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鈴がジェットコースターのレールの上を走っている頃、亮夜が光に向かって指示を出す。
「光、俺が合図を出したら『ファイア』と唱えるんだ」
「え、『フォルティス』じゃあないんですか?」
「細かい説明は後でする、とにかく俺に続け!」
「は、はいっ」
いつもより緊迫した早口で話す亮夜に、光は従うしかなかった。
「いいか、右の手の平をあのウォーム向けてから『ファイア』と唱えろよ。唱えた後は、決して人に手のひらを向けるな。分ったな」
「何だか分らないけど、やってみます!」
光は亮夜から言われたことを忘れないように頭の中で復唱する。
「先ずは鉄骨を伝って観覧車の頂上まで登る。光、足元に気をつけろよ」
「はい、了解しました」
そう言うと、光と亮夜はムーシュのいる頂上に向かって素早く登り始めた。
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ムーシュが遊園地出現する数分前。
「大変です! クリュエルが地球に現われました!」
「何だと!?」
重厚な鉄筋コンクリートで出来た地下2階、地上1階建ての建物。
「雨降科学研究所」と門に書かれたこの建物は、全てがコンピュータで制御された研究施設。
室内には、白衣を着た人物と紺の詰襟のような服を着た人物が目の前のモニターに集中していた。
白衣を着た人物は透き通るような金髪をした二十歳くらいの男性。
対して紺の服を着た人物は、年齢が白衣を着た人物と同じぐらいの年齢に見えるが、漆黒の髪で黒い瞳で、猫のような長円瞳孔をしている。
「現場には、討伐隊員3名がいるようですが、ムーシュも3体いるようです」
「ムーシュはともかく、討伐隊員ではクリュエルを倒すことが出来ない」
「で、では、どうしたらいいでしょう?」
白衣を着た人物が少しおろおろとした声で、紺の服の人物に話しかけるが、紺の服の人物は眉間に皺を寄せたまま厳しい顔をしていた。
するとそこへ、スーツを着た身なりの良い、メガネをかけた若い男性が扉を開けて室内へ入ってきた。
男性は雨降霧人28歳。
若干25歳にして雨降財閥の当主になった霧人は、その才覚で財閥の規模を拡大。
雨降討伐隊を設立した創設者でもある。
霧人は紺の服を着た男性に顔を向けると、冷静な声で話しかける。
「黒斗……私のことは良いから現場へ向かいなさい」
「霧人様! しかし!」
霧人の言葉に、黒斗は迷いながら声を荒げてしまう。
しかし、霧人は冷静な表情と言葉を崩さない。
「ここは珀に任せなさい。これ以上ウォームの好き勝手にさせる訳にはいきません」
「分りました。では行って参ります」
霧人の言葉に抵抗した黒斗だが、クリュエルを倒すことが先決だと気づき、霧人に頭を下げると素早く外へ出て行った。
「珀。クリュエルとは何者ですか?」
「クリュエルは……私達の兄です」
「では黒斗は自分の兄と戦うことになるのですか?」
「残念ながら……でも、覚悟はできています」
黒斗が出て行った後、白衣を着ている「珀」と呼ばれた男性に質問をした霧人だが、返ってきた珀の言葉に動揺を隠せなかった。
「クリュエル……まさかこんな形で再会するとは!」
黒斗は奥歯をギリリと噛締め、施設の壁を強く叩いた。
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