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元令嬢様の華麗なる戦闘記  作者: 夢猫


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譲歩の先

「あの、」


「あー?」


 テドラは話し合いが終わった後、未だその場に残り雑談していたアルハルトとキハト達へと話しかけた。


「シルティーナ様は何故、自身に起こる出来事が分かっていながら僕達に何も話さなかったのですか?」


「……お前なら話すのか?」


「え?」


「実は私、皆さんに裏切られて処刑か国外追放になる運命なんですって? 異世界から来た少女に嵌められて全て失うんですってか? お前、それ言われて信じるか?」


「それは……」


「俺なら信じない。こいつ頭可笑しいんじゃないかって医者に診せるね」


「……」


「情報ってのはな、手に入れたからって何でもかんでも人に話せばいいってもんでもない」


「黙っているのが得策な時もあるのですよ」


「シルティーナさんが君達に何も話さなかったのは、話すべきではないって判断したからじゃないかな? その代わり、君達を信じる事にしたんだよ、きっと」


「まぁ、信じた結果裏切られたんだけどナ」


「……」


 押し黙ったテドラに顔を見合わせた面々は肩を竦める。


「あぁ、そうそう、お前の父親だけは全て知ってたんだぜ」


「え?」


「それでもお前等には何も話さなかった。何故だろうな?」


「……」


 眉間に皺を寄せ考え込んだテドラにアルハルトが苦笑する。


「別に深く考える必要なんざないさ。俺達の考えはあくまでも俺達のモノで、俺達の主観での結論だ。お前が納得出来ないのも、理解出来ないのも仕方ないのさ。見る立場が変われば出す結論も変わる。片方にとって正義でも、もう片方にとっちゃ悪になるのなんざ当然の摂理だ。だがな、お前はもう()()()()だ。見る立場は俺達と同じになる。出す結論が違おうが、俺達の考えに従って貰う事になる。それは理解しろ」


 冷たく、突き放すような声音であった。

 テドラはただ静かにそれを聞き入れるしかなかった。


ーーー


「結構厳しい言い方をしていましたが、彼なりにあなたの事を思っての言葉なんですよ」


「へ?」


 アルハルトが去った後、キハトがそう声をかけて来た。


「私達も双翼の剣(ギルド)の方達と合流したのはつい最近なのであまり偉そうな事は言えませんが、彼等は常に"仲間の為"にその力を使います。特に今回の"計画"はそれが如実です」


「まぁ、双翼の剣(ギルド)の人達は色々と訳アリばかりって聞いたからナ。それも関係してるんだろうが、だからこそ仲間内の結束は固い。お前の様な奴は"こちら側の人間"にはなっても"味方"にはなれない。"仲間"になんざ絶対に無理なんダヨ」


「それでも、一度はシルティーナさんを傷付けた君が"こちら側の人間"にして貰えるだけでも彼等にとっては十分な譲歩なんだよ。そして、キハトが言ったようにアルハルトさんも君に気を使ってくれている」


「あの、その気を使われてると言うのは……?」


「お前、そんな事も分かってなかったのかヨ……?」


「……」


 言葉を詰まらせるテドラにキハトが仕方ないと言った風に説明を始める。


「アルハルト様が言った様に、貴方の父親は二年よりも前から全てを知っていました。実際、ファミラス様やハイン様とも交流があったそうなので、その関係は貴方が思っているよりも長いモノでしょう。なので、貴方の父親は彼等の"味方"と認められています。二年前、処刑されてもおかしくなかったシルティーナ様が国外追放になったのも貴方の父親……ガルド様の助力があったからの様です。そして、その国外追放も"計画"の過程でした。つまり、ガルド様は貴方や貴方のお兄様と違い、本当の意味でシルティーナ様を裏切ってはいないのです」


 知らされる事実にテドラは驚きを隠せない。


「で、ここからがさっきの話に繋がってくるんだけどナ、お前やお前の兄はそこで情けをかけられた。ガルドさんが頼んだのか、元々そういうつもりだったのかは分からネェが、選択肢を与えられた。そしてお前等は"こちら側の人間"になる事を選んだ訳ダ」


「もしかして、兄も……?」


「ジルドさんはマンリーニャの野営地に居るよ。バルラトナ公爵家の私兵隊の人達と一緒に。君と同じさ。彼も選んだんだよ」


「けれどあなた達がいくら"こちら側の人間"になろうがシルティーナ様を一度裏切り傷付けた事に変わりはないのです」


「それをどれだけ悔み後悔してもその事実は消せないし、双翼の剣(彼等)は決してその事を忘れないし許さない」


「……っ、」


「だからこそのさっきのアルハルトさんの言葉さ」


「出す結論が違っても俺達の考えに従って貰うっていう?」


「そう、それ。あれはつまり、『下手に双翼の剣(ギルド)の考えに盾ついて問題を起こさない様に』って意味なんだよ。君達の様にとても微妙な立場の人がギルドの総意に異を唱えたら、それこそ彼等に君達を消してもいい理由を与える事になりかねない。アルハルトさんはそれを事前に防ぐ為に君に助言したんだよ」


「まァ、こまで伝わってないとは思ってなかっただろうがナ」


「……僕の為?」


「誰の為かは分かりませんがね」


「君やジルドさんは、彼等の最大の譲歩の上に生かされているんだよ。それは忘れないでね」


 サーシュラの言葉に頷いたテドラ。

 そんな彼にキハトとルナードは満足気に頷くのだった。

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