手を伸ばせない愛
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なんだか自分に都合のいい言葉が聞こえた気がする。もうお迎えが近いのかしら?あらでもドラゴンは長命じゃなかったかしら?
とっ散らかった頭が一向に整理されないまま、ぽかんとアランを見つめる。
「ラヴィル様!あいつは止めないんですか!?」
「勇者の場合、行動が紳士だからなぁ…おまえと違って」
「なぜだ!」
アランの背後で父様とフランツさんが何やら騒いでいるが、全く頭に入ってこない。頭が真っ白になるってこういうことなのね…。
アランを見つめたまま固まっていると、目の前で真剣だった顔が和らぐ。その微笑みは、もはや凶器……!
「俺はイリーネと生きたい」
「わたし、と………?」
「そう、君と」
「だって…私は、ドラゴンで……人ではなくて…………」
「君は人だよ。それにドラゴンであっても問題ない。俺はイリーネと、ずっと一緒にいたいんだ」
「………でも、私、髪が白髪で…………お婆ちゃんみた……………ひっ!?」
呆然としながら答えると、部屋にいた3人が目を見開き、ものすごい形相でこちらを見る。
「なぜそうなる!?さっきも言ったが白髪じゃない!銀髪だ!!美しい銀髪だ!!こんなに輝いているのに…。白髪とは全然違うだろう!?」
「この髪は欠点ではありません!むしろ長所!!というかイリーネに欠点などありません!!」
「こんっっっなに!美しい髪なのにそんな風に思ってたのか!?ひとりで悩んでたんだな…今まで一緒にいなかった父さんのせいだ!すまなかったぁぁぁ!!これからはずっと一緒だからなぁぁぁ!!」
なんたるカオス……っ!
さっきも思ったけどこの世界の人はそんなに銀髪(私的には白髪)が好きなの?
アラン、さっきから握ったままの手が痛いよ。アランは勇者の力があるからさすがに痛いよ。握られるの自体は正直嬉しいけど、少し緩めて。フランツさんは相変わらず褒めすぎね。絶対この人女の人慣れしてるよね。ちょいちょいチャラさが滲み出てるから。何人泣かせてきたんだ、コラ。父様。私、銀髪(私的には白髪)になったのは最近だからそんなに長くは悩んでないよ。銀髪歴ものすごく短いから。だから泣かないで!大人に泣かれるとどうしたらいいのか分からないよ!
大柄な男性3人からの怒涛の抗議により突然現実に引き戻され、ふわふわとしていた頭が一気に覚醒する。…うん、結果オーライ…なのかな?
気を取り直して頭を整理する。
聞き間違いでなければ、さっきアランは私の番になりたいと言った。私と、生きたいとも…。
先ほどとは比べ物にならないくらいドキドキと胸が暴れ始める。
と、いうことは…アランも私と同じ気持ちでいてくれてるの?私は…あなたを諦めなくてもいいの?
いや、でも……。
アランは確実に私よりも先に死んでしまう。これは避けられない。私は番亡き後、長い年月を一人で生きていけるだろうか?それはとても…辛い。だからと言って、アランの横に他の女性が立つのを見るのも辛い。
私の悩みなどお見通しとでも言うように、慰めるように、アランが愛おしそうに私の頬を撫でる。
…そろそろ私、爆発するかもしんない。
「魔王を倒した後、一度だけ神殿で神に報告する機会があるんだ」
「へぇ…そうなの?」
アランが何を言いたいのか分からず、首をかしげる。
しかし父様とフランツさんはピンときたようで、ハッとした顔をしている。…察しが悪くてごめん。
「そうか!その時神に直談判すればいいのだな!」
「あ…!」
「その通りです」
なるほど。私の力では呪いを抑えることはできても無くすことはできない。だが、呪いをかけた本人なら?しかもかけたのはこの世界を造った神。出来ないはずはない。だけど…
「そうなったら導者がいなくなってしまうわ。いなくなって魔王が倒せなくなったら…世界が破滅に追いやられてしまうのよ?」
「うん。だから呪いを消すことが無理なら、俺もドラゴンにしてもらうっていうのはどうだろう?」
「「「は?」」」
この回答は父様とフランツさんも予想外だったらしく、口をあんぐりさせてアランを見ている。
「待って待って!そんなことしたらアランまで人里離れて長ぁく生きなきゃいけなくなるのよ!?」
「いいじゃないか。ひとりで長生きするわけじゃないんだし。愛する者と長く生きられたら幸せだろう?」
「あ……愛…………!?」
やだ、愛する者って…もしかしてもしかしなくても私のこと!?
ヤバイヤバイヤバイ!これはヤバイよ!
燃えちゃうんじゃないかってくらい熱い顔で、只々アランを見つめることしかできない。
アランが私の手を取り、跪く。これは…もしかして………!?
「イリーネ、愛してる。俺とずっと……うぐっ!」
「アラン!?」
「聞いてれば調子に乗って…このクソ勇者が!」
「はいはーい、さすがにここまでな?まだ娘はやらんぞ。今日、会ったばかりなんだ。まだまだ父様の可愛いイリーネでいてくれないと!」
たぶん人生において物凄く大事であったであろうシーンを執事と父親に邪魔されました。でもおかげでほんの少しだけど冷静になれたわ。…ほんの少しだけど!!
だってだって!好きな人が私を…あ、あ、あ、あ、愛してるって………!!
ふぁぁぁぁ!!
うん、全然冷静じゃなかった!!
私なんかのどこを好きになったのだろう?まだまだ冷静になれない私はうっかり疑問に思ったことを口に出していたらしく、アランにジト目で睨まれた。
「私なんかだなんて言うな。イリーネは最高に可愛い。見た目や仕草ももちろんそうだが、性格も好きだ。一緒にいてこんなに癒やされるのはイリーネが初めてなんだ。でも…たまに狂おしい程触りたくなるんだ…」
そ…そんな熱っぽい目で見ないで!!照れちゃうから!!本当にそういうの慣れてないから!!恥ずかしくて恥ずかしくて、私は顔を赤くして俯いてしまう。
…本当に望んでいいのだろうか?
確実に彼が生きている間に家族や現在の友人は全員死んでしまう。いろいろなものを奪って、彼を縛り付けていいのだろうか…?
それに彼は追々勇者として称賛され、もてはやされるべき存在となる。言わばこの国の宝だ。そんな彼を世間から森の奥へ連れ去ってしまっていいのだろうか?
アランも後で…後悔するんじゃないだろうか?
ううん、やっぱりダメよ。
「………アランの気持ちには応えられないわ」
「………理由を聞いても?」
「それは…………」
答えに窮してしまう。だって…本当は嬉しかったから。涙が出そうなくらい、嬉しかったから…。
ひとり寂しく生きると思ってた。なのに彼は私に生涯寄り添うと言ってくれた。好きな人にそんなこと言われて嬉しくない訳がないじゃない。
「答えられないなら受け入れられないな。」
「そんな…!」
「俺は本気だよ」
「っ!」
アランの真っ直ぐな目にたじろぐ。
どうしたらいいの?今度は違う意味で泣きそうだ。
「でも私は…あなたを番には選ばないわ」
「……………」
思ってもいないことを口にするのはとても心が重い。言いたくないと体が拒絶する。
でも、これでいいの。アランのその気持ちだけで生きていける。たくさんを望んではダメよね…。
「まだ魔王討伐まで時間はある。ゆっくりアピールさせてもらうよ」
アランが切なそうに微笑み、私の頬に触れ…るか触れないかのところで横から手をはたかれる。
驚きそちらを振り向けば、フランツさんがニコニコしながらアランを見ている…が、額に見える浮き上がった青筋が怖い。本当にアランとフランツさんはケンカが多い。
「イリーネの番に誰がなるかはひとまず置いておいて、まずは魔王討伐でしょう。討伐メンバーも揃いましたし、やっとここがスタートです」
いよいよ…戦いが始まる。




