合流
数日後、フユネに辿り着いたキハト達はそこで待ち構えていた騎士達へ移動するよう命を出していた。
「しかし、我々は国王様より厳命を受けております」
「その国王様から私達に更に命が下ったのです。此処は我等が受け持つので、あなた方はラカヤンへ向かい、ルラン王国を迎え撃つ準備をして下さい。いいですね?」
「はっ!!」
綺麗な礼をした騎士達が去って行くのを確認したキハトがクラリナから預かった魔法陣を取り出しシルティーナへと連絡を取る。
そしてそれから数日後、フユネに辿り着いたシルティーナ達と合流するのだった。
「聖女様ご一行ですね」
「え、誰ですか?」
フユネの様子見に出かけて行ったシルティーナが三人の男を引き連れて戻って来た。
その三人の内、黒髪黒目の眼鏡の男がアカリへと話しかける。
「彼等は騎士団の人間だそうですよ」
「騎士団?」
「初めまして、聖女様。王国騎士団所属のキハトと申します。こっちの二人は、」
「ルナードだ。ヨロシク」
濃い灰色の短髪に群青色の瞳を持った、筋骨隆々な男がひらりと手を振る。
「僕はサーシュラ。よろしくお願いしますね」
のほほんと微笑んで言ったのは軽く癖のある金髪と深緑色の瞳を持った小柄な、一見すると女にも見間違う容貌の男であった。
「国王様からの命で我々の共をする様に仰せつかったそうです」
「本当でしたらもう少し早く合流できる筈だったのですが……こんな旅の後半になってしまい申し訳ございません」
「あ、いえ、別に……」
「と言う訳で、今から彼等も旅に同行します。お三方は後ほど少しお話し致しましょう。明日のフユネの浄化について詳しくお教えいたしますので」
「はい。分りました」
ーーー
ー
そうしてその日の夜、シルティーナにより集められたのはアカリとフラクト、マースとユトの四人を除いた面々であった。
「あ、あの、ユト様は……?」
「ユトは聖女様達のお守ですよ。まぁ、聖女様も王子様も子供ももう寝静まっているので大丈夫だとは思いますが、一応念のためにってやつです。聖女様はユトが居れば大人しいので」
「あ、そういう事なんですね。……それと、その、」
笑って言ったシルティーナにミリアーネが納得したと頷き、今度は自分の後ろに居る人物へとチラリと視線を送る。
「テドラ様も居てよろしいのですか……?」
「え?」
急に自分の名前が出されてテドラが声を上げる。
「す、すみませんっ!! あの、別にテドラ様が悪い訳じゃなくて……その、」
「あー、大丈夫ですよ。言いたい事は大体予想できますので。落ち着いて下さい」
慌てて弁解するミリアーネをテドラが苦笑しながら落ち着かせる。
「す、すみません……」
「いえ。僕もきっと同じ疑問を貴女に抱いたので」
「え? それって……」
「どうして彼(彼女)がここに居るのだろうって事ですよね、お二方?」
シルティーナの言葉に二人が同時に頷いた。
「まだお二人には話していませんでしたね。ミリアーネ様、彼は私達がやろうとしている事を理解した上でこちら側に付きました。テドラ様、ミリアーネ様は旅が始まる前よりこちらの事情をお話ししてご協力頂いています」
「「え?」」
シルティーナの言葉に二人の顔が驚愕に染まる。
「因みにもう薄々気付いてはいるでしょうが、今日合流した三人、キハトさんにルナードさんにサーシュラさんもこちら側の人です」
「それは何となく気付いていましたけど……じゃあ騎士というのは?」
「それは本当だぜ」
テドラの問いに答えたのはルナードだ。
「俺達は特務遊撃隊の人間だ。双翼の剣には所属してないけどナ」
「この件が無事に終われば僕達も双翼の剣に登録する事になっているんだよ」
「え、ちょ、ちょっと待って下さい‼」
「お、どうした次男坊?」
「あの、特務遊撃隊の人間って……終われば双翼の剣に登録するって……もしかして、特務遊撃隊の人達は皆さん……」
「えぇ、こちら側ですよ。そもそも彼等の隊長のファミラスと副隊長のハインは双翼の剣の人間なんですよ」
「ファミラス団長とハイン副団長も……でも、お二人が騎士団の団長と副団長になられたのは五年程前です。どちらが先だったのですか?」
「そりゃ勿論、こっちが先さ。二人が騎士団に入ったのは今回の〝計画〟の為なんだからな」
「それじゃあ、もうずっと前から今回の“計画”は立てられていたんですか? けど、待って下さい。だって、それって未来が分からないと……」
「“先見の魔女”ってご存知ですか?」
「はい、知っていますが……でも、彼女が出来るのは“先見”での予測ではないのですか?」
「一般的に知られているのはそうです。けれどそれは間違ってはいませんが合ってもいません」
「と言うと?」
「彼女は“未来”を視る事が出来るのですよ」
「未来を……? では、今回の事もそれで?」
「いいえ。彼女が視たのは二年前、私の身に起こった出来事までです。それ以降、特に今回の件に関しては彼女が“先見”により予測して予想して推測して憶測した結果、“計画”が立てられました」
「二年前……? じゃあ、貴女は二年前に起こった事を全て知っていたのですか⁉ 事前に知っていて、何故……」
「知っていたからと言ってそれを変えられるかと言えば、物事はそう単純なモノではないのですよ。当時の私は、自分の未来に起こり得る事を知ったと同時にそれを変える事など出来ないのだと理解しました。それでも、信じていたのですよ。私が周りの者達と培った歳月を。私が信じた人達を……けれど、私の周りの者達はそうでは無かった。私が信じた様に私を信じてはくれなかった。だから二年前の出来事は起こってしまった」
「……」
「と、余計な話は此処までにしましょう。皆さんに集まって貰ったのはこんな話をする為ではないのです。これからについて、話しましょう」
何事も無かったかのように話題を変えたシルティーナをテドラだけが複雑な面持ちで見ていた。




