不気味に嗤う
アガリアレプトの雰囲気が一気に変わり、アランとフランツさんも即座に武器を構え戦闘態勢に入る。
「光の加護を」
私はふたり全体に加護をかける。
これでちょっとは防御力が上がったはずだ。
あと、武器の攻撃力も。
魔族に普通の攻撃は効かない。
魔族が闇の塊で、実体が無いからだ。
そして闇に対して一番有効なのは対になる光だ。
だからふたり自身と併せて武器にも加護がかかるよう、全体にかけたのだ。
いや、それぞれ防御力と攻撃力を上げる魔法をかけた方が良かったんだけど…フランツさんの武器は見えないところにもありそうだったから…。
というのも、アランの武器はもちろん聖剣だってのは分かるんだけど、フランツさんの武器は…『暗器』だって話じゃない?
あのステッキだけなわけないじゃない!?
しかし燕尾服にステッキが武器とか超格好いいんですけど…。
あのステッキもただのステッキじゃないんだろうなぁ。
光の加護をかけたことにより、一瞬だけふたりのまわりをキラキラとした光が舞う。
ふたりとも目を丸くしていたけど、すぐにニッと笑いかけてくれた。
「力が漲ってくる…。ありがとう」
「助かります」
イケメンふたりが笑いかけてくれた。
…こんな時になんだけど、ものすごくなんなんだけど、ヤバい。カッコいい。
しかし魔法に反応したのはかけられたふたりだけではなかった。
「面白い力だネ。光の魔法が使えるだけでも珍しいのに、随分と使いこなしてるナァ。聖剣とも相性バッチリってカ」
「俺とイリーネの仲だからな!」
「ふぇっ!?」
「おい、クソ勇者。今はそんなこと言ってる場合か」
「黙れエセ執事」
えぇ…この状況でケンカ始めるのぉ!?
アランも私を動揺させないで!!
あ、もしかして緊張を解してくれたのかな?
でも動揺する!!
「本当に君たちは面白いネ。でも…今はもっと楽しいコト、シヨウ!」
言い終わるが早いか、アガリアレプトがもの凄い速さで襲いかかる。
というか、瞬間移動してない!?ってくらい速い!
キィン!!
アランが咄嗟に受け止める。さすが!!
相手の武器はいつどこから出したのか、とてつもなく大きな刀だった。
あれは受けたら重そうだ。
「さすが勇者ダネ」
ニタリとアガリアレプトが笑う。
ギリギリと均衡する力。
アランは少し苦しそうだが、アガリアレブトは余裕そうだ。
「はっ!」
横からフランツさんが斬りかかる。
ステッキと思っていたそれは仕込み刀だった。
軽い身のこなしでアガリアレプトとの間合いを詰めるも、アランに襲いかかっているのとは逆の手で闇の盾のようなものを即座に出し、簡単に受け止められてしまう。
強い…!!
「光よ!捉えよ!」
まずは…動きを、封じる!!
光がアガリアレプトの周りで渦を巻き、一瞬にしてロープのように捉える。
(いける!!)
瞬時にアランとフランツさんが好機を逃がすものかと斬りかかる。
「まだまだダネ」
「!?」
こんな状況なのにアガリアレプトは…笑った。
そしてグニャリと液体のように闇の塊へと変化し、光のロープから逃れたのだ。
アランとフランツさんの剣がむなしく空を切る音を立てる。
「ふっ!」
しかし即座に体制を立て直し、フランツさんがくないのような暗器を放つ。
「おっとっと」
人の形に戻ろうとしているその塊にズプリと暗器が刺さった。
光の加護を受けた暗器だ。少しは効いているハズ!
「油断した。…痛いじゃないカ」
「効いてない…だと!?」
アガリアレプトはすっかり人の形に戻っていて、腹に刺さった暗器を自らの手でズルリと抜いた。
光の加護が効かないって…どうしろって言うのよ!?
「いや、効いてるヨ。痛いって言ってるダロ。あと、チョットだけイラッとした」
…ヤバい、その目にちょっと怒りの炎が見える!
怖すぎる!!
でも光の加護がある程度有効ってことは分かった。
「はぁーーーーっ!!!」
アランが全力で斬りかかる。
援護だ!!
「光よ!力となれ!!」
聖剣を振り上げた瞬間、加護をかける。
今度は力に特化した魔法。
さっきよりも効くはず…!!
「負けないヨ!」
アガリアレプトが刀で受け止める。
瞬間、光が迸る。
ガキィン!!
刀が折れる音がする。
しかし光で前が見えない。
どっち…どっちなの!?
「!!」
光が消えたとき…そこには刀を振り下ろすアランと、刀が折れ、右腕の二の腕から先が無くなっているアガリアレブトの姿があった。
「なかなかやるネ…。やっぱり光の魔法は邪魔ダナ」
ゆらりとアガリアレプトが揺れた…と、思った瞬間。
「!!?」
「イリーネ!!!」
「なっ…!」
アランとフランツさんの焦った声が聞こえる。
一瞬、何が起きたのか分からなかった。
さっきまでアランの目の前にいたアガリアレプトが、私の目の前…目と鼻の先に来て笑っている。
「先ずは君を始末してしまおうネ」
「!」
そこで、やっと気付く。
アガリアレプトの切られていない左手の先が、無い。
いや、無いのではない。
私の腹に、アガリアレプトの左手が刺さっていたのだ。
なかなか話が進まなくてごめんなさいね…。




