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第38話 いざ勝負

「それじゃあ、行ってくるね・・・あっ!どうしよう!僕達が行ったら、この子を見守れない!ど、どうしますか?柏木さんっ!」


空手家とプロレスラーが試合に行く直前、空手家が俺の心配してくれる。


「あっ!そ、そういえば・・・でも、別にこの子を襲うなんて事はしないだろう」

プロレスラーは空手家を説得するのだが・・・俺は、ふと周りを見渡したら、俺と戦うであろう、ボクサーの黒人が眉間にシワを寄せて、俺を睨んでいた。こ、こわー!


「み、見てくださいよ。黒人のボクサーがめっちゃ睨んでいますよ?どうします?」

「う、うーん。とりあえず、ささっと試合を終わらせよう。ただし、手加減無しでお前倒すからな」

「ええ?!僕が勝ちたいですよー。柏木さんっ!お願いします!」


プロレスラーと空手家は討論。ずっと、この控え室に居るのも、客達には申し訳無いので、渋々二人はフィールド場へと向かっていったのだ。


で、俺はパイプ椅子にポツンと座っていた。俺を守っていた二人が居なくなったお陰なのか、黒人のボクサーは俺を更に睨む睨む。怖いわっ!


「ヘイ!リズムに乗ってるかい?!」

俺が黒人のボクサーに恐怖していると、カポエイラを使っているというブラジル人が登場し、俺の右横の席に座っていく。てか、日本語喋れるのか?スゴいな。


「どっちがWIN(勝利)すると思うか~い?アミーガ(女友達)ぁ!」

あ、アミーガ?そ、それって、ポルトガル語で女友達という事だったよな?いつから俺とお前が友達関係になったのだ?

とりあえず、ブラジル人の質問に答える事にした。


「わ、分かんない・・・」

俺は首を振って空手家とプロレスラーのどちらが勝利するという事が分からない事を伝える。


「オウ!ワタシも分かりませーん。ヘイっ」

やけにテンションが高いブラジル人。でも、黒人のボクサーは今も尚、睨んでいた。


「はっはっはー。ワタシもそのtalk(話)に混ぜてくれないか?ジェーヴァチカ(お嬢ちゃん)」


ロシア人で白人の短髪のオッサンも俺の隣に座って、黒人のボクサーから守ってくれるようだ。そして、このロシア人も日本語が上手だ。

ちなみに、ジェーヴァチカとは、ロシア語でお嬢さんという意味だ。


「ワタシもどちらが勝つのか興味あるね」

ロシア人とブラジル人によって、黒人のボクサーは俺を睨まないようになったのだ。


「あ、始まった」

俺の声より、皆はテレビに注目したのであった。

ーーーーーーーーーーーーーー

「『さぁ!第二回戦が間もなく始まろうとします!』」


リング中央にはプロレスラーと空手家が睨み合い、審判である爺さんの合図を今か今かと待っている。


「さ、西園寺さん。早く始めさせてください。あ、あの子が危ないかもしれませんから」

「ん?どういう事かい?」

空手家が爺さんに何かを告げているようだが、俺達には耳に出来ない。


「黒人のボクサーがあの子を睨んでいて、今にも襲いかかりそうでした。ですので、オレからもお願いします。西園寺さん」


プロレスラーも何かを爺さんに伝えている。うーむ、何を言っているんだ?あのオッサン達・・・


「ふむ。それでは・・・始めぃッッ!」

やっとの事で爺さんの合図が始まった。


「『さぁー!始まってしまいましたっ!本村春成!空手家最強の選手だ!身長165センチ!体重70キロ!まずは両者睨み合いだー! 』」


空手家とプロレスラーは動けずにいた。早く済ませると言ったのだが、相手が強いので、そんな簡単にはいかない。それが戦いというものなのだ。


「『対するは、燃える闘魂!ボンバイエ柏木ぃ!プロレスラー界で有名な選手だ!身長191センチ!体重115キロ!その目には、ギラギラとした闘争心が伝わり、本村春成を威嚇していくー!』」


両者は睨み合い、そして・・・


「『おぉっと?!ここで本村春成!柏木に中段の正拳突きー!これをどうするー?!燃える闘魂、柏木!』」


俺の冲捶のように、プロレスラーの腹部に向かって突き。だが、それを避けもせずに、正々堂々とくらい、自分の技を仕掛けるようだ。


「『鳩尾にモロにくらってしまったぞー!柏木ぃぃ!だが、柏木はー?!相手の頭を左手で掴み、得意のナックルアローぉぉ!』」


「ダッシャァァ!」

「?!!!」


「『柏木のナックルアローを頭にモロにくらった本村春成!その殴りで足元がフラフラだー!これまでか?!本村春成!』」


空手家はフラフラになりながらも、次の攻撃へと移る。


「ふんっ!」

「?!!」


「『き、来たーぁぁ!本村春成の一撃必殺の胴回し回転蹴りだぁぁ!』」


胴回し回転蹴りとは、身体を縦回転、または横回転して踵を相手の顔面に打撃する技だ。

その技をプロレスラーのアゴに向かって攻撃していく。


「『おぉっと?!ここで柏木!本村春成の攻撃をくらう前に本村春成の背後に一瞬にして移動するという素晴らしいフットワークを活かしてー?!両手を広げて、本村本村春成の背中を抱きかかえー?そのままジャーマンスープレックスホールド炸裂ー!』」


ジャーマンスープレックスホールドとは、後方から相手の腰に腕を回しクラッチしたまま、後方に反り投げ、ブリッジをしたまま相手 のクラッチを離さずそのまま固めてフォールする。


そのプロレス技を空手家のオッサンは脱出出来ずに・・・


「『つ、痛烈ー!柏木の得意なジャーマンスープレックスホールドが本村春成の頭部を地面に叩きつけたー!普通なら死んでいます!何故なら、普通のプロレスのリングよりも固いコンクリート製で出来たリングだからだー! 』」


そう、司会の言う通りだ。いくら頭を鍛えたとしても、コンクリートは痛いだろう。


「ふむ、気絶しているようだね。勝者、柏木君」

「ダァァァ!」


ワァァァ!と歓声が会場内に響く。

爺さんの判定で、プロレスラーが勝利。そのプロレスラーは右手を高らかに挙げ、観客達に猛アピールするのだが、空手家はどうやら死んではいないのだが、頭に大ダメージだ。脳に異常がなければいいのだが・・・


ーーーーーーーーーーーーーー

「だっしゃっしゃっ。勝った勝った」

プロレスラーは笑いながら、控え室に入っていく。その顔は満面の笑みだ。


「お?どうした?な、なんでそいつらがお前んとこの近くに座ってんだ?」

プロレスラーは俺の近くに座ってたブラジル人とロシア人を見て驚愕している。


「な、なんだか知らないけど、こうなっちゃったんだ~」

俺はプロレスラーの質問に答えたのだが、プロレスラーは頭をポリポリと書き、眉間にシワを寄せ、腑に落ちないと俺に言っているようだ。


「ヘイっ!リズムに乗ってアミーガ(女友達)になった!ねっ?sis(お嬢さん)」

ブラジル人は、プロレスラーと空手家に説明するのだが・・・俺はブラジル人とは一緒にリズムに合わせた事がないのだがな。


「そ、そうかっ!な、なら、いいけどなっ」

プロレスラーは安心したらしい。この選手達は良い人だという事を。


だが、またも黒人のボクサーは俺を睨んでいたのであったーー。


ーーーーーーーーーーーーーー

そして、時は流れ、三回戦の決着がついた。

身長183センチで体重104キロのロシア人の総合格闘家と対するは身長170センチで体重70キロのカポエイラを使うブラジル人が激闘。


ブラジル人のトリッキーな攻撃に、ロシア人は翻弄されながらも、人々達から六十億分の一の男と称される程の実力を発揮し、苦戦したが、ようやくロシア人が勝利した。


「『き、決まったぁぁ!勝者、エメリア・ヒョードル!六十億分の一の男の実力はとんでもないー!この男に勝てる人間はいるのかー?!』」


ブラジル人は数名のスタッフにより、担架で運ばれ、フィールド場に姿を消すブラジル人。


次は俺の出番なので、フィールド場に行こうとしたら・・・

Fuckくそっ・・・ 」

黒人のボクサーは俺が対戦相手として不服なのか、舌打ち混じりに文句を言う。

それはそうだろうな、だって世界格闘技大会で優勝して名をもっと世界に広めたいと考える筈だろ?なのに、初戦の相手がただの女の子なのだ。不愉快極まりないだろう。


俺達はリング中央に集まり、黒人のボクサーのみが睨む。ホントに怖いなぁ。


「『さぁ!第四回戦が間もなく始まろうとしています!それでは、選手の紹介します!ロッキー・マルケジャーノ!ヘビー級のプロボクサーだ!試合数は五十回!負け無しだが、KO勝ちはなんとっ!四十三回!ボクサー最強だぁぁ!』」


司会が紹介している間も、黒人のボクサーは眉間にシワを寄せ、俺を威嚇していた。


「『対するはっ・・・え?ちょっ、ちょっと待ってくださいよぉ?!西園寺豪三の孫娘で、西園寺美仁香という女の子ですがぁ?み、皆さん落ち着いて聞いてくださいね?』」


司会の言葉を観客達は何かアクシデントが起きたのかとざわついていた。司会は、しばらく間を空け、口を開く。


「『まずは身長や体重ですね。身長140センチ!体重は32キロ!・・・ですが、それ以上の記録はありませんでした』」


司会の言葉に観客達はどよめく。選手がやっている武術なり試合の経験なりを全員分紹介したのだが、俺のみ紹介出来なかったのだ。


「『だから、この世界格闘技大会が始めての戦いという訳です!なのですが・・・やっている武術等は不明です。な、なんだか恐ろしい存在だぞ?西園寺美仁香ぁ!』」


司会の紹介が終わり、俺達は中央に集まり、俺達の距離をある程度空けて、爺さんの合図を待っている。


「では、始めぃッッ!」

「『は、始まってしまったぁぁぁ!一体、どうなってしまうー?!常識的に考えて、ロッキー・マルケジャーノが勝つ映像しか浮かびませーん!』」


こうして、俺のデビュー戦が始まったのだーーーーー。

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