第39話 勝利に向けて
「『さぁ!第四回戦!最強のボクサーであるロッキー・マルケジャーノ対西園寺豪三の孫娘である西園寺美仁香がリング中央にて睨み合いー!おぉっと、ここで?ロッキー・マルケジャーノは両手を高々と挙げるー!一体どうしたんだー!ロッキー・マルケジャーノぉぉ!』」
司会の言う通り、黒人のボクサーは両手を挙げて、その場に立ちつくす。はて、何を考えているんだ?隙だらけだぞ。
「ふんっ。何故オレがこんなヤツと戦わないといけないんだ?やる気が起こらないよ」
この黒人は日本語をペラペラと喋れるご様子。皆、日本語の勉強とかしてるんだなぁ。
いやいや、そんな場合じゃないな。こいつ、思いっきり俺の事をナメてるな。
「ヘイっ、カモン。ミスターゴウゾウ・サイオンジと同じアイキドウしか使えないだろ?投げれるもんなら投げてみろ」
「『おぉっと?!ロッキー・マルケジャーノは西園寺美仁香を挑発ー!合気道を使えるものなら使ってみろという挑発ー!だが、投げるのに必要な相手の攻撃や相手の拳が必要なのだが、その拳は背の低い西園寺美仁香には届かなーい!一体、どうするー!西園寺美仁香ぁぁ!』」
司会の言う通り、背伸びしても、相手の腕を掴み合気道を使う事が不可能だ。だが、俺には八極拳がある。その事を知らない爺さん以外は今の状況を俺のピンチだと捉えていた。
「ただこうしているのもつまらん。ゲームをしよう。お前はオレに何度でもパンチやキックをやってもいい。ただし、三分間だけだ。その後はお前をリング外に出してやる」
「『な、なんとっ!ロッキー・マルケジャーノはゲームと称し、何度でもパンチやキックを受けてやるというのだー!それも三分間だけだー!子供の力ではボクサーの堅い筋肉に打ち勝つなんてありえなーい!』」
司会の言う通りだな。たかだか、子供の力だけでは、何度でもボクサーを殴っても傷一つつける事も不可能だろう。ただし、普通の子供の場合だがな。
「ふんっ。お前をこの先、この世界格闘技大会に出場しないように、大人と子供の差をここでハッキリさせてやる。ヘイっ、カモン!」
「『いよいよ始まってしまったー!三分間、ロッキー・マルケジャーノは自らサンドバック化となったー!これを一体どう処理するー!西園寺美仁香ぁぁ!』」
本当にこの黒人のボクサーはサンドバックとなるそうで、両手を挙げて俺の攻撃を受けてくれるようだ。にひひっ♪儲け儲け!
「冲捶!」
拳を作って腰を落とし、中腰のような姿勢でドンと 叩きつけるようにして地面を蹴りだし、胸を開き体を急激に1/4回転し、突きを黒人のボクサーの鳩尾に直撃させる!
「『?!!!!』」
ボクサーは前のめりになり、隙を作ってくれたので、更なる追撃をボクサーに当てる。
「裡門頂肘!」
肘を下から突き上げるように立て、踏み込んで放つ技を、ボクサーのアゴに直撃させる。
「『?!!!!』」
さっきから、司会が実況していないが、そっとしておこう。俺は、まだまだ攻撃の手を緩めない。
「双撞掌!」
両腕を揃えて胸を打つ掌による攻撃で、防御点を半分としてダメージを黒人のボクサーの胸に与える。
すると、黒人のボクサーは数メートルぶっ飛び、地面に転がり続け、ピタリとうつ伏せのままに寝転がり、気絶。どうやら、俺の勝ちだ。
「勝者、西園寺美仁香ちゃんっ!」
審判である爺さんは、俺の右手首を掴みそのまま俺の腕を挙げさせて、観客達に俺の勝利を認めるという報告をするのだが・・・
「『・・・・・・・』」
絶句だ。会場は静まり返っていた。それもそうだろう、まだ子供でしかも女の子が、プロボクサーをぶっ飛ばし、勝利したのだから。
「『しょ、勝者・・・さ、さ、西園寺美仁香。わ、私達は夢を見ているのでしょうか?否っ!これは現実だぁぁ!す、スゴいぞ!西園寺美仁香ぁぁ!空手のような技だったのだが、空手ではない技も見せてくれたぞー!一体、何者なんだー?!』」
俺は勝ったので、控え室に戻ろうとしたのだが・・・
「『ちょ、ちょっとお待ちください!西園寺美仁香さん!あ、あなたは一体、何の武術を習っているんですか?!合気道だけではなかったんですか?!誰かスタッフの方!西園寺美仁香さんにマイクを渡して、何の武術を習っているのかを答えさせてくださいっ!』」
司会の言葉により、俺はその場に居なければならなかった。そして、スタッフがマイクを持ち、俺に質問してくる。
「『あ、あのぉ、何を習ってるのかな~?』」
俺は教えたくなかったので、爺さんに答えなければいけないのかを聞いてみると
「ほっほっほ。別に答えても答えなくてもいいよ~。美仁香ちゃんの好きにしなさい」
という心優しい爺さんの案で、俺はマイクを持ち、
「『ヒミツー!にひひひっ♪』」
無邪気な笑顔を浮かべ、答える。ちなみに、この無邪気な笑顔は全世界中のテレビに映っていたらしい。はぁ、恥ずかしいなぁ。
とりあえずこの場を離れたかったので、マイクをスタッフに押しやって、猛ダッシュで控え室に戻っていったのだ。
「『さ、西園寺美仁香っ!自分の力を皆に悟られないように秘密にしたー!それもその筈だぁ!自分の力をわざわざ教えるなんていう事は、自分の力が相手に知らされ、相手がその対応をやる筈だからだー!お見事!西園寺美仁香ぁぁ!』」
これまでにない程の歓声が会場内に響く。しかも、拍手喝采もついてだ。
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俺は無邪気な笑顔のまま控え室に戻り、テレビの前にあるパイプ椅子に座って、次の試合を見るのだが・・・
「「・・・」」
勝ち残ったプロレスラーのオッサンとロシア人のオッサンが俺を驚いた表情を浮かべながら見つめてくる。
「なん・・・だと?」
「お、オーチン(スゴい)・・・こんなシンパチーチナヤ・ジェーヴォチカ(可愛らしいお嬢ちゃん)が・・・強いっ!」
二人のオッサンは目を点にして驚くばかりだ。それもそうだろう、今さっき、無防備だったとはいえ、プロボクサーをアッサリと倒してしまったからだ。
「そ、そんなに褒めないで。照れるよ」
俺は二人の褒め言葉に照れてしまい、顔を赤らめてしまう。はぁ、俺はまだまだ子供だなぁ。
「つ、次は俺の出番だな・・・はぁ、落ち着かない・・・」
プロレスラーは爺さんとの戦う為、リング中央へと向かって、試合開始と共に棄権してしまったプロレスラー。
ケガもしていなかったので、控え室に戻り、俺達と合流。何故、棄権してしまったかを聞いてみると。
「オレと西園寺さんの試合より、キミの試合の方が、観客が気になっているらしいんだ。だから、棄権した。オレはプロレスラーで、いつも観客達を湧かせているんだ。でも、キミの試合の方が観客達は盛り上がっただろ?・・・全てにおいて、オレは負けたんだ」
プロレスラーはヒドくガッカリしていた。
どうやら、パフォーマンスにより盛り上げるプロレスよりも、俺の試合の方が盛り上がったので、プロとして恥ずかしいそうだ。
さて、次は俺の試合なので、ヘアゴムをキツく締めて、途中で三つ編みが解けないようにする。解けてしまったら、髪がファサファサと邪魔になるからな。
「さぁ、行こう。ジェーヴォチカ(お嬢ちゃん)」
「うん」
俺とロシア人はフィールド場へと直行し、リング中央に集まったのであったーー。
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「『さぁ!第六回戦!六億分の一の男!エメリア・ヒョードル!カポエイラの使い手を苦戦ながら倒した総合格闘家ー!見よっ!この鋼の筋肉をー!まるで、山です!』」
司会による説明をただただ聞いている俺達。
「『対するは、この世界格闘技大会のたった一人の女子の選手!たが、まだまだ子供な女の子だ!西園寺美仁香ぁぁ!我々に自分が習っている武術を秘密にしているお茶目な女の子だぁぁ!髪を三つ編みにして、その可愛さを猛アピールしているぞー!』」
司会は俺の紹介してくれるが、この三つ編みは可愛さをアピールする為じゃないぞ?ただ、これが気に入って且つ自分が地味に見えるようにしたいからだ。
「『さぁ!間もなく試合の開始です!では、始めてもらいましょう!』」
「では・・・始めぃッッ!」
「『そして今!西園寺豪三による試合開始を宣言し、二人は睨み合って、お互いを牽制しているぞー!さぁ!どちらが勝つのか、予想出来ませーん!』」




