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「ウォームは普通の武器では殺すことが出来ない。しかし、この指輪を身に着けて攻撃をするとウォームを倒すことが出来るんだ」
「じゃあ、亮夜さんと鈴さんがつけている指輪は、二人の婚約指輪ではなかったんですか?」
亮夜と鈴も右手中指に1cmくらいの大きさの赤い石の指輪を嵌めていた。
しかしこの1年、訓練が終わると疲れきってすぐに眠りについていた光は、亮夜と鈴が嵌めている赤い石の指輪はペアリングだと思っていたのだ。
「お前、この緊迫した状況でよくそんな冗談を言えるな。この指輪はこの実戦訓練終了後に、お前に渡す予定だったんだ……まあいい、この指輪の詳しい説明は移動しながら話す。先ずは急ぐぞ」
亮夜はそう言うと、鈴が訓練所の入り口に手配した車まで走って移動した。
光も亮夜に遅れないように、背中に銃を背負うと急いで後を追った。
「亮夜、光、早く乗って!」
訓練所の入り口には、自衛隊でも使われているパジェロ型の七三式小型トラックが停車していて、運転席には鈴が座っている。
亮夜が助手席に座り、光は亮夜の真後ろの後部座席に座った。
「俺達も詳しいことは分からないが、この赤い石の指輪を身に着けた者は特殊能力を発揮し、ウォームを倒すことができるんだ」
鈴に運転を任せた亮夜は光の方に体を傾けながら、光に渡した指輪の説明を始める。
亮夜の話を聞いた光は目を見開き、明るい声を出す。
「じゃあ、これを嵌めていればどんなウォームでも倒すことが出来るんですね」
「そう上手くはいかないのよ」
「鈴さん、上手くいかないとは?」
運転をしながら鈴が鋭い声を上げると、光は不信そうな声を上げた。
「光が亮夜から貰った指輪の大きさは0.1カラット。亮夜と私の指輪の大きさは3カラット。なんでそんなに違いがあるか分かる?」
「分かりません」
光は自身の右中指に嵌めた小さい石の指輪と、亮夜の大きな石を見比べながら首を左右に振った。
「赤い石は成長するのよ。その石を身に着けてウォームを倒すと、ウォームは塵になり、その塵が自動的に指輪に取り込まれるの。一定数の塵を吸い込んだ指輪はまるで生き物のように少しずつ大きくなっていくのよ。そして、大きくなればなるほど強い能力を発揮して、強いウォームを倒すことができるの」
「あの、特殊能力ってどんな能力ですか?」
鈴の説明がすぐに理解できない光は、亮夜に助けを求めるように説明を求めると、亮夜はゆっくりとした口調で丁寧に説明を始めた。
「火、水、雷、風、といった魔法に近いような能力を出せる『特殊能力特化型』。体力や行動スピードが常人を遥かに上回る『身体強化特化型」。特化型よりは劣るが、魔法と体力両方の能力を使うことが出来る『万能型』。そして、魔法や体力は使えないが、怪我をしたものをすぐに治癒できる『医療特殊型』。大体こんな形で分けられているんだ」
「亮夜さんと鈴さんはどんな能力なんですか?」
「俺は『万能型』で鈴は『身体強化特化型』。まあこれからの戦いを見ればすぐに分かるさ」
「着いたわ。話はウォーム討伐の後でね」
亮夜がそう言い切った時に、車は目的に到着した。
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