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白銀の転生竜は勇者と距離を置きたい  作者: まなま


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禍々しい



綺麗なところね…。

街の外れは自然豊かで、これから行く街道の両側には草花が生い茂っている。


「しつこい。帰れ。魔王討伐に執事は必要ない」

「イリーネは私の命の恩人。私が仕えているのはイリーネだけ。私はイリーネの言うことしか聞けません」


あぁ…のどかだな…。

あの花は見たことがあるわ。

前世で見た…マーガレット…だったかな?確かあれに似てるわ。

ぼやっとしか覚えてないけど。


「だいたいあなたはなんなんです?勇者だからってイリーネに…導者に近すぎでは?」

「そりゃ俺とイリーネの仲だからな。同衾する仲だからな。お前の入り込む余地はない」


あら?向こうに見えるのは見たことがない鳥だわ。

可愛い…。

うふふ、カップルかしら?仲が良さそうね。

あ…飛んできた………って、近づいたらデカい。思ってたよりデカい。

しかも戦ってた。仲良くなかった。


「んなっ!…では、その役目は本日より私めが引き受けましょう。なんせ従者ですから、主人に奉仕する役目がございます」

「ほ…奉仕!?こんな主張の激しいやつが従者なわけあるか。そもそもお前はついてくるなって言ってるだろう」


あら、蝶々だわ!

紫でキラキラしてて…キレイねぇ…。

あ…あれ?羽を広げたら内側が目玉柄。

しかも内側は茶色くて…なんだか地味ね。

よくあるガッカリパターンか…。


「…お前、気に食わないな。やはり実力で白黒はっきりさせようじゃないか」

「おや?やりますか?勇者が一介の執事に喧嘩を売るんですか?上等です。受けて立ちましょう」

「…………ちょっとちょっと!白黒つけない!!受けて立たない!!」


そして私を無視しないで!!寂しかったわ!!

ていうか一体何の話なのよ!?

同衾!?私は誰か一緒に寝てほしくて魔王討伐に出るわけでも、従属させた訳でもないなよ!?

ひとりで寝れるよ!


「フランツさん、お気持ちは嬉しいですが…やはり連れてはいけません。魔王討伐には危険がつきものですから…」

「闇魔法がない私は足手まといだと?」

「………言い方が悪いですが…まぁ、そうです。無駄な危険は冒さないほうがいいですから」


闇魔法が使えないフランツさんは戦えないし、身を守ることもできない。

フランツさんを守りながら戦うのも負担が大きい。

ならばフランツさんとはここでお別れしたほうがいいだろう。

こういうことは遠回しに言うより、ハッキリと言ったほうがいい。

…だからってアラン、全力で頷かないでちょうだい。そして顔が悪い笑顔になってるわ。勇者っぽくないわ!!


「それなら問題ありません。私は闇魔法以外にも火の魔法が使えるんです。それに暗器も。なかなか手練なんですよ?」

「あ、暗器…」


ブランデル家、フランツさんに何を仕込んでんのよ!

そして何をやらせてたのよ!

人を殺人の道具みたいにして…。ホント、腹が立つ!!

フランツさんはあそこを出て本当に良かったと思う。これからは真っ当な人生を歩んでほしい。

でも…戦力になるのなら魔王討伐には付いてきてもらった方がいいのかしら?

戦力は多い方がいいものね。

魔法が使える人も滅多に居ないって言うし…。


「私はいいと思うのだけど…魔王討伐のリーダーはあくまでも勇者であるアランだから私には決められな…」

「よし、置いていこう」

「てめぇ…………」


喰い気味に即答するアラン。

フランツさんの声が地を這うように低い。

犬猿の仲って、こういうのを言うのね…。



「楽しそうだネ。僕も混ぜてヨ」



場違いな明るい声が響く。

振り向くとそこには驚く程綺麗で…気味の悪い青年が立っていた。


赤い口は弧を描いてはいるが、目は全く笑っていない。

黒く艶のある髪は長くて真っ直ぐで。

なのに肌は驚くほど白いので浮き上がって見える。

そして何よりも印象的なのは…その瞳。

赤い瞳はぬらぬらと光っており、底しれぬ不安を掻き立てる。


「アガリアレプト…!」

「!!」


こいつが、アガリアレプト…。

フランツさんが言った切り、固まる。

それはそうだ。


アガリアレプト。


高位魔族で、魔王に近い存在。

…そしてさっきまでフランツさんと契約していた魔族。

目的は、何?


「コンニチハ。僕の欠片を追い出した、光の娘を見に来たヨ」


ニタリと笑って私を見た。

恐ろしく整った顔が、歪に歪む。

蛇に睨まれた蛙みたいに足がすくみ、声を出せずにいると…スッと視線をふたつの影が遮った。


「見るな。減る」

「十分見たでしょう?帰ってくれませんかねぇ」


アランとフランツさんが私とアガリアレプトの間に入ってくれたのだ。

私は知らず知らず詰めていた息を大きく吐いた。

ふたりが心配そうにちらりと振り返る。


大丈夫。私はひとりじゃないんだから。


私は自分の両頬をパンッと叩く。そして、ニッと笑った。

怯んでなんかいられないわ!

だって私たちの敵は魔王だもの。

アガリアレプトの格上だもの。

格下にこんなんでどうするの!イリーネ!


「アガリアレプト」


私は精一杯去勢を貼る。

女は度胸よ!!


「あなたは私たちの敵?」


アガリアレプトがキョトンとした。

上位魔族がキョトンと…。

あんなに怖かったのに…ちょっと可愛いと思ってしまったじゃないか。


「…それはどういう意味サ?」

「そのままよ。まぁ、フランツさんの中の欠片?は、追い出しちゃったけど…私がやったのってそれくらいだし。見逃してくれないかなーって思って」

「イリーネ…」

「それは、さすがに…」


あ、やっぱりダメ?


「あっははははは!」


ビクッとした!ビクッとしたよ!!

もちろん、私だけじゃなくてアランとフランツさんもね!?


アガリアレプトが…笑っている。

さっきまで放っていた禍々しさは霧散し、少年のように笑っているのだ。


今度は私とアランとフランツさんがキョトンとする番だ。


「そんなわけにいかないだろう?だって僕は魔族ダ。勇者や導者、裏切り者を排除するのは魔王の意思だしネ」

「…あなたの意思は?」

「僕の…意思?そんなの無いヨ。僕は魔王のもの。魔王の意思が僕の意思だヨ」

「そんなのおかしいわ。だってあなたにはあなたの心があるのに」

「僕の………心?」


アガリアレプトが首を傾げる。

え、何かおかしいこと言ったかしら?

つい、私も首を傾げてしまう。


「うーん、ちょっとよく分からないナ。とりあえず今は楽しませてヨ。そのために来たんダカラ」


アガリアレプトが微笑む。

…やっぱり見逃してはくれなかったかぁ〜。




ブクマめちゃめちゃ嬉しいです!

感謝の舞を舞いまする!!

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