第45話 仕事をする美仁香ちゃん
スタジオのスクリーンに世界格闘技大会のVTRを流す為、観客達や出演者達。そして、俺も見なければならなかったので、それを見る事にしたのだ。
「『今年の夏、世界格闘技大会という全世界中から格闘家や武術家の選手を集め、その選手の中で誰が一番強いのかという大会が始まったのだぁ』」
ナレーションが流れて説明してくれるのだが、どこかで聞いた事があるような・・・気のせいだな。
「『その大会の予選でぇ、二百人もの選手が八個のリングに二十五人ずつ分けられ、バトルロイヤルという方式で、それぞれのリングで一斉に戦うというのだがぁ、あるリングに、とある一人の選手がいたのだが、それが・・・』」
画面は俺の戦っている姿へと変わる。その画面は、ちょうど予選にて二人のオッサンを合気道で倒している映像だ。
「『今回のゲストである、西園寺美仁香という十二才の女の子だぁ』」
『えぇぇぇー?!!!』
観客達や出演者は驚きの声をあげてしまう。
「『そして、西園寺美仁香は、本戦へと出場。そして、本戦一回目の試合で戦った相手は、最強のプロボクサーであるロッキー・マルケジャーノだったのだぁ』」
ロッキー・マルケジャーノの写真をどんと映し出し、スタジオ内は『えぇぇぇー?!!!』と驚きの声をあげてしまう。
「『実際に、西園寺美仁香とロッキー・マルケジャーノとの戦いを見てみよう』」
スクリーンは試合の動画へと変化。俺達は、その動画を見る事にしたのだ。
まずは、黒人のボクサーが両手をあげて、ゲームをしようという案で、俺が合気道を使わずに普通に殴って、吹き飛ばした映像を見た皆は・・・
「「!!!?」」
絶句である。
続いては、ロシア人との勝負。俺とロシア人が笑い合って戦っている姿も皆は絶句して、一言も発せなかったのだ。うーむ、プロでもこうなるのかぁ。
しばらくVTRを見ていくと、あっ!と驚いてしまった。やっぱり、三つ編みが解けて、ストレートヘアーの姿も映ってるのだ!や、やっぱり、恥ずかしいなぁ。
そして、爺さんとの勝負。俺が立ったまま気絶している姿を始めて見た俺も皆も絶句。本当に立ったまま気絶してるなぁ。
「『という事で、西園寺美仁香は世界最強の座を手に入れたのであるぅ~』」
VTRが終了し、皆はしばらく無言。や、本番中だろうが!何か言えよっ!
「スッゴいですね~。ねぇ、皆さん」
上田さんの言葉には誰も反応出来なかったのだ。そんな上田さんはというと
「なぁ、何で無視すんの?」
ツッコミを入れてしまう。めっちゃ、面白いなぁ。
「お?めっちゃ足震えているぞ!」
有田さんは豚芸人を指差し、豚芸人の足が震えている事を指摘する。観客達もそれを見て大笑い。
「ひぃっ、こんなスゴい人の隣に座りたくないよーっ!やられるーっ!」
どうやら俺に恐怖しているらしい。カッコ悪いなぁ。一方、大物女優はというと、
「よくがんばったね?えらいえらい」
俺の頭を撫でて、褒めてくれる。そんな褒めを受けた俺は顔を真っ赤にさせて
「あぅ」
変な声を出してしまったのであったーーー。
しばらく共演者達と雑談して、テープチェンジする事らしいので休憩時間となった。
俺は茶を数口飲んで休憩をとっていたのだが・・・
「ちょっといいかな?」
上田さんが話しかけてくれた。まるで夢のような話なのだが、夢では無い。現実だ。
「な、なに?」
そんな上田さんにタメ口。い、いいんだろうか?結構芸歴も長いし、えらい人なのに・・・でも、急に敬語を使い始めるにも、周りの反応も違う筈だし・・・まぁ、いい人かもしれないので、普通にする事にした。
「このあとはVTRを見て、トークして終わるという流れなんだけどね?せっかくだから、トークの途中にさ、美仁香ちゃんに何か技を見せてって振るからさ、その時に技を見せてくれるかな?」
上田さんからのお願いだ。俺はそのお願いを引き受け、頷いた。観客達も出演者も茶の間も盛り上がると思うからな。
「ありがとう」
上田さんは俺と固い握手して、スタッフの所に行き、何かを伝えるようだ。多分、俺が技を出すという事を伝えているんだろうな。
「あ、あのっ、抱きしめていいですか?」
後ろから不意に声をかけられた。その声の主は、ずっと俺の頭を撫でていた大物女優だ。
しかし、そのお願いはイヤだ。しかし、大物だし、断ったら後々めんどくさくなりそうだし・・・
「・・・ちょ、ちょっとだけなら」
「ありがとっ!ぎゅーっ!」
美人の大物女優による抱擁る大きなモノが二つとも俺の顔に・・・や、やわらかいなぁ・・・それと息苦しいっ
「ちょ、やめてくださいよっ!美仁香ちゃんが苦しそうですよ?!」
有田さんは大物女優の暴走を止め、俺を助けてくれた。だが、ずっと息苦しかったので・・・
「けほっ、けほっ」
はぁ、もう勘弁してくれぇ・・・
ーーーーーーーーー
本番は順調に進み、そしてトークの時間となったのだ。
豚芸人が失恋体験談を面白おかしく話し、俺達はその話に耳を傾ける。
「がはははっ!それはお前のせいだっ!」
「そっ、そんなぁ~っ!」
「そんな弱気な根性を叩き直したらどうだ?ほら、ここに根性を叩き直せるちょうどいい人がいるぞ?」
上田さんは俺に技を見せろという振りをしたと思うのだが、話の内容的には、豚芸人に技の寸止めをしろという事らしい。まぁ、出来るけどな。
「お前ちょっと中央に来い」
有田さんの指示に従う豚芸人。誰も居ないステージ中央のスペースに行き、棒立ちする豚芸人。
「美仁香ちゃん、やっちゃってくださいよ」
有田さんの言葉で俺は席に立ち、観客達は『お~!』という歓声をあげて、拍手を送る。
俺は豚芸人の真正面に立つ。豚芸人は背が低くて、爺さんと同じ155センチくらいなので、あまり身長差がない。
「じゃあ、そこから絶対に一歩も動かないでね?」
俺の言葉により、豚芸人は
「は、はいぃぃっ」
めっちゃ恐がり、足も震えている。
「それじゃあ・・・」
俺はキッ!と豚芸人を睨み、攻撃するぞという威嚇をする。すると、豚芸人は
「む、ムリムリムリーっ!助けてくださいよー!めっちゃ怖いですー!」
大人げない。本当に大人なのか?この豚芸人は。絶対にすぐに消えるなこの芸人。
「早くしろよっ、美仁香ちゃんが待ってるからさ」
有田さんの言葉により、再び豚芸人は俺の真正面に立つ。俺は威嚇せずに技をする事にしたのだ。
「冲捶!」
腰を落とし、中腰のような姿勢でドンと叩き つけるようにして地面を蹴りだし、胸を開き、体を急激に1/4回転して、拳を豚芸人の顔面ギリギリに寸止めさせる。
「っっ!!」
豚芸人は怖くて尻餅をついた。ホントに大人なのか?こいつ。全然、全力出していないけどなぁ。
「怖ぁぁっ!こ、腰が抜けちゃったっ」
どうやら豚芸人は立てないらしい。それを見た皆は大笑いしているのだが、経験している豚芸人にとってはトラウマものになっているだろう。
「はい、という事でね。また来週~」
有田さんが締めて放送時にはそのままスタッフロールが流れて終了しているだろう。
こうして、俺の初テレビ出演が終了したのであったーーーー。
「終わらせるの雑だなっ!」




