることを知っての行為と考えられる。


「あちゃー、どうしよ? 直接叩けなかった」

「舜歌、いいかい?」


 順宋さんが代替手段を舜歌に提案する。

 それを聞いて、自分はじめと音無さんは驚いた。


 自分達、二人が沖縄の呪術協会に入る!?

 そうすることによって、相手も非合法な組織ではあるものの、裏の世界の呪術協会に盾突くことはできず、協会員となった音無さんと自分(はじめ)に下手に手出しはできなくなるだろう、と。


「朔~は元々、いずれは入ってもらおうと思ってたけど小春~はそれで大丈夫?」


 ホテルの中から戻って来た二人と一匹を拾って、程家に戻ると離れで一泊した。

 翌日、既に手を打ったらしく、自分も音無さんも自宅へ帰っても大丈夫だろうということになった。

 

 今日が土曜日でよかった。

 平日だったら寝不足確定コース。

 

「夕方、また集合ね」


 マジか……。

 たまにはゆっくり休みたいんだけど?


 ブツブツと文句言うものの、夕方十八時きっかりに程家の離れ(アシャギ)に顔を覗かせると、舜歌、音無さん、金城瑛守が既に部屋の中でくつろいでいる。


 すると、玄関から順宋さんの声が外から聞こえるので、戸締りをして外に出ると駐車場ですでに車の中で運転席にスタンバイしている順宋さんが座っていた。


 どこ行くんだろ?


 集合するとは言われたが目的地はまだ教えてもらってない。

 それに瑛守も一緒となると、どこに行くのか皆目見当もつかなくなる。


「今日は『中部』から応援要請」


 ──沖縄本島中部。


 米軍基地がかなり集中していて、基地外住宅も多く基地の外でも当たり前のように米国アメリカ人が普通にそこら辺にたくさん歩いている日本の中の半分外国のような地域。


「中部の今の当主が巫病(カミダーリィ)が強く出ちゃってて」


 北部の程家、南部の蔡家に並ぶ沖縄本島三家のひとつ、中部の名門“林家„。

 その当主、林世沙りんせいさという人物が本島中部圏域を守護を担っているが、病気がちで大物退治の場合、中部の他の術師達でも手に余る場合はこうやって北部や南部に本部を通じて救援要請をすることがあるそうだ。


 ちなみに昨夜の晩、順宋さんと二人きりの時に教えてもらった舜歌の秘密……。

 巫病カミダーリーとは強い霊力セジを持つものに現れるという病気で症状は一人ひとりさまざまで、舜歌の場合は巫病による成長阻害が原因で人よりカラダの発達が遅いらしい。

 そんなことも知らずに今まで舜歌のことをチビッ子呼ばわりしていて、今までの自分に対して大変猛省しているところである。


 ところでそんな、他の地域の人を救援要請するような案件に金城瑛守を連れてきて大丈夫なのだろうか?

 音無さんは超能力が使えることが昨日証明されたし、自分にも二体の高位守護霊、寿姉と比嘉用高さんがついている。


「オレってなにか役に立てるのかな?」


 瑛守が自ら舜歌に質問した。


「今回は瑛守~が一番活躍するかも」


 ん、それってどういうこと?

 舜歌との質疑応答(やりとり)している途中に目的地に到着した。

 夕方陽が沈み始めると、幻想的なネオンがその彩りを放ち、日本ではない異国感をより濃く感じる日本の中の「外国」。

 


 ──美浜アメリカンビレッジ



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