第40話 決着
「『エメリア・ヒョードルーに変化がぁぁ!その表情には、獲物を捕らえるトラのように目をギラギラさせ、眉間にシワを寄せ、西園寺美仁香を威嚇ー!』」
ロシア人は俺を一人の格闘家として認めたようで、俺を目で威嚇。すげぇ、怖い。本当にトラみたいな殺意というか闘志を感じてしまう。
俺もロシア人のように、威嚇していくと
「『お、おやおや?どうしたんでしょうか、西園寺美仁香は目をウルウルとさせているぞー?!ひょ、ひょっとして泣いているのかー?!』」
司会は俺の様子を実況しているのだが、俺は泣いていないぞ?ロシア人を威嚇しているだけだぞ。
「はぁぁあ!!」
「『おっとここで、エメリア・ヒョードルが動いたー!体制を低くしてからの、必殺技ショルダータックルー!西園寺美仁香!絶体絶命の危機だぁぁ!』」
ロシア人は俺に向かってタックルしてくる。そのタックルは素早く、避ける事が出来なかった。だが、俺には八極拳があるので、何とかなるのだ。
「大纏!」
大纏。威力分だけダメージを軽減する防御特技。腕と体全体を使い、大きく開いた腕を回して両腕で円を描きつつ敵の攻撃を包み込んでいく受け技で、体当たりなどの攻撃にも使用可能である!
「?!!!」
「『と、と、と、止めたぁぁぁ!あの大きな身体でのショルダータックルを小さな身体で受け止めたぁぁぁ!あんな小さな子供の身体に一体、どんな力が隠されているというのだー!!』」
力ではなく、技で止めたのだが、素人には普通に受け止めたという情報が脳にインプットされたらしい。
だが、受けとめるだけではなく、俺は反撃をロシア人に与える事にしたのだ。
「大纏崩捶! 」
大纏崩捶。攻撃の回避直後、あるいは「大纏」で防御した後に使える反撃技。敵の攻撃部分を肩か腕を使って外から押さえ込み、一歩踏み込みつつ、敵の足下から掬いあげるように打ち上げる。
「『こ、こ、今度は西園寺美仁香の快進撃ー!な、なんとっ!あの身長183センチ体重104キロの大きな身体を、わずか身長140センチの小さな身体の女の子の攻撃により、エメリア・ヒョードルの身体は宙を舞うー!一体、どうなっているんだー!』」
ロシア人は浮き上がり、攻撃も防御もままならないらしいので、更に俺はロシア人に追撃をやる。
「冲捶!」
拳を作って腰を落とし、中腰のような姿勢でドンと 叩きつけるようにして地面を蹴りだし、胸を開き体 を急激に1/4回転し、ロシア人の腹部に直撃させた。
「っっ~!!」
ロシア人は苦痛の表情で、ぶっ飛び、地面に転がり続け、停止。
「『つ、つ、強すぎるぞ!西園寺美仁香ぁぁぁ!あの六十億分の一の男と称される程の実力者を簡単にぶっ飛ばしたぁぁぁ!』」
司会は実況しているのだが、アイツはマジで強いぞ。さっきの突きは、あんまり手応えがないように感じたぞ?
ロシア人は立ち上がり、俺を見て
「にぃぃっ」
「『わ、わ、笑っているぞー?!コレは来たぞぉ?!エメリア・ヒョードルの本気が見られるぞぉぉ!このエメリア・ヒョードルの笑みを見た選手は、絶対に負けてしまうという恐ろしさ!こ、コレは試合の結果が分からなくなったー!』」
ロシア人はニコニコしながら、俺の周りを歩き、俺の隙を伺うようだ。
「『さぁ、エメリア・ヒョードルは西園寺美仁香の周りを歩きそして~?ラリアットの体制に入ったぞぉぉ?!いつも、この技でやられている選手は、数知れず!まさに、一撃必殺のエメリア・ヒョードルのラリアットー!』」
ロシア人は右腕を高らかに挙げて、太い腕の筋肉を俺達に見せるのだが・・・太っ!まるで、大木じゃないか!
そんな太い腕を見せたロシア人は俺に遅いかかる。
「『来たぁぁ!エメリア・ヒョードルのラリアットー!これをどうするー?!西園寺美仁香ぁぁぁ!』」
ドスドスと鈍い足音を慣らし、ロシア人の攻撃が俺に襲いかかる。
このロシア人の攻撃も素早くて、避けられなかったので、さっき使った大纏で、受け止めようとしたのだが・・・
「うわぁ?!」
「『エメリア・ヒョードルのラリアットを受け止めようとした西園寺美仁香が、ぶっ飛んだぁぁ!』」
ロシア人の力がものすごくあり、俺の八極拳にて無効に出来なくて、俺はロシア人のでかい巨体を活かしたパワーにより、ぶっ飛び、転がる転がる。
「っっ、いたっ」
どうやら俺は、身体全体にダメージを負ってしまった。だが、まだ動けるので、心配は無い。
「『おぉっと?!エメリア・ヒョードルはまだまだ攻撃を続けるようだ!西園寺美仁香に向かって突進してくるぞー!』」
ロシア人は俺に向かって、ドスドスと鈍い足音を鳴らしながら、猛突進。そして・・・
「『エメリア・ヒョードル!西園寺美仁香に左フックだぁぁ!』」
左フックとは、基本フォームから顔は真直ぐ向けたまま、身体を反時計回りに回転させる。それと同時に 左腕を若干開く。重心は若干、左足に置く。
回転させた反動を使って体を逆の時計回りに回転させる。それと同時に 腕時計を見るように腕を傾ける(腕の角度は90度)。また、同時に左足のつま先を軸にかかとを上げながら時計回りに若干、回転させ始める。
更に体とつま先を回転させると共にその回転に合わせて拳が顔を中心として弧を描くように腕振り抜く。打ち終わる時には、必ず肩をアゴの横に付けガードするという技なのだ。
俺はその左フックを反撃の隙をつけれずに、後ろに仰け反るしかなかったのだ。だが・・・
「?!!」
「『おぉっと?!ここで、西園寺美仁香はエメリア・ヒョードルの左フックを微かにアゴにくらってしまったー!それで、足元がふらついてしまったー!』」
俺は、軽く脳震盪を起こしたらしいので、フラフラになってしまった。これでは、反撃も攻撃もままならないのだ。
「『そしてー?!エメリア・ヒョードル!拳を広げて、西園寺美仁香の腹部へと右手で掌底をくらわせようとするー! 』」
俺はとっさに、両手をクロスさせ、腹部の前にそのクロスを置く。だが、ロシア人はそれをお構いなしに、その両手のクロスごと攻撃したのだ。
「『ふ、ふっ飛んだぁぁ!西園寺美仁香、宙に舞うー!大ダメージをくらってしまったかぁ?!西園寺美仁香ぁぁぁ!』」
俺は、後ろ向きに身体を捻り、くるりと一回転して、着地。両腕がジンジンして、どうやら、しばらくは使い物にはならない。
そんな大ピンチなのに、心がワクワクしてきたのだ!
爺さんのような強いヤツに会えたのだ!爺さんのような戦いとは違う、戦いを体験出来たのだ!それが嬉しくて嬉しくて、無邪気な笑顔を浮かべてしまい
「にひひひっ♪おもしろーい♪にひひひっ♪」
笑ってしまったのだ。すると司会は・・・
「『さ、さ、西園寺美仁香も笑っているぞぉぉぉ!その顔には子供らしい無邪気な笑み!そして、その顔を見たエメリア・ヒョードルも、笑っているぞぉぉ!』」
俺達が笑っている事が、信じられないのだ。
「ほっほっほ~。美仁香ちゃん、楽しそうだねっ。やっぱり、連れてきて良かったよっ」
爺さんも笑って場は和む。
「『さ、西園寺豪三も笑っているぞぉぉ!どうやら、三人はこの戦いを純粋に楽しんでいるようだぁぁ!』」
「はっはっは。どうだ?ジェーヴォチカ(お嬢ちゃん)。小細工抜きで、リアルファイト(真剣勝負)しないかい?もちろん、普通の殴り合いだ」
ロシア人はこれからの試合方式を俺に提案して、俺は頭を頷かせてから、その提案に乗ってしまうのだ。
敵の作戦なのかも知れないけど、それでもこのロシア人の本気を見てみたい!そして、勝ちたいんだ!
俺達はリング中央に集まり、ある程度の距離を空けて、ロシア人は手を大きく広げ。俺は棒立ちでロシア人の前に立つ。
「『おぉっと?!エメリア・ヒョードルと西園寺美仁香はリング中央に集まったぞぉぉ?!どうやら、決着をつけるらしいぞぉぉ!果たして、どちらが勝つのかぁぁ!』」
ロシア人がまず攻撃してきた。ただの右ストレートっぽいので、俺は右手をロシア人の右手を下から、掌を広げて攻撃し、攻撃を捌く。
続いては俺の攻撃。ようやく、両手のしびれが消えたので、その復活した左手で、ロシア人の腹部に突き。だが・・・左手で掴んで攻撃を阻止するロシア人。
「『うおー!!!見てくださいっ!二人は、殴っては阻止。殴っては阻止を繰り返しているぞぉぉ!素晴らしい試合だぁぁ!』」
今度は、蹴りをしてきたロシア人。右足のローキックっぽいので、俺は右足でロシア人の右足の膝に添えて、阻止。今度は俺も蹴りをロシア人の左アバラに左足で攻撃するが、ロシア人は左足を高くあげて、攻撃を阻止。
「『す、スゴいぞぉぉ!今度は蹴りの応酬ー!だが、ダメージを与える事が出来ない二人ー!あっ!エメリア・ヒョードルのビンタが西園寺美仁香のアゴに命中したぞぉぉ?!』」
俺はだんだん疲れてきて、攻撃のスピードが落ちてきたらしい。く、くそっ、やはり、子供かっ・・・かなり鍛えたと思ったけどなぁ
「くっ!せいっ!」
疲れた身体で、突きをロシア人の鳩尾にヒットさせるが、あまり効いていない。く、くそっ!このままじゃあ・・・負ける!そんなのはイヤだ!
「はぁぁぁあ!」
俺は右足で地面をだんと叩き、前屈みになりながら、右手の裏拳でアッパー気味にロシア人のアゴに命中させた。
ロシア人は軽く脳震盪を起こし、後ろに数歩下がった。
俺はすかさず、左の肘を用いて、肘打ちでロシア人の鳩尾に、地面を左足でだんっ!と踏み込みながら地面を滑らすようにロシア人の懐へと移動し、助走をつけて当てる。
「かはっ!」
ロシア人は大ダメージを受けているらしいが、まだまだ攻撃の手を緩めない。
「貼山靠!」
貼山靠。 中国武術の一派、八極拳の技。 肩・背中を使った体当たり攻撃である!
その技をくらったロシア人は、宙に舞う。このまま落ちればうつ伏せの状態でダウンするが、まだまだだ!
「コレもくれてやるぜぇ!」
また地面を右足でどんと叩きつけ、右手で拳の作り、空中のロシア人の鳩尾に直撃させたのだが・・・
「「?!!!」」
ロシア人は右手の拳で、俺のアゴをかすってきたのだ。俺は、またもフラフラになってしまったのだ。
だが、負けん!俺は気合いで、踏みとどまり、直立不動の体制に整えたのだ。
ロシア人はそのまま地面に叩きつかれ、再び、立つのだが
「・・・」
ロシア人は、俺に早い右手の突きを顔面に当てようとしたので、とっさに、右側に顔を逸らして、攻撃を避けたのだが・・・俺の身体は全く言う事を聞かなくなる程、疲れ切っていたので、反撃は出来なかった。
だが、ロシア人は白目を剥いて、俺が右側に顔を逸らしたので三つ編みがふわっと浮いたのをロシア人はそれを掴み、俺に身体を密着させ、俺の髪を掴んだままズルズルと倒れ込み、掴んだ手が緩んだのだか、ロシア人の右手の親指と人差し指が俺のヘアゴムに絡まり、俺のヘアゴムを掴んだまま地面にダウン。
「勝者、西園寺美仁香ちゃん!」
爺さんの審判による判定で、観客達は、一回戦よりも大きな歓声をあげて、俺を称えた。
「『しょ、勝負ありぃぃー!あの六十億分の一の男と称されるエメリア・ヒョードルをっ!あの小さい身体で!しかも女の子が倒してしまったぁぁぁ!もう一度、西園寺美仁香に称賛を込めた拍手をお願いしますっ!』」
司会により、更に会場の観客達は、歓声をあげて、拍手喝采を送ったのであったーーーーー。
あと8話で最終回です。
次回作も投稿する予定で、その次回作の執筆はちゃくちゃくと進んでいます。
この『理想的な転生物語。』が完結して一週間以内に次回作を投稿したいと思っていますので、そちらも応援よろしくお願いします。




