アマーリア・ブランデル
「突然失礼致しました。わたくし、この辺り一帯を納めるブランデル辺境伯家の長女、アマーリアですわ」
お姫様改めアマーリア様はにこやかに、優雅で完璧な淑女のお辞儀をした。
アマーリア様は見事な金髪の縦巻ロール。
少し吊り目ではあるがパッチリとした碧眼で肌は白くて美しい。
整った顔立ちだが…少し化粧は濃いめだ。もったいない。
しかしこんな見事な縦巻きロール、初めて見たわ!
「…ヴィーゼル男爵家が次男、アラン・ヴィーゼルです」
アランも紳士らしいお辞儀をする。
…無表情で。
モテる男はツラいわねぇ。
「存じておりますわ。今日、たまたまこちらに来ておりましたら聖剣を帯剣しておられる方が目に入りましたのでお声掛け致しましたの」
「………そうでしたか」
お声掛けっていうか…待ち伏せだよね!?
本当にたまたまなのかしら…。
だってこんな見事な縦巻きロールのお姫様が、差している剣が聖剣だって分かるくらい近くにいたら気付くと思うんだけど…。
ブランデル家に媚びを売る人間がアマーリア様に報告したとかかな?
アマーリア様の方が身分がかなり上だからか、アランも丁寧に対応している。
ただ、無表情だけどね!ものすごく無表情だけどね!?
「これも何かのご縁ですから、もしよろしければ我が家にてお食事を…」
「お誘いありがとうございます。ただ何分急いでいる身でして。大変申し訳ありません。」
綺麗なお辞儀はしているが…アラン、口調が淡々とし過ぎてて全然申し訳なさそうじゃないわ!
しかも最後、会話を被せてきたわね!?
ほら、アマーリア様の目元がピクピクしてるぅ…。
「男爵家の次男ごときが断るだなんて…わたくしの誘いよりも優先すべきことがあるのかしら」
急に表情が消え、態度が高圧的なものに変わる。
ひ…ひぇぇ…。
「私は魔王討伐を最優先に王に命じられておりますので」
「っ!…でもあなた聖なる導者を連れてないじゃない。いないと魔王討伐できないんでしょう?なら一晩うちに泊まっても変わらないのではございませんこと?それに明日領地の端までうちの馬車で送って行って差し上げますわ」
王命って言ってるのにめげない…!
そして食事から宿泊に変わっている!
アマーリア様強し!
ていうかこの世界で会った女性たちが強すぎる…。
母様、花街のお姉さんたち、アマーリア様…。
この世界の女性って強いのがスタンダードなのかしら…?
でも、聖なる導者ならいるんだよねぇ…まさかのバッグの中に。
これでドラゴンでなかったら出ていかれたのに…。
なんだかアランに申し訳なくなる。
「聖なる導者なら既に仲間になっておりますのでご心配なく。それより私は早く仲間と合流しなければならないので…」
「言っている意味が分かりませんの?…わたくしはお願いをしているのではなくってよ?」
「!」
「アラン様はヴィーゼル…男爵家の方でしたかしら?…わたくしのお願い、聞いて下さるわよね?」
「…………………謹んで、お受け致します」
うわぁ、権力を笠に来て…何が望みなんだろう?
てっきりアランとお近付きになりたいのかと思ったけど…こんなんじゃ嫌われちゃうよね?
そんなことをつらつらと考えていると…アランがぽんぽんとバッグの外から優しく叩いてきた。
「ごめんね」ってとこかしら?
気にしなくていいのに。
…うん、何かあれば私が守ってあげるからね!
そんな気持ちを込めて尻尾で内側からぽんぽんと叩く。
「さぁ、参りましょうか」
にこやかに馬車へと誘う。
なんだか波乱の予感がします…!!




