side イリス 3
「イリス!今日の攻撃は最高のタイミングだったな!」
「うむ。あれは素晴らしかった!危ういところを助けてくれて感謝する!」
「…それはどうも」
「イリスさん…その…あの魔法は何魔法ですか?風魔法かと思ったら雷まで…どういう応用ですか?」
「ちょっとテオドール!それ俺の酒!!」
今日も大量の魔物と戦い、酒場で晩御飯という名の祝杯を上げていたときのこと。
…え、どうしてこうなった??
「…ちょっと!あなたたち、私に馴染みすぎよ!!」
「「「「…は?」」」」
「…え、なんできょとん顔!?私って人知を外れた力を持ったドラゴンよ!?そして人間が嫌いだって宣言した筈なんだけど!?」
「いやだってお前、なんだかんだ言って俺らのこと助けてくれるし」
「優しいしー?」
「ま…魔法も素晴らしいですし…」
「好きになっちゃったんですもの!!」
「………」
「ほら、そうやって赤くなるところも可愛い!」
酔っ払ったヴィルマが抱き付いてくる。
…どうしてこうなった。
そして私も…この雰囲気を心地よく感じ始めている。
素直に認めることはできないけど。
「ツンデレね」
「ツンデレだな」
「違うわ!」
みんなの笑顔を見ていると…心が暖かくなる。
これが…仲間というやつなのかしら…。
*********
魔王討伐はかなり苦戦したわ。
みんな怪我もしたし死にそうにもなったけど、私の血ですぐに回復して澄んだ青空を見て…みんなで笑い合って。
あぁ、なんて清々しいんだろう。
私は拒否したけどみんながどうしてもって言うから王都まで一緒に行ったの。
それであれよあれよと王に謁見することになって…それは起こったのよ。
「捕らえよ!やつの肉を食せば不老不死だ!」
「な…何をするんです!?」
「彼女は魔王討伐の貢献者です!」
私がドラゴンだと分かるや否や、私を捕らえようとする王。
勇者たちは私を守ろうとしてくれたけど…ダメよ。
私を助ければ反逆者と見なされてしまう。
そしてここで私が暴れれば私を引き入れた勇者たちが罰せられるかもしれない。
私は勇者たちを手で制し、衛兵たちに連れられ牢へ向かうのだった。
*********
「入れ。魔封じの手枷をする」
素直に牢屋に入れられ、魔封じの手枷をさせられる寸前。
体を回し、勢いをつけた蹴りを衛兵のおなかにお見舞いする。
「ぐぁっ!」
「…!くそっ!暴れるな!!」
もう一人の衛兵が剣に手を伸ばすが…遅い。
私の頭突きが顎にヒットする。
「さてと」
周りがなんだかうるさいけれど…そろそろいいでしょう。
私は大きなドラゴンに変化する。
もちろん牢はドラゴンの私が入るほど大きくないので…必然的に私の体は牢を中から押し破り、ガラガラと建物の一部が崩れる。
「ド…ドラゴンだ!!」
誰かが叫んでいるが…バカなやつだ。
最初から分かっていたでしょう。
私は人間になど御せる生き物ではないということを。
「イリス…!待ってくれ!イリス!!」
「待ってイリス!本当に…本当にごめんなさい!!」
勇者たちが駆け寄ってくる。
謝ることなんてないのに…。
「相変わらずのバカね」
恨んでなんてない…この気持ちが伝わりますように。
私は仲間たちをしばし見つめ…踵を返すと大きく羽ばたいてその場を去ったのだった。
*********
「あれから3ヶ月か…」
洞窟の暮らしは以前と何も変わらない。
変わらないはずなのに…何かが前とは明らかに違う。
ひとりしんみりとした気持ちに浸っていると…
「イリス!寂しかったかー?」
「洞窟なのに相変わらず快適ね~」
「元気だったか!?会いたかったよ!」
「ど…どうも。お久しぶりです」
「んな!!?」
私はあんぐりと口を開けたまま固まってしまった。
「あはは!イリス!面白い顔してるぞ!」
「…!もしかして、あなたたち…私のせいで何かお咎めが…!?」
もしや、私が起こした騒ぎの責任をとらされて…?
「いや、責任は全部イリスに押し付けたから大丈夫だ!」
「…望んだ結果のはずなのに素直に喜べない!!」
あぁ…でも。
この笑顔を見られて良かった…。
「全員何事もなかったのね?」
「あぁ、もちろんだ」
「ふふっ。やっぱりイリスは優しい」
「…やっぱり人間は苦手よ。でも…でも…」
顔を上げて微笑む。
「あなたたちはすでに人間じみてないものね!」
「えっ!そこ!?」
みんなで笑い合う。
あぁ…人間も捨てたものではないわね。
そう、思っていたのだけど…。




