第41話 世界格闘技大会の優勝者
この話で世界格闘技大会編は終了します。
最終回まで、ぼのぼのとした日常の話となりますので、最後までお付き合いくださいませ。
「『おやおや?先程の対戦相手であったエメリア・ヒョードルによって、西園寺美仁香の三つ編みに使用されたとするヘアゴムを失って、長くて美しい髪型の西園寺美仁香を私達は目にしたっ!か、可愛らしいです!先程、エメリア・ヒョードルに勝てたとは思えない程、可愛らしい女の子です!』」
俺の髪はストレートヘアーになり、肩甲骨を覆う程の髪を観客及び全世界中に放送されているというお茶の間のテレビに映ってしまい、俺の可愛さを目にした人類。はぁ、可愛い可愛い言うなよ・・・恥ずかしい。
ダウンしたロシア人は数名のスタッフにより、救護室という選手の傷を治すという場所へと移動させた。
ヘアゴムは、スタッフにより返して貰ったのだが、三つ編みにするのも疲れていて出来なかったのだ。だから、ファサファサとうっとうしい髪型で爺さんと戦わないといけないのだ。
爺さんが試合に出るので、審判がやってきて、このまま試合を続けるかと聞いたので、俺は続けると言った。そのまま休んでしまっていたら、ずっと寝ていそうだからだ。
そんな事をしたら、全世界中のお茶の間や、観客達に迷惑になってしまうからだ。
「『では、決勝戦!西園寺豪三対西園寺美仁香ぁぁぁ!始めてください!』」
審判と司会の開始とともに、俺はロシア人との戦いの疲れと脳震盪によるダメージが俺を襲い、爺さんを棒立ちの状態のままで睨み・・・気を失ってしまったーーーー。
「『さぁ!世界格闘技大会決勝戦が今!始まったぁぁぁ!世界最強の合気道の達人!西園寺豪三と、まだ子供の可愛らしい女の子である、西園寺豪三の孫娘!西園寺美仁香が戦おうとしているぞぉぉ!』」
「・・・ほっほっほ。審判さん。参った。降参するよ」
「『おぉぉっとぉ?!西園寺豪三ぉぉぉ!試合が始まって間もないのに、降参してしまったぁぁぁ!一体、どうしたんだというのだぁぁぁ!』」
世界最強の合気道の達人と称される西園寺豪三は、降参してしまった。何故?と思う観客達と選手達と全世界中のお茶の間。
「『え、えっと、よろしいんですか?あっ、誰かスタッフの方!西園寺豪三さんにマイクをお願いしますっ!』」
スタッフの男性はマイクを持ち、西園寺豪三にマイクを渡した。
「『あぁ。降参する。だから、この子・・・西園寺美仁香ちゃんの勝利だよ』」
観客達はどよめく。それもそうだろう、何故急に降参なんて・・・まだ、西園寺美仁香は立っていて、西園寺豪三もピンピンしているのに・・・と。
「『そ、それはいいんですけど、降参した理由をお聞きしてもよろしいですか?西園寺豪三さん』」
司会は観客達の代表として、西園寺豪三に、何故降参したのかを聞いた。だが、西園寺豪三の口から、想像も出来ない事を聞いてしまう観客達やお茶の間。それは・・・
「『この子は、立ったまま気絶している』」
西園寺美仁香は立ったまま気絶しているというのだ。全ての人間は驚いた。立ったまま気絶する人は、今までない事だったのだから。
「『ほっほっほ。ワシよりも強いよ。いや、全世界中の人間より強い!だって、こんなに根性があるし、何よりも強いから!こんな理由では、世界最強を名乗る事は不可能かい?司会者さん』」
西園寺豪三の言葉は、全ての人間の心に深く響いてしまう。そう、まだ幼い女の子は良くここまで頑張ったんだから。あの子が世界最強を名乗るぐらいなら許してやろう。その考えをした観客達や選手達は、西園寺豪三に賛同し、拍手喝采する。
ワァァァァァ!!!!パチパチパチパチっ!!これまでにないくらいに興奮する観客達と選手達は立ち上がって、西園寺美仁香の世界最強を認めたのだ。
「『という事で、西園寺美仁香ちゃんの勝ちだよ』。コレ返すね?よいしょっと」
西園寺豪三はスタッフにマイクを返して、気を失った西園寺美仁香をおんぶして、救護室へと向かっていったのだ。
「『き、き、決まったぁぁぁ!これで世界最強が決まったぁぁ!初の世界格闘技大会で、一人の小さな女の子が優勝したぁぁぁ!あの小さな身体で!あのプロボクサーのロッキー・マルケジャーノに打ち勝ち!あの六十億分の一の男と称されるエメリア・ヒョードルに打ち勝ち!更には、世界最強の合気道の達人の西園寺豪三までにも勝利したぁぁぁ!』」
観客達と選手達は更に拍手。拍手。拍手。
「『そんな世界最強の強敵達に打ち勝った女の子の名は!西園寺ぃぃぃ!美仁香ぁぁぁ!』」
観客達と選手達は
「みっにっか!」「みっにっか!」
美仁香コールだ。誰もが認める格闘家になった西園寺美仁香。その強さに全世界中の人々は、感動していた。
「『これで、世界格闘技大会は終了ぉぉぉ!優勝者の西園寺美仁香には、七百万円以上の価値があるトロフィーと、賞金六百万円を後程進呈します!表彰式はまたの後日にやりたいと思っていますので、その日付が分かった場合は、すぐに皆様にテレビ等を通じてお伝えしたいと思います!では、さようならー!!!!』」
こうして、初の世界格闘技大会は、西園寺美仁香の優勝となり、幕を閉じたのであったーーーーーーー。
ーーーーーーーーーー
俺は夢を見ていた。
家族と一緒に飯を食べるという一家団欒の一時を。
「『こぉら。ほっぺにご飯粒ついているわよ?うふふふっ』」
サド気味に笑う母親。でも、心優しくて、俺を育ててくれるいい母親。
「『はっはっは。まだ子供みたいだなっ。脳に影響があって、心が子供っぽくなっているのか?美仁香』」
家族想いのいい父親。医者なのだが、その腕はいいのか悪いのか知らん。
「『でもさ、普通に女の子っぽいよね。美仁香ってさ。だって、お爺ちゃんと戦う時は、本当に女の子だもん』」
俺の姉である麗香。なんだかんだで、姉として俺を見守るいい姉。
「『や、女の子だろうが。どう見たってさ』」
俺の兄である透。こいつは、俺の心が男だったから、色々と俺と馬が合うのだ。
「『ほっほっほ。美仁香ちゃんは美仁香ちゃんだよ。』」
俺の大好きな世界最強の爺さん。確か、たまたま爺さんが、朝食を食べに我が家に来たんだよなぁ~。あの時は、嬉しかったなぁ。
「『にひひひっ♪そぉだよぉ♪僕は僕だぁ』」
無邪気な笑顔を浮かべる俺。爺さんの発言に賛同するのも、嬉しいんだ。
「『あっ、学校に行くねっ』」
俺はセーラー服を来て、今も恥ずかしい思いをしているスカートも身に纏いながら鞄を持ち、我が家へ出発した後・・・夢は覚めた。
ーーーーーーーーーー
「んにゅ?」
俺は目が覚めた。俺はどこかで眠っていたらしいが、目の前には、見慣れない天井。
俺が寝ていた場所は、白色のベッドと布団。どこかの保健室っぽいなぁ。
周りを見渡したら、白いカーテンに仕切られていて、外の様子が見えない。
とりあえず起き上がり、白いカーテンをシャッと開けたら・・・
「お?美仁香ちゃん、起きたね。おはよう・・・でいいかな?もう、夕方だけどね」
爺さんの姿が見えた。その他にも
「おっ?!起きたか!」
「へいっ!アミーガ(女友達)ぁ!」
「オハヨウ。ジェーヴァチカ(お嬢ちゃん)」
「・・・・・・」
プロレスラーのオッサンとブラジル人と俺が戦ったロシア人と黒人のボクサーが俺が寝ていた保健室みたいな所に集まっている。黒人のボクサーは、俺を睨んではいない。
「あ、あの・・・ここは?」
俺はこの保健室みたいな所に見覚えがないので、聞いてみた。
「ほっほっほ。ここは、世界格闘技大会の会場の救護室だよ。空手家の本村君は、病院送りみたいだけど、特に異常は無いだってさ。奇跡的に」
どうやら、ここは世界格闘技大会の会場らしいが・・・ちょ、ちょっと待てよ?!俺は決勝戦で爺さんと戦ったっけ?記憶が無いのは頭をぶつけて記憶が吹っ飛んだとか、そういうのか?
「あ、あのさ。じゃあ、大会で優勝したのは、爺ちゃん?」
俺は記憶が飛んだという事なので、爺さんによる攻撃で気絶し、そのまま負けてしまったのでは、ないかと考えてしまう。
だが、黒人のボクサー以外の皆はニコッと笑い、俺は耳を疑う事を聞いてしまったのだ。
「ほっほっほ。優勝したのは、美仁香ちゃんだよ。ねっ?柏木君」
「ええ、そうです。だから、キミ・・・いや、美仁香さんか。美仁香さんが世界最強だよ?」
二人の言葉に俺は・・・驚いた。何故だ?!何故、俺が優勝なのだ?!気絶したのに!
俺の頭は混乱。それもそうだろう、負けた筈なのに、勝った事にされたから。
「な、何でさ!ぼ、僕は・・・き、気絶したのにっ!ふっ、うっ、ふぇぇっ。えっぐっ、えっぐっ」
俺は訳が分からなくなり、泣いてしまう。涙は溢れて、次から次へと大粒の涙が流れ、涙は止まらなかった。
「オゥ?!な、泣かないでくださーい!アミーガ(女友達)!」
「ほ、ほら、ティッシュあげるから、コレで拭いてっ!ジェーヴァチカ(お嬢ちゃん)!」
ブラジル人とロシア人は慌てて、俺にティッシュを与え、それで鼻水や涙を拭き取ったのだが・・・涙は、まだ流れている。
「ほっほっほ。確かに、気絶してたよ。でもね?それが、立ったまま気絶していたんだよ。ワシや他の選手も、到底出来ない事なんだ。だから、その出来ない事をやって遂げた美仁香ちゃんは、スゴい根性があって、とても強いから、ワシも皆も美仁香ちゃんを世界最強として認めたんだよ」
皆や爺さんが俺の事を認めた?ほ、本当にコレで良かったのか?でも、大好きな爺さんを始め、強かったロシア人にも、テンションが高いブラジル人にも、全員俺の事を認めたというのだ。
「そ、それじゃあ、本当に僕が世界最強?」
俺は泣き止んで、皆に質問。すると全員、一斉に頷き
『おめでとう!』
俺を称えてくれた。黒人のボクサーも笑ってだ。そんな黒人のボクサーは、前に出てきて、俺の真正面に立ち
「あの時はソーリー(ごめん)ね。色々、キミの事をバカにして・・・でも、今度の戦いは、本気でやるから!それまで、負けるなっ」
頭を深々と下げ、俺に謝罪。その後、戦いの約束も勝手になすりつけたのだが、俺はこの人の本気を見ていないので、了承。
「サンキュー(ありがとう)!」
黒人のボクサーはニコッと笑い、俺と握手。
「さて、美仁香ちゃんが起きたし、帰るか。ほら、帰ろっか。あっ、表彰式は、後でテレビか何かで言うらしいから、ずっとチェックしててね?美仁香ちゃん。ワシもチェックするから、分かったら連絡するよ」
爺さんは、表彰式の事を教えて、俺は頭を頷けさせ、分かったという事を爺さんに伝える。
「もう帰るのか~い?アミーガ(女友達)ぁ・・・でも、また会えるさっ!リズムに乗ってねっ!」
「ジェーヴァチカ(お嬢ちゃん)。またね」
帰る直前に、ブラジル人とロシア人と固い握手して、爺さんと手を繋いで、我が家へと向かっていったのだーーーーーー。
「あ~あ。アミーガ(女友達)が帰って行っちゃったぁ・・・よしっ、アミーガ(女友達)より強くなるぜ!ベイベー!」
「はっはっは。ワタシもあのジェーヴァチカ(お嬢ちゃん)には二度と負けないように強くなるさっ! 」
「オレも負けられんっ!」
アントニオ・カルロス・ビゾウロとエメリア・ヒョードルとロッキー・マルケジャーノは、打倒西園寺美仁香を目指す為、救護室から姿を消すのであった。
「だっしゃっしゃ。美仁香さんはいいなぁ!あんなにライバルが出来るなんてっ!美仁香さんはあのライバル達によって、更に強くなるなっ!だっしゃっしゃ~!」
ボンバイエ柏木は高笑いして、皆と同じように、救護室から姿を消したのであったーーーー。




