追い付かない…
旅行に行ってました!
週末なのに更新ができず…今頃になってしまいました。
明日も投稿できるといいな…。
できましたら読んでください~!
「あぁ…勇者ご一行かぁ。それならきのうだったか?街を出たよ」
「きのうですか!」
聞き込みを始めてすぐに八百屋のおじさんから有力な情報を得る。
王都までは10日くらいかかる。
きのう出たばかりなのなら急げば王都に着く前に追い付けるんじゃない!?
ちなみに今、私はバッグの中に潜んで聞き耳を立てている。
「いやぁ、誰かの葬式かってくらい暗かったなぁ」
「………」
うん、他の仲間はたぶんアランが死んでると思ってるから…間違いじゃないね。
でも勇者が死んだなんて言えば混乱が起きるから秘密にしてるんだろうなぁ…。
バッグの隙間からアランを盗み見る。
…ものすごく眉尻が下がっている。
おじさんと別れてアランとこれからについて話す。
ちなみにアランはバッグに向かって話しかけているから…端から見ればちょっとヤバいヤツだ。
でもイケメン補正で不審者に見えない。
イケメンてズルい。
「これは急いで追い付かないと…」
「そうだね。きっとみんな悲しみのどん底だろうからね…。アランが死んでしまって勇者不在。聖剣も勇者の死体と共に行方不明で魔王討伐も絶望的。王都に戻っても王様から怒られる予感しかしない…けど行かないと家族に迷惑がかかる。…うん、どん底だ」
「お願い、イリーネ…これ以上言わないでくれ」
いかんいかん…アランが涙目だわ。
でも悲しみのどん底にいるのは…仲間全員ではないかもしれないが。
思い過ごしならそれでいい。
アランが傷つかないなら…それがいい。
「…そうと決まればすぐに出よう」
「そうね。急ぎましょう」
*********
すぐに追い付くんじゃないかなーって楽観視してた時期がありました。
「全然追い付かないね…」
「そうだな…」
暗くなり始めた頃、隣の隣の街に着いた。
そして聞き込みをしたところ…パーティーのメンバーは今朝、ここを出たらしい。
まるっと1日のズレ!!
そりゃそうだよね~。
急いだって宿がある街の数は限られてるんだもん。
結局街に早い時間に着くか遅い時間に着くかの違いになっちゃうよね~。
「これは走らないと追い付かないな…」
「…そんな無茶な」
「夜、進むわけにもいかないしな…」
夜は魔物が強くなるのだ。
逆に光は魔物を鈍らせる。
だから森にはよく魔物が出るが街中には出ない。
だが最近、魔物が増えてきてからは夜に街の中まで魔物が入ってきてしまうことがあるらしい。
それを防ぐために光の魔法を街の外側に張り巡らすことが多いのだが…魔導師がいない街ではそうもいかない。
代わりに街の周りに松明などを燃やし、侵入を防いでいるのだ。
それはともかく。
…よし。私が力になろうじゃないか!
********
「ア"ァァーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
『ア"ァァーーーーーーーーーーーっ!!!!』
『ア"ァァーーーーーーーーーーっ!!!!』
アランの悲鳴が木霊する。
ていうか山びこする。
すごーい。綺麗な山びこだわぁ。
のどかで平和な風景だわぁ。
あ。あれは鹿かな?
わぁ~、可愛いわぁ~。
…………って。
「アラン!暴れないで!!落としちゃうから!!」
「なに!?落とす!?落とすのか!?」
「落とさないわよ!!大丈夫だから!!だから落ち着いて!!」
バサッバサッバサッ
今私はアランを運んでいる…翼で。
だって飛んだ方が早いんだもの。
私は小さいけどドラゴン。
力は人一倍強いのだ。
でも小さいから背中に乗せてあげることはできず…アランは私の後ろ足を掴んでぶら下がって運ばれている。
さすがは勇者。握力もスゴいわ!!
「イリーネ!隣の街が見えてきた!き…休憩しよう!」
「え、もう?もう少し先に行ける…」
「お願いだ!!地面に足を降ろさせてくれ!!!!」
最後は悲痛な叫びに変わっている。
休憩って…アランの休憩か。納得。
街に入ってしまうと注目されてしまうので、少し手前で降ろす。
降りた瞬間、アランがくずおれた。
「だ、大丈夫!?」
「…全然大丈夫じゃない…。己の腕力だけで…しかもぶらんぶらんぶら下がったままであんな高いところを飛んだんだ…俺は…俺はよくやった!!」
両肘両膝を地面に着け、俯いたままで叫んでいる。
相当辛かったんだね…なんかごめん。
「たぶんもっと先に行ってると思うけど…とりあえず聞き込みかしら?」
「お願いだ…みんなここにいてくれ!もうこれ以上空の旅はごめんだ…!」
………なんかごめん。
******
うん、やっぱいなかったねー。
いないのは分かってたんだけど…この状況は予想してなかったなぁ。
「ねぇ、お兄さん!安くするからこっち寄ってって!」
「お兄さん!こっちにしなよ!サービスするからぁ」
「お兄さん、お願い!もうこの際タダでいいから…一晩だけでも夢を見させてぇ~!」
(アランてばモテモテね~。)
街に入ってすぐに仲間たちが既に通過した後だって聞いたから出発しようとしたんだけど…この街の奥が色街になっていることに気付かず入り込んでしまい…今の状況だ。
バッグの隙間から艶のある声の主たちを盗み見る。
指も入らないんじゃないかってくらいキッツキツの胸の谷間とさくらんぼが見えちゃうんじゃないかってくらい膨らみが豪快に見えるドレスに、化粧も艶っぽいお姉さん方が熱心に秋波を送っている。
…うわ、鼻血出そう。
確かに森の外に出ていろんな人を見るようになったけどアラン程のイケメン、見たことないもんねー。
さすがは稀に見るイケメン…。
……なんだろう。ちょっとモヤモヤする。
アランは…やっぱり満更でもないのかしら。
チラリとアランの表情を盗み見る。
「……………………チッ」
って怖!!無表情怖っ!!!!
絶対零度の対応!
しかも小さく舌打ちしたね!?
ていうかこの無表情に対してお姉さんたちよくあんなにアプローチできてたね!?
「客じゃない。街を出たいんであってここには迷って入ってしまっただけだ。すまないが他を当たってくれ」
「そんなこと言わずに~」
「ね?ちょっと休憩してこ?」
お姉さんたちスゴいな!!
私だったら心折れてる!
そうか…色街で働くには鋼のメンタルでなきゃダメなんだな…。
勉強になります。(…なんのだよ!)
「……………………」
あぁ!いよいよ眉間に皺が!
よ…よし。ここは私が力になりましょう。
…助けるのが目的であって、私がこの無表情に耐えられないからではない。…うん。
私は小声で詠唱する。
「風よ、空へ舞い上がれ」
「「「きゃぁ!」」」
足元から空へと上昇気流が発生し、お姉さんたちのスカートが舞い上がる。
「!…失礼する」
アランはスカートを押さえるのに必死なお姉さんたちをすり抜け、街の出口へと急ぐ。
お姉さんたちごめんね!
でも強引な客引きはダメなんだよ!
「ありがとう。助けてくれたんだろう?」
「…気付いちゃった?」
「あんな風はありえないからな」
さっきの無表情は鳴りを潜め、今は困ったように笑っている。
…うん、いつものアランだ。
「自分で言うのも本当になんなんだが…人間の中では顔が割と良い方で…」
割といい方とかじゃなく、ものすごくいい方でしょう!
私、元々人間なんだから分かるのよ!
誤魔化されないわよ!
「だから異性にしつこく絡まれることがあるんだ。正直さっきも助かった」
「役に立ったのなら良かった。モテすぎるのも考えものね」
「…いいことなんて何もないよ」
モテない人が聞いてたら「嫌みか!」って言われそうだけど…なんだろう、闇を感じる…。
アラン…苦労してるのね…。
そんな話をしながら街を出ると…出てすぐのところに景色とは不釣り合いな豪奢な馬車が止まっている。
…なんだろう、嫌な予感しかしない。
アランもそう思ったのか、足早に…むしろ走る一歩手前くらいの早さで横を通りすぎ…ようとした…が。
ガチャリ。
「そこの方、もしや勇者のアラン=ヴィーゼル様では?」
馬車から降りてきたのは…金髪縦巻きロールのお姫様だった。




